2011年6月27日

藤田麗子・崔漢勝『韓国の歴史をめぐる旅 ソウル編』

 韓国には十数回も行ってるのに、そういえば観光らしい観光をしたことがありません。そんなうちに南大門(=崇礼門)は焼失してしまい......。次にソウルに行くときにはこの本を参考にいくつか巡ってみようと思ってます。
「朝鮮王朝500年の歴史をもつ街、ソウルを歩こう!」をテーマに、韓国在住の日本人女性が史跡や韓国時代劇のロケ地を紹介。特に、思悼世子が閉じ込められた米櫃が置かれた(「イ・サン」)とされる昌慶宮や、粛宗(「トンイ」)が東屋を建てた昌徳宮など、観たことのあるドラマにゆかりの地を訪ねてみたいところです。そのほかにも「宮廷女官チャングムの誓い」「風の絵師」「トキメキ☆成均館スキャンダル」など作品別インデックスがあります。
 かわいらしいイラストが豊富で、親しみやすい旅行ガイドです。巻末にはエリアごとの地図があるものの、本文ではイラストマップを掲載。近道が書いてあったり、たんなる情報の寄せ集めではなく、実際に自分の足を使ってつくられたことがわかります。「朝鮮王朝にまつわる豆知識」や「駅名から知るソウルの歴史」といった読み物もけっしておカタいものではなく、知的好奇心を刺激してくれるはず。ところどころで紹介するおみやげなんかも目線がイイんです。ハングルのクリップとか、韓国のデザイン文具や雑貨に興味があるので、ぜひチェックしてみたいと思います。
 意外におもしろかったのが「切手で楽しむ韓国の歴史」。小さな古切手屋に勇気を出して入ってみたところ、怪訝そうな店主が初恋の思い出を日本語で語りだす......。まぁ、本筋とはまったく関係ないわけですが、もっと詳しく読みたくなったほどでした。これも地道な取材の成果でしょう。
 お仕着せの堅苦しい"旅行"ではなく、気楽な"散歩"を楽しむための一冊。ぜひソウル編以外も出してもらいたいものです。

藤田麗子・崔漢勝『韓国の歴史をめぐる旅 ソウル編』
キネマ旬報社/1,365円/2011年3月11日発売
http://www.kinejun.com/

【目次】
PART1 朝鮮王朝の王宮を訪ねて
景福宮/昌徳宮/昌慶宮/徳寿宮/慶熙宮/雲[山見]宮
PART2 歴史の舞台、鍾路を歩く
鍾路/仁寺洞ギル/普信閣/曹渓寺/光化門広場
PART3 朝鮮王が眠る場所
宗廟/宣陵・靖陵/成均館
PART4 韓屋めぐりでタイムトリップ
北村韓屋村/南山ゴル韓屋村
PART5 幻の都、水原へ
イ・サンの理想都市 水原華城へ/華城行宮
PART6 王様のデザートを味わう
王様の食事とデザートの話/韓国の伝統菓子
PART7 博物館で歴史を学ぶ
国立古宮博物館/国立民俗博物館/国立子ども博物館/国立中央博物館/ホ・ジュン博物館/ロッテワールド民俗博物館/ソウル歴史博物館