2017年4月30日

かけはし

 2001年1月26日、JR新大久保駅。韓国人留学生のイ・スヒョンさんが線路に転落した人を助けようとして亡くなった。第1章「I am a Bridge!」では、日韓の懸け橋になろうとした彼の生涯を関係者インタビューで辿り、日本全国から両親に寄せられた弔慰金をもとに発足した奨学会の留学生支援活動、その奨学金を受けた留学生の姿を追う。第2章「かけはし~足跡をたどって~」では、日韓国交正常化から50周年にあたる2015年、釜山から来日した22人の大学生がイ・スヒョンさん所縁の地を訪ね、日本人と交流した1週間の旅に密着する。

 2001年に新大久保駅のホームで亡くなった韓国人留学生を軸に、日韓関係について考察していくドキュメンタリ映画です。あれからもう16年。痛ましい事故でした。
 第1章では事故の連絡を受けた当時のことを両親が語ります。あまりにもつらい場面でした。その一方で第2章の日本人家族と親睦を深める学生たちは希望を感じさせてくれました。日韓交流に懐疑的な青年が出てきますが、彼も同世代の日本人と語りあうことで変わっていきます。簡単に理解できないからこそ知ろうとする姿に考えさせられました。
 しかし、それぞれ章のエンディングには統括プロデューサーの歌が流れるという……。しかも「あなたを忘れない~♪」というベタすぎる歌詞。その想いを映画という作品で表現したのではないのでしょうか。これは蛇足というしか……。

かけはし

2017年/日本/95分(42分+53分)/2017年2月4日公開
http://kakehashi-movie.net

監督 中村柊斗

2017年4月10日

第3の愛

香港から上海へのフライトの途中、チージョン(ソン・スンホン)は機内で号泣する女性を見かけた。それは弁護士のユー(リウ・イーフェイ)。数日後、ユーは妹のユエ(モン・ジア)が自殺を図る原因となった勤務先の社長を訪ねるが、その彼こそがチージョンなのだった。さらに、建設作業員の労災金をめぐる騒動でチージョンが現場に駆けつけると、担当弁護士としてそこにいたのがユーだった。偶然の出会いが重なり、チージョンはユーに惹かれていく。そして結婚を前提に交際したいと告げるが……。

 身分違いの恋という、とりたてて目新しさのない悲恋物語。監督のイ・ジェハンは『私の頭の中の消しゴム』のあと、日本の原作を日本人キャストで撮ったりしてますが(『サヨナライツカ』)、今回は純然たる中国映画です。ソン・スンホンの台詞は吹き替えで、設定上もまったくの中国人。彼が演じる必要はあったのでしょうか……。とはいえ役者を美しく撮るのがイ・ジェハン監督の関心事のような気もして、その点では優れた手腕を発揮しているといえそう。昭和の二枚目と呼びたくなるような正統派のソン・スンホンですから、ますます古典映画を観ているようでした。音楽も大仰ですし。リウ・イーフェイも華美ではなく清楚な雰囲気の美人で、ぴったりですね。2人の熱愛が発覚しましたが、お似合いだと思います(映画とは関係ないけど)。
 ところで、ユー(リウ・イーフェイ)の妹のユエ役を演じてるのは元miss Aのジアだったんですね! ずっと「どこかで見たことのある顔だなぁ」と思ってたんですが、モン・ジアという本名を目にしてもピンときてませんでした。映画は初ですが、グループ脱退後は中国で女優として活動してるとのこと。ストーカー的な痛々しい役どころですが、うまいものです。
 タイトルの「第3の愛」ですが、原題も『第三種愛情』で、劇中に“3つの愛”について3度出てきます。冒頭のナレーションで「童話のなかの愛は甘いだけ、現実的な愛は退屈なだけ、そして……」と、最後に幸福なデート中のチージョン(ソン・スンホン)の言葉として「涙を流す女、女の涙を拭く男、そして……」と、いずれも3つめは観客に委ねるかたちでした。が、どれもよくわかりません……。もうひとつの(たぶん筋とは関係のない)ジェンチー(オウ・ハンシェン)の「愛を3種に分けてみろ」というお題にユーが答える「合法、違法、無法」はうまいなぁと思ったんですけど。