2019年5月3日

男が泣く

 ヤクザのナムス(ソン・ヒョンジュ)が癌で余命宣告を受けた。気になるのは、かつて兄弟分だったジョンギル(ソン・ジョンボム)が愛した女性とその娘のこと。7年前、ナムスは会長(キ・ジュボン)の命令でジョンギルを殺害したのだった。ヨンチェ(チョ・ミリョン)が営む民宿を訪れると、彼女は借金の返済を迫られている。ナムスはせめて罪滅ぼしをしたいと願うのだが……。


 韓国の映画やドラマでよく描かれるヤクザの悲哀。定番ともいえる物語ですね。KBS脚本公募の当選作で、とりたてて目新しさはないものの、じわりと沁みるヒューマンドラマでした。ソン・ヒョンジュ、チョ・ミリョンと地味なキャストですが、ぴったりな配役です。ナムスの部下で、ある意味で同じ道を辿ることになるソング役は、この頃よくドラマに出ていた現代舞踊家のイ・ヨンウ。


2019年5月2日

第7曜日

 深夜、入院中の女性患者が肛門の写真を撮影された。急な検査と言われたというが、看護師のヨニ(コ・ウンミ)は不審に思い、犯人を捜しはじめる。まもなく職員のひとりが犯行を認めるが……。


【ネタバレ注意】なんだか釈然としない話……。真犯人は尻マニア(パソコンに大量の尻画像が!)の恋人サンヒョン(キム・ミンソン)だったようですが、それを知ったうえで主人公ヨニ(コ・ウンミ)のとった行動が理解できません。犯人と知りつつ「医師の妻」になりたいがために真相を闇に葬ったというわけでしょうか? 前半に友人から「男に恩を感じさせれば、借りを返そうと大事にしてくれる」と言われる場面がありましたが、それを実践したということ? いずれにしても、ひどい。まるで共感できない結末でした。
 ユラ(キム・ヘジン)という恋人の元カノの登場も、本筋には関係なく、どうしても必要なものではないでしょう。なんだかすっきりしません。そもそも「肛門を撮られた」という設定の意味がわかりません。それって尻マニアの嗜好とはイコールじゃないと思いますし……。のちにマクチャンドラマを書く脚本家ならでは、でしょうか。


2019年5月1日

隣の家のおばさん

 ビョンフン(イ・テソン)は、就職もうまくいかないうえに、恋人のソヒ(チュ・ミナ)を友人のミンチョル(ホン・ワンピョ)に奪われた。そんなある日、隣の部屋に住むミジュ(ソヌ・ソン)と知り合う。ミジュは夫からDVを受け、人生をあきらめかけていた。やがてビョンフンはミジュの境遇を知り、放っておけなくなるが……。


 若者がワケありの人妻に寄せる恋の物語、でありながら、夫の死をめぐるミステリ的な展開も。イ・テソンはすでに映画『あなたを忘れない』で主演もつとめてますが、初々しいというか、ちょっと頼りない主人公を頼りなさげに演じてます。はかなげな美人妻に扮するのはソヌ・ソン。切ないストーリーです。
 KBS WORLDでの再放送を観ましたが、2011年に『私と彼が夢見た日々』というタイトルでDVD化されてました。


2019年4月30日

届きそうで届かない

カーリング選手のヨンジュ(パク・ユナ)は原因不明の耳鳴りを抱え、そのせいでチームが負けてしまった。故郷の義城郡に戻って地元チームに移籍すると、そこには、かつて憧れていたソンチャン(キム・ミンソク)がいた。2人はミックスダブルスでペアを組むことになるが、歩み寄ろうとするソンチャンに、ヨンジュは冷たい態度をとる。ヨンジュにとってソンチャンはカーリングをはじめたきっかけであると同時に、実は耳鳴りの原因でもあり……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、ラストを飾った作品。平昌オリンピックで人気を集めたカーリングが題材になってます。
 キム・ミンソクが飄々とした持ち味を出してますが、結末がはっきりとわからなくて、いまひとつ……。演技ではないっぽい笑いあう2人のラストカットはよかったんですけどね。


2019年4月29日

君と僕の有効期間

30歳になったヒョンス(シン・ヒョンス)は地下鉄の市庁駅でスンヨン(イ・ダイン)と10年ぶりに再会した。大学時代、ほのかな想いを抱きながら告白さえできなかった相手。ヒョンスは10年前を思い出しながらスンヨンの今が気になるが……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、9作め。いちばんよかったかな。
 主演のシン・ヒョンスは「青春時代(恋のドキドキシェアハウス)」で見たばかりで、好感度大。当て書きだそうで、なるほど、ぴったりの役柄でした。スンヨン役のイ・ダインは、キョン・ミリの娘で、イ・ユビの妹。渡辺麻友に似てますね。先輩役のミン・ジヌンも、お調子者ですが、いい役でした。
 ヒョンスとスンヨン、2人の出会いはMP3プレイヤーの取り違え。スンヨンのMP3プレイヤーには、動物園、ユ・ジェハ、キム・グァンソク、トゥルグックァといった懐メロ的な曲が入っていて、一方のヒョンスのMP3プレイヤーにはWonder Girlsの「Tell Me」やJEWELRYの「One More Time」といった当時(10年前の設定で、2008年)の曲が入ってました。そして、モチーフになっているのが、동물원(動物園)の1990年の曲「시청 앞 지하철역에서(市庁前地下鉄駅で)」。この不朽の名曲がやっぱり効いてます。もちろんリアルタイムで思い入れがあるとかではないですけど。
【ネタバレ注意】哺乳瓶もミルクもそれぞれ甥っ子のため、と誤解がとけるラストが微笑ましく、ほっこりします。“有効期間”のない思い出……というわけで新たな可能性を感じさせ、ハッピーエンドといっていいんじゃないでしょうか。後味のよい青春の物語でした。

2019年4月28日

赤いアメ

 出版社に勤めるジェバク(イ・ジェリョン)の唯一の楽しみは、同じ電車で通勤する取引先の書店員ユヒ(パク・シヨン)を見ること。妻子ある身のジェバクは、ただ見つめるだけで声をかけようとはしない。ユヒはそんなジェバクに好感をもち、2人の交際がはじまった。しかし、同僚のヨンフン(ミン・ソンウク)が、ユヒのせいで身を滅ぼした男がいると……。ジェバクはそんな噂を信じたくなかったが……。


 2008年に「ドラマシティ」が終了して2年、新たな短編ドラマ枠としてはじまった「ドラマスペシャル」の第1弾。名匠ノ・ヒギョンの脚本で幕を開けましたが、不倫のドラマってまったく感情移入できないので……。どんな言い訳を並べたところで最初からアウトなわけじゃないですか。ジェバクが「嘘ついてないか?」とユヒを問いつめますが、おまえが言う?みたいな。自分からつきまとって、一線を超え、相手の話も聞かず勝手な思い込みで去って、最後には【ネタバレ注意】ユヒが死んだと聞いて号泣……何それ。「隣の家のおばさん」のようにDVに怯えているとかだったら同情の余地もありますが、勝手に息子の留学を決めた妻への不満はあるにせよ、生まれたばかりの娘もいて、ごく平凡な境遇にあるのに。ジェバクはたんに身勝手な男にしか思えないのでした。ユヒのほうに目を向ければ、父を亡くして生活が一変したらしく、兄との縁も切ろうとしていたことがうかがえて、かわいそうではあるのですが。
 劇中に流れるのは、Cold Play「Yellow」、BLUR「No Distance Left To Run」、Radio Head「Fake Plastic Trees」といったオルタナティヴなロックでした。

2019年3月31日

ママの3回目の結婚

 母のウニョン(イ・イルファ)が再婚すると言いだした。ウニョンは18歳で出産したが、娘のウンス(イ・ヨルム)は幼い頃に祖母(キム・ヨンオク)に預けられて育った。今回が3度めの結婚。ウンスは自分勝手な母に嫌気がさしていた。そして、出会ったばかりのガンウ(ヨン・ジュンソク)を誘惑するウンスには、ある計画があって……。


 2018年の「KBSドラマスペシャル」、8作め。
 主人公のウンス役を演じるイ・ヨルムは「家族を守れ」で知りましたが、ちょっと勝気、でも実は繊細な心をもっているという娘役にぴったりですね。
 娘の計画と、母の隠しごと――まぁ想像のつく展開ではありましたが、親子の感動物語。【ややネタバレ注意】「何回寝たら会いに来てくれる?」という幼いウンスの言葉を、最後、母であるウニョンが口にするところ、うまい脚本です。

2019年3月30日

逃避者たち

ある日突然、恋人のヒジュ(チェ・ユファ)が自殺した。刑事のジウク(イ・ハクジュ)は彼女に会うため夢の世界に逃避するが、そこでは“長期滞在者”の取り締まりが行われ、不気味な男たちに追われる。そんななかセヨン(キム・セビョク)と出会う。彼女もまた亡くした人に会うために夢へと逃避していて……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、7作め。
 半分以上が夢のなかで物語が展開し、幻想的な雰囲気。【ややネタバレ注意】ヒジュが自殺した理由とセヨンが息子を亡くした交通事故に関係があるのだとばかり思っていたので、ちょっと肩透かしを喰らったような気がしないでもありません。
 セヨン役は『ひと夏のファンタジア』のキム・セビョクでした。主人公のジウク役を演じているイ・ハクジュは、カン・ドンウォン主演『プリースト 悪魔を葬る者』の元になった短編映画『12番目の補助司祭』で主演をつとめていた彼ですね。
 Glen Campbellの「Southern Nights」やAnimalsの「When I Was Young」という1960~70年代の曲のほか、なぜか映画『ブルーに生まれついて』のOST、Ethan Hawkeが歌う「I've Never Been In Love Before」も。ジウクがヒジュと最後まで観た唯一の映画と語るのは『デッドマン』(それこそ寝そうな……)なんですが。権利上の関係で差し替えられているのかもしれませんね。

2019年3月29日

テキサスヒット

 家を差し押さえられて離婚したジェフン(ソン・ヒョンジュ)は、元妻(チン・ギョン)と娘たちのために家の保証金を用立てるが、彼女の家には新しい男が出入りしていた。一方、ジェフンといっしょにスーパーの配達員をしているスンヒョン(ユゴン)は、母親から預かっていた大金をスポーツ賭博で失ってしまう。ある日、配達先でプロ野球選手のホンギ(キム・グァンヒョン)が愛人といるのを見かけたスンヒョンは、人生大逆転の計画を思いつく。


 タイトルになっている「テキサスヒット」は、弱い当たりのフライが内野手と外野手のあいだに落ちるヒットのことで、いわゆる「ぽてんヒット」。野球をモチーフに、2人のダメ男が一発逆転を狙って繰り広げるヒューマンドラマですね。小気味よいどんでん返し。
 野球選手役のキム・グァンヒョンは実際に元プロ野球選手だとか。現在は日本でも公開が決定した『工作 黒金星と呼ばれた男』など映画俳優として活動しているようです。

2019年3月8日

こんなにも長い別れ

サンヒ(イム・ジュファン)はデビュー作『鳥たちはサマータイム』が50万部のヒットとなった小説家。ところが、出版社ピットルと1億ウォンで契約したものの、新作が書けないまま5年が経っていた。恋人で編集者のイナ(チャン・ヒジン)は3ヶ月以内に原稿をもらうようク代表(チョン・ジェソン)に命じられる。サンヒの才能を信じるイナは「作家は書くだけでいい」と励ますが、サンヒはまったく書けない。やがてサンヒはイナといても息苦しさを感じるようになり……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、6作め。
 スランプに陥った小説家のサンヒ(イム・ジュファン)と、その恋人でもある担当編集者のイナ(チャン・ヒジン)、2人の。これはだいたい男のほうが悪いですね(笑)。イナは「本を売るのは私の仕事だから、あなたはただ書くだけでいい」と励ましていて、その言い方にも厭味などなく、信じて支え続けているわけです。イナが新人賞作家の担当になったことで波風が立ちますが、これも完全にサンヒのやっかみ。社長に対しても逆ギレとしかいいようがありません。5年も最後まで書き上げたことがないなんて、そりゃあんたが悪いだろう、というしかないですよね。
 ところで、ラストシーンが気になりました【以下、ネタバレ注意】。1年後にイナがサンヒの新作を書店で手に取るのですが、読み終えて去っていきます。え、小説を1冊丸ごと立ち読みで済ませたの!? ひどい。編集者としてあるまじき行為じゃないですか(笑)。
 イナとサンヒの大学路デートで流れるのはユンナの「My Song and…」、エンディングに流れるのはLaura Pausini「Cuando Se Ama」でした。

2019年3月2日

金子文子と朴烈

1923年、東京。文子(チェ・ヒソ)は「犬ころ」という詩に心を奪われた。その詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈(イ・ジェフン)。共鳴した2人は同居誓約を結び、不逞社のメンバーとともに社会を変えるべく行動する。ところが9月1日、関東大震災が発生。自警団による朝鮮人虐殺が起こるが、その事実を隠蔽するため、水野内務大臣(キム・イヌ)は立松判事(キム・ジュナン)に朴を大逆罪で起訴するよう命じた。文子と朴は歴史的な裁判で法廷に立つことに……。

 平日の昼にもかかわらず、ほぼ満席。金子文子に興味をもって図書館で関連書籍を借りようとしましたが、どれもみな貸し出し中でした。予想以上の反響を呼んでいるようです。
 なんといっても文子役を演じたチェ・ヒソが最高。幼い頃に日本に住んでいたことはあるそうですが、ほとんど完璧な日本語で、日本語訛りの朝鮮語まで使いこなします。たくましく、それでいて悪戯っぽい笑顔を見せたり、たまらなくキュート。イ・ジェフンももちろんいいんですが、チェ・ヒソが魅力的に演じた文子が圧倒的に印象に残ります。原題は『朴烈』ですが、この邦題は正解ですね。
 それともうひとり、立松判事役のキム・ジュナンが素晴らしい。在日コリアンのイ・サンイル弁護士役を演じた『HERSTORY』で驚いたのですが、本作でも流暢な日本語を使ってます。でも日本で暮らした経験は3ヶ月ほどしかないとか。すごいのは言葉だけでなく、文子と朴に向きあいながら時に揺れていく姿が絶妙です。2018年にはドラマ「時間」でメインキャストを担いましたが、今後もますます期待したい俳優ですね。
 シリアスな物語ではありますが、2人の主人公にはユーモアがあり、ときどきクスッと笑える場面も。文子の「消え失せろ!」「静かにしろ!」といった啖呵は痛快です。司法大臣や警視総監があっさり辞職するとか、日本政府の面々は滑稽だったり。
 そして、単純に日本が悪というのではなく、日本人のなかにも心ある者がいたことははっきり描かれてますし、朴自身にも「日本政府は憎いが、日本の民衆にはむしろ親近感を覚える」という台詞がありました。今こそ観るべき映画。全国順次公開中ですが、さらに上映館を拡大してロングランを続けてほしいものです。

2019年2月27日

30だけど17です

高校生のウジン(ユン・チャニョン)はソリ(パク・シウン)に恋をした。ところが、勘違いから友人のスミを彼女の名前と思い込んでしまう。同じバスに乗り合わせたある日、ウジンはソリに告白しようとするが、スミが乗ってきてウジンは逃げるようにバスを降りてしまう。その直後、バスが事故に巻き込まれて横転。スミは命を落とした。それを知ったウジンは初恋の相手を死なせてしまったと罪悪感を抱え、心を閉ざしてしまう。
 13年後、昏睡状態だったソリ(シン・ヘソン)が意識を取り戻す。時の流れに戸惑いながらもかつて叔父夫婦と暮らしていた家を訪ねると、そこにはウジン(ヤン・セジョン)が甥のチャン(アン・ヒョソプ)と暮らしていた。ウジンとソリはおたがいに気づかぬまま再会したのだが……。

 派手さはないものの、しみじみと、いいドラマでした。
 心は17歳のままのソリ役にシン・ヘソンがぴったりです。心を閉ざしてきたウジン(ヤン・セジョン)もある意味で17歳のまま。初恋同士のピュアな2人が知らぬまま再会して繰り広げるラブストーリーですが、心の傷を癒し、トラウマを克服していく成長の物語でもあります。周辺人物も魅力的で、チャン(アン・ヒョソプ)も、ジェニファー(イェ・ジウォン)も、切なかったり痛ましい過去を抱えていたりしますが、みんな、いい人。それぞれの優しさに、何度、涙を流したことでしょう。さらに、すべて――ウジンとソリがたがいに気づくだけじゃなく、13年前の事故の真相などなど――が明らかになったとき、そうだったのか~!と感動が押し寄せてきます。
 コミカルな場面もあり、ミステリアスな要素もあり、笑ったり泣いたり。2018年のベスト3には入れたい良作です。

2019年2月26日

ラブリー・ライバル

ソンリム小学校で5年2組を受け持つミオク(ヨム・ジョンア)は、新学期早々から遅刻し、それでいて生徒の遅刻は許さない教師。その一方、大人びた美少女のミナム(イ・セヨン)は堂々と遅刻してくる。そんな田舎の小学校に、独身の美術教師サンチュン(イ・ジフン)が赴任。ミオクは猛烈にアプローチするが、ミナムもまたサンチュンにつきまとい……。

 14年も前の作品を再見しましたが、なかなか楽しめました。先生と生徒がライバルという構図のラブコメディとして進みますが、いつの間にかクォン先生のことはどうでもよくなっていきますね。ミナムの本当の気持ちが明かされるところは涙を誘われます。
 ラストシーンに、監督の前作『ぼくらの落第先生』からチャ・スンウォンが役名そのままに特別出演。若い。

2019年2月25日

ミス・キムのミステリー

 ビンナグループのスポーツ事業部に、ミス・キムことミギョン(キム・ダソム)が派遣社員としてやって来た。チェ・チーム長(キム・ジヌ)は、社内に産業スパイがいるとして、インターンのギジュン(クォン・ヒョクス)にミギョンの監視を命じる。そんななか新製品を開発したウネ(イ・チェウン)が何者かに襲われた。ギジュンはますますミギョンを疑うが……。


 2018年の「KBSドラマスペシャル」、5作め。
 元SISTARのキム・ダソムが主演で、相手役をコメディアンのクォン・ヒョクスが演じてます。タイトルどおりのミステリアスな展開。ですが、ギジュン(クォン・ヒョクス)の「孤独に慣れると感情が鈍くなるんだ」という言葉がミギョン(キム・ダソム)の心を揺さぶったり、ラブストーリーの側面もあります。

2019年2月24日

ピアニスト

 インサ(ハン・ジヘ)は小学校でピアノを教えているが、非常勤講師で、再契約の話はまだない。恋人のジョンウ(チェ・フィリップ)は親のもってきた見合い話を断れず、インサにただ「待ってくれ」と言う。別れを告げて車を降りたインサだが、車内にバッグを忘れたことに気づく。しかし、ジョンウはそのまま走り去ってしまった。茫然とするインサ。そこに通りかかったのはピアノ修理工のゼロ(チェ・ミノ)だった。やがて2人は距離を縮めていくが……。


 8年以上も前の作品ですが、主演の2人は変わりませんねー。やはりそれがスターというものなのでしょうか。SHINeeのミノはこれがドラマ初出演。初々しいですね。切ない物語ですが、新たなはじまりを予感させるラストシーンに好感がもてます。

2019年2月22日

あまりにも真昼の恋愛

大手企業に勤めるピリョン(コ・ジュン)が平社員に降格させられた。そのとき頭に浮かんだのは16年前の出来事で、ピリョンの足はかつて通っていた鍾路のハンバーガーショップに向かう。演劇のポスターに見覚えのあるタイトルを目にして劇場に足を運ぶと、舞台に立っていたのはヤンヒ(チェ・ガンヒ)。1999年、ピリョン(チョン・ソンウ)は後輩のヤンヒ(パク・セワン)から唐突な愛の告白を受けたのだった……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」でいちばん楽しみにしていたのが、この作品でした。
 原作は第7回若い作家大賞を受賞したキム・グミの同名小説。表題作を含む短編集『あまりにも真昼の恋愛』は晶文社の「韓国文学のオクリモノ」シリーズから刊行されてます(訳:すんみ)。ちなみに、ドラマではハンバーガーショップがマクドナルドではない店になっていて、フィッシュバーガー(マクドナルドならフィレオフィッシュですけど)がメニューからなくなっているといった件はなくなってました。ピリョンがQueenを聴いて泣く場面もありません。
 小説の映像化というのはひとつの解釈なので、いろいろあっていいのでしょう。「忠実」というのも捉え方によると思います。が、しかし、出だしからずいぶん感触が違って、あまり入り込めなかったのが正直なところです。決定的に違うのは、原作が一貫してピリョンの視点で描かれている点。小説ではヤンヒが感情を吐き出したりすることはありません。注意深く見ると――時系列が交錯するのでわかりにくいですが――終盤のピリョンとヤンヒの会話などはすべてピリョンの想像(あるいは、ありえた可能性)なので、けっして改変してるというわけではないのですが、全体的に受け取る印象がだいぶ違うなぁと思ったのでした。ポスターなどのヴィジュアルイメージはすべてヤンヒ(チェ・ガンヒ)ですし。
 ところで、チェ・ガンヒ出演が報じられたときは16年前も本人が演じるから彼女なのだと思ったのですが、違いましたね。1999年のヤンヒ役はパク・セワンでした。
 劇中にはReneé Dominiqueの「La Vie En Rose」や「What A Wonderful World」などが流れました。

2019年2月20日

女教師~シークレット・レッスン

ヒョジュ(キム・ハヌル)は男子校で働く非正規採用の教師。職場でもストレスを感じ、家に帰れば恋人のサンウ(イ・ヒジュン)が小説を書くといいながら自堕落な生活を送り、苛立ちは募るばかりだった。そんなある日、理事長の娘というコネで新人教師のヘヨン(ユ・イニョン)が採用される。ある夜、バレエ特待生のジェハ(イ・ウォングン)が体育館の倉庫でヘヨンとセックスしているところを見てしまったヒョジュは、ヘヨンに警告する一方、ジェハに興味をもちはじめ……。

 邦題には「シークレット・レッスン」なんていう余計なサブタイトルがついていて、まるで往年の“コーリアン・エロス”みたいです。が、そっち方面を期待した人は肩透かしを喰らうでしょうね。濡れ場はあるものの、ユ・イニョンは胸さえ見せず、キム・ハヌルはまったく露出がありません。
男子高校生を奪いあう女性教師の話かと思いきや、そう単純な物語ではないのでした。エグい……。イ・ウォングン目当てで見るとドン引きするかもしれません。予想外の展開で、衝撃的。しかし、ところどころで「こいつ、ヤバいな」と思わせる表情を見せてたキム・ハヌルはうまいですね。キム・ハヌル主演で教師と生徒の恋といえばドラマ「ロマンス」ですが、こちらは真逆。さわやかさのかけらもありません。ドロドロの愛憎劇なのでした。

2019年2月18日

カタツムリ孝試院

 ジュンソン(イ・ギュハン)はテレビ局への就職を目指して5年め。学生時代から暮らす大洋考試院で総務の仕事をしながら入社試験に挑戦し続けている。ある日、ジュンソンが目覚めると、隣に見知らぬ女性が寝ていた。彼女は隣の16号室に入居したミル(ソ・ジヘ)。自由奔放なミルに戸惑うジュンソンだが……。


 最新の「KBSドラマスペシャル」を放送中のKBS WORLDですが、なぜか古ーい作品も毎週オンエアされてます。見逃しているものも多く、ありがたいかぎりです。
 この作品の舞台は、韓国ドラマによく出てくる孝試院(고시원/コシウォン)。大学入試や公務員試験の受験者が長期滞在する宿泊施設で、格安のため、地方出身の大学生や高齢者、日雇い労働者などにも利用されてます。いろんな人が集まるので物語にもなりやすいんでしょうね。ここでも、ある人は夢を追いかけていたり、ある人はしばし現実から逃避していたり、さまざまな人間模様が描かれます。
 最近は悪女のイメージが強いソ・ジヘが自由奔放なヒロインのミル役。「永久脱毛よ」と脇を見せたりして新鮮です(笑)。また、韓国旅行中の日本人という役でA'st1のトモこと藤原倫己が出演。途中で帰国したかと思いきや最後まで出番はあって、終盤にヒロインに向かって自分語りをしたり(日本語ですが)わりと見せ場もありました。さわやか好青年です。演出のキム・ジノンはのちに「優しい男」などの人気作を手がけますが、この頃はまだ新人で、同年の「最後のフラッシュマン」で今月のPD賞を受賞したりと注目を浴びはじめた時期のようです。
 劇中に流れるのは屋上月光の「하드코어 인생아(ハードコア人生よ)」。ちょうどリリースの年ですね。

2019年2月17日

マグロとイルカ

ヒョノ(パク・ギュヨン)は恋愛経験ゼロの27歳。母の代わりに区民プールの水泳教室に通うことになるが、講師のユラ(ユン・バク)が気に入らない。しかし、そこで出会ったウジン(チョン・ゴンジュ)に一目惚れ。教室の仲間がヒョノの恋を応援しようと盛り上がる一方、ユラはウジンが赤ん坊を抱える女性といっしょにいるのを見かけた。ヒョノが傷つかないよう、ユラは恋の邪魔をするが……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、3作め。
 原作のウェブトゥーンからかなり端折ってるそうですが、約1時間の枠ですからね。気楽に楽しめるラブコメディとしてまとまってました。ちなみに「イルカ」と言いつつ映像に出てくるのはシャチなのですが、原作でも同様とのこと。ヒョノがそう思い込んでいるという設定なのか、作者の勘違いなのかは不明らしいです。そこは忠実に映像化したわけですね。
 ウジン役のチョン・ゴンジュはJYP ENTERTAINMENTの新人俳優だそうですが、パク・ギュヨンもユン・バクもJYP所属。パク・ギュヨンは「花さく青春ロマンス~マジック学校~」で主人公の親友役を演じてました。さばさばとした感じのいい役どころでしたが、この作品でもコロコロと表情の変わるキュートな役です。

2019年2月16日

忘れられた季節

鷲梁津の孝試院に暮らすウンジェ(コ・ボギョル)は警察官を目指して5年め。薄い壁の向こうから聞こえてくる物音は耳栓で遮断し、生活のすべてを公務員試験の勉強に費やしている。孝試院近くのコンビニで働くウヒョン(ジェホ)は、ウンジェのことが気になっている。ある夜、ウンジェは女性の悲鳴を耳にするが、筆記試験が近いため、無視した。その後、隣室のジヨン(コ・ミンシ)が遺体となって発見される。同じ孝試院に住むジュンギ(キム・ムヨル)が些細な諍いから彼女を殺害したのだった。ジュンギは社会部記者をしている自慢の弟ユンギ(チョン・ジュンウォン)に打ち明けるが……。

 なんともいたたまれない物語……。小さな孝試院で起きた事件が、想像もしなかったかたちで大きくなってしまい、それを当事者たちは知らないまま、さらなる悲劇につながっていくという。誰も救われない、ひとりもハッピーエンドを迎えない後味の悪さはなかなかなものです。それでいて現実味のある悲劇というのがまた……。戦慄のラストです。
 かわいらしいコ・ボギョルがいっさい笑顔のない役どころで、キム・ムヨルもちょっと気味の悪い感じを出してます。

 ところで、コンビニで煙草を買う場面が回想を含めて3度ほどありますが、日本語字幕に「ライターください」と出ました。映像を見れば一発でわかることですが、これ、誤訳ですね。ライターじゃなく煙草のLiteという銘柄を言ってるので、意訳するとしても「煙草ください」。なんで毎回ライターを買うんだよ……って思わなかったんですかね。

2019年2月15日

私の黒歴史 間違いノート

高校で数学を教えているドヘ(チョン・ソミン)は、大学入試問題の出題委員に選ばれ、3週間の合宿へ。問題流出を防ぐため警察から監督官が派遣されているが、そのひとりが、大学の同期、ピルスン(パク・ソンフン)だった。初恋の相手だが、彼こそがドヘの“黒歴史”のはじまり。日々綴っている“間違いノート”の元凶なのだった。しかも元夫のジンサン(オ・ドンミン)が検討委員として合流し……。

 毎年楽しみにしている「KBSドラマスペシャル」が今年も(韓国での放送は去年ですが、日本で)はじまりました。全10作です。まずは1作め。
 チョン・ソミンといえば最近はバラエティ番組「ランニングマン」のイメージなので、主演は同姓同名のもうひとりのほうかと思ってました(笑)。脚本公募の最優秀作。誰にでもある“黒歴史”をどう乗り越えるかといった物語で、数学をからめてるのがちょっとユニークです。再会した初恋の相手、離婚した元夫との三角関係が中心で、チョン・ソミンの天然系の愛らしさを楽しむ作品といったところ。ゲロのシーンは韓国お決まりのパターンですね。

2019年2月12日

to. Jenny

ミュージシャン志望のジョンミン(キム・ソンチョル)は舞台恐怖症という致命的な欠点を抱えている。一方、アイドルとしてデビューしたもののグループが解散して再び練習生となったナラ(チョン・チェヨン)は、シンガーソングライターとして売り出すため、事務所代表(チョ・グァヌ)からギターを練習するよう命じられる。コンビニでアルバイトをしているジョンミンは、高校時代の憧れだったナラと再会し、ギターを教えることになるが……。

 すごくよかった! 映画『ONCE ダブリンの街角で』みたいな、音楽をテーマにした青春ドラマ。「ミュージックドラマ」と銘打っているだけあって、チャン・ギハと顔たちの「ㅋ」をストリートミュージシャンたちが歌う場面ではじまり、冒頭から期待が高まります。音楽がちゃんと重要な役割を担っていて、好感のもてる、後味もよい作品でした。
 なんといってもキム・ソンチョルの歌がいい。ミュージカル出身だそうで、さすがですね。『刑務所のルールブック(賢い監房生活)』の飄々とした役どころが印象的でしたが、これがドラマ初主演。妹のオクヒ(チェ・ユリ)もまた最高で、兄のジョンミンを慰め、励まし、8歳とは思えない頼もしさです(笑)。音楽をやることに反対する叔父役は『息もできない』のヤン・イクジュンでした。
 OSTはデジタル配信のみのようですが、Apple Musicで全7曲が聴けます。最初にオクヒから「何その歌詞」と言われる「논현동 삼겹살(論峴洞サムギョプサル)」は“知ってみると昏睡状態”(すごい名前……本名はキム・ギョンボム)の2016年の楽曲が元で、出演もしてるチョ・ジョンチが編曲してるそうです。ナラに贈った「Your Song」はサム・キム、デソン役のイ・サンイといっしょに歌う「Grab Me」はチェ・ナクタのカヴァーなんですね。オクヒがコーラスで加わる「Tiramisu cake」は、ナラが引きこもる場面で流れる「깊은 우리 젊은 날」のWe Are The Nightによる2015年の楽曲。すべてオリジナルというわけじゃなかったんですね。ちなみに解散したアイドルグループ“ココア”の曲として流れるのはDIAの「나랑 사귈래」でした。これもOSTに含まれてます。
 演出は「1泊2日」などバラエティ番組を手がけてきたパク・ジヌ(メインPDではないようですが)。キム・ジュノがチョイ役で出てくるのはその縁ですね。

2019年2月1日

花さく青春ロマンス~マジック学校~

大学生のイ・ナラ(ジニョン)は幼なじみのウリ(パク・ギュョン)に告白するため、伝説のマジシャン、マスター・ハン(リュ・スンス)の開くマジック学校の門を叩いた。そこには、手術を控える小児患者を励ましたい研修医ジュン(ニックン)、なんでも理屈で解明しないと気が済まない天才物理学者のソン(カン・ユンジェ)、そして人気マジシャンのジェイ(ユン・バク)もやって来る。ジェイは脱出マジックに失敗して行方不明の兄ケイ(パク・ジュヒョン)が生きていると信じ、最後に言葉を交わしたマスター・ハンから手がかりをつかもうとしているのだった。それぞれの事情で集まった4人だが……。

 ほとんどの出演者がJYP所属ですが、そもそも制作がJYPピクチャーズなのでした。脚本・演出のキム・ドウォンはインディ系の映画監督だそうです。
 GOT7のジニョンが中心人物ではありますが、4人それぞれの物語で、青春群像劇。イ・ソン役のカン・ユンジェが、韓国版のヴィジュアルでは中央にいるように、主人公並みの比重を占めてました。ソンとイスル(シン・ウンス)のぎこちない恋模様が楽しい。

2019年1月31日

空腹な女 シーズン2

前作から2年以上なるというのに、キャストはほぼ続投。ヤン・ヒョンミンだけ、酒場のマスターからVJ(YouTuberみたいなものですね)と別の役になってました。
 ジェヨン(パク・ヒボン)は転職しますが、その会社も風変わりな連中ばかりで、なんだかシュールでさえあります。親友のウジョン(イ・ウジョン)はブラジルに行ってしまいましたが、ときどきチャットで登場。代わりに、ウジョンの友人だったダジョンが相方的なポジションとなりました。脱毛サロンに勤めている設定で、自宅でジェヨンに施術する場面は爆笑です。演じるのはパク・ミンジという舞台女優ですが、この後、役名からアン・ダジョンという芸名にしたそうです。
 シーズン2も気軽に楽しめる作品。エピローグで料理のレシピを紹介するのも同様で、今回はジェヨン以外が登場することも。シーズン3も期待したいところです。

空腹な女

旅行会社に勤めるジェヨン(パク・ヒボン)は30代の独身女性。会社で散々な目に遭って帰宅すると、別れた恋人(パク・ヒョックォン)の姿が浮かんでしまう。それも空腹のせい? ジェヨンは冷凍ごはんと残り物の野菜で炒飯をつくり、ビールを開ける。「おいしいごはんとあたたかい寝床があれば幸せよ」。

 とりたててドラマティックな出来事が起こるわけではなく、30代女性のリアルなシングルライフといった感じ。パク・ヒボンは好きなので楽しく観ました。1話が10分弱というウェブドラマで、毎回、エピローグ的に料理のレシピを紹介します。日本でもエスビー食品が販売する調味料ブランド「李錦記」がスポンサーのため、だいたい似たような料理ですけど。
 エピソード3「不幸の味」ではイ・ランの曲が流れてましたが、エピソードごとに演出家が違って、エピソード3はイ・ラン自身の演出だったんですね。

2019年1月30日

死の賛美

朝鮮人が国と自由を失った日本統治時代。早稲田大学に留学中のウジン(イ・ジョンソク)は、仲間たちと劇団を起ち上げ、祖国の心を忘れまいと劇作に励んでいた。一方、シムドク(シン・ヘソン)は声楽家になることを夢見、上野音楽学校で声楽を学んでいる。ナンパ(イ・ジフン)の紹介で劇団に参加したシムドクは、はじめこそ反発するものの、次第にウジンと惹かれあうようになっていく。ところが、朝鮮での巡回公演を終え、解散式のため集まったウジンの実家で彼に妻がいることを知るのだった。――5年後、父の事業を継いだウジンは、シムドクが声楽家として朝鮮初の洋楽公演を行うことを知って会場へ。再会した2人は……。

 これが2019年の韓国ドラマ始めとなりました。正月に観るような作品ではありませんでしたけど……。ひとことでいえば、心中モノ。メインとなるキャラクターはいずれも実在する人物で、実話がもとになっています。1926年に玄界灘に身を投げたソプラノ歌手の尹心悳[ユン・シムドク]と劇作家・金祐鎭「キム・ウジン」の悲恋物語です。1991年にチャン・ミヒ主演で映画として描かれたほか、ミュージカルもあるそうで、これは特別編成された全3話のドラマとなっています。韓国での放送最終日から日本でもNetflixで観ることができます。
 こういう話って、どうしても「何も死ななくたっていいじゃん」と思ってしまうんです……。でも、“死の賛美”こそしませんが、美しいドラマではありました。とはいえ、日本人の日本語が拙いのはガッカリですね。治安警察役の武田裕光(「医心伝心」のサヤカ役など韓国で活躍中)を除くと、まともに聞けるのは友田恭介役のイ・ジュニの日本語だけでした。韓国ドラマ“あるある”ですけど。
 ちなみに、タイトルになっているのはユン・シムドクによる歌のタイトルで、イヴァノヴィッチ作曲「ドナウ川のさざ波」に朝鮮語の歌詞をつけたもの。日本でのレコーディングからの帰途、関釜フェリーから身を投げたのだそうです。心中事件が起こって爆発的にヒットしたとか。実際のレコードの音声がYouTubeにあったので下に貼っておきます。