2018年10月30日

トック

幼いドック(チョン・ジフン)とドッキ(パク・ジユン)は祖父のハクス(イ・スンジェ)と3人で暮らしている。ある日、ハクスは余命がわずかであることを告げられる。息子である2人の父親は1年前に亡くなり、母親はある事情からハクスが家を追い出したのだった。ハクスは遺されるドックとドッキのことが心配で……。

 餅の映画かと思ったら違うんですね。餅(トック)ではなく、登場人物の名前でした。劇中でほんの数回しかフルネームは出てこず、語頭では濁らないためにそう表記したのでしょうが(NHKでの「冬のソナタ」のカン・ジュンサンとチュンサンのように)、誤解を避けるためにも「ドック」のほうがよかったんじゃないでしょうか。
 ベタな物語といえばベタなのですが、もう、これは涙なしには観られません。特に後半は嗚咽する声が漏れないか心配になるほどでした。
 ノーギャラで出演を買って出たらしいイ・スンジェはいわずもがな、ドック役のチョン・ジフン(「トッケビ」に出てた子ですね)の熱演が涙を誘います。妹のドッキ役のパク・ジユンちゃんはたどたどしいな……と思ったら、愛着障害で5歳だけど言葉は3歳児並みという設定なのでした。絶妙です。喧嘩はしても仲直りする少年同士、そして、おそらくハクス(イ・スンジェ)とは長年の幼なじみなのであろうチョン女史(ソン・ビョンスク)と村長(チャン・グァン)という大人の関係性にも微笑ましいものがありました。いわゆる悪人が出てこないところが美点でしょう。冷たい現実を突きつけるのも映画かもしれませんが、希望を感じさせてくれるのも映画ですから。駆けだす兄妹のラストショット、最高です。
 それと、母親がインドネシア人という設定で、多文化映画という側面もあるんですね。女性監督パン・スインのデビュー作ですが、草稿から8年かかっているそうです。大学時代に東南アジア出身の友人がいて、多文化家庭について映画にしたかったとのこと。

トック

原題 덕구(ドック)
2017年/91分/2018年4月5日公開(韓国)
コリアン・シネマ・ウィーク2018にて日本初上映

監督・脚本 パン・スイン

イ・スンジェ……キム・ハクス ドックとドッキの祖父
チョン・ジフン……キム・ドック(金徳求)
パク・ジユン……キム・ドッキ ドックの妹
Cherish Maningat……バネッサ ドックとドッキの母
キム・グァンシク……キム・ソンボク ドックとドッキの亡き父
ソン・ビョンスク……チョン女史 三巨里スーパー店主
チャン・グァン……村長
チャ・スンベ……ユ・ジョンホ 村の医師
コ・スンボ……ジョンフン ドックの友人
チャン・ロイ……ヨンシン ドックがゲーム機を盗んだとチクる少女
チャン・ギソプ……里親
ユン・ソンア……里親
チョン・ソヨン……里親を紹介する社会福祉主任
キム・ビョンチョル……プンナム保険の社員
ハン・ボベ……保育園の先生

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