キム・ギヨン監督によって映画化された『玄海灘は知っている』の続編にあたる小説です。第2部『玄海灘は語らず』、第3部『勝者と敗者』で"阿魯雲伝"は完結するのですが、それらを統合してこの邦訳『玄海灘は語らず』はできてます。『勝者と敗者』の3分の1弱が削られてるそうですが、著者自身が大幅に手を入れ、章を改めるなどしてるとのことなので、抄訳ではなく独立した作品といえるかもしれません。
前作、軍から脱走して秀子とともに彦根を目指した阿魯雲。その後、同胞と出会って何とか生き抜いてきた阿魯雲でしたが、すれ違いから秀子と離ればなれになってしまい、ついに脱走兵として捕らえられてしまいます。そして、軍法会議にかけられるのを待つばかりの阿魯雲でしたが、ついに日本が敗戦の日を迎えます。しかし、そこでめでたしめでたしというわけではなく、阿魯雲は大きな決断を迫られるのでした......。
単純なハッピーエンドではありませんが、希望に満ちた結末です。いや、もちろんその後の苦労も歴史的に考えると想像はできるわけですけど、少なくともラストの主人公たちはとても前向きです。2段組で440ページという大著。ずっしりと読みごたえのある作品でした。
玄海灘は語らず――続阿魯雲伝
韓雲史/村松豊功・訳/角川書店/1993年/3,398円
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