マルティニークからの祈り

2004年。自動車整備工場を営むジョンベ（コ・ス）は、妻のジョンヨン（チョン・ドヨン）、4歳の娘のヘリン（カン・ジウ）と慎ましくも幸福な生活を送っていた。ところが、後輩のスジェ（ホ・ジュンソク）が自殺し、借金の保証人となっていたジョンベはすべてを失ってしまう。追いつめられたジョンヨンは怪しいと思いつつも金の原石を運ぶ仕事を引き受けた。ところが、スーツケースの中身はコカイン。フランスのオルリー空港で挙動不審なジョンヨンは麻薬密輸の現行犯で逮捕される。そして、言葉も通じないままマルティニークの刑務所に送られて……。

　

2015年4月23日、韓国文化院の定期韓国映画上映会にて鑑賞。最近は定員以上の応募で抽選になることもあり、たまに落選することも。今回もほぼ満席のようで、開場時間にはエレベータ前に人があふれるほどの混雑ぶりでした。
　冒頭で「実話をもとにしたフィクションです」と出るのですが、どこまでが実話で、どの程度の脚色がなされているのか、気になります。駐仏韓国大使館や外交通商部の職員たちがあまりにも無責任でひどいんですが、あれも誇張なしなのだとしたら、驚くべき無能ぶりです。大使館の職員が僻地に飛ばされるところで会場からは笑い声が起きましたが、まったく笑えません。また、マルティニークでの夫婦の再会をテレビ局が追っていたのも現実なのであれば（ドキュメンタリ番組で紹介されたのは事実のようです）、むしろその映像を見たいと思いました。
　もちろん麻薬と知らずにしたこととはいえ密輸に加担したことは事実であって、ジョンヨンが罪を償わなければならないのは当然です。が、あまりにも不当な扱いを受ける姿は痛々しい……。そして、ようやく受けられた裁判で「私は罪人です」と口を開いたあとの「家族に対しても償いたい」という言葉がグッときました。
　信用できない政府、インターネットを通じて声を上げる市民……というところが、実に韓国らしい感じがします。
　それにしてもカン・ジウちゃん、さすが。2年ぶりの母との再会の場面には泣かされました。

マルティニークからの祈り

原題 집으로 가는 길（家へ行く道）
2013年／韓国／131分
2013年12月11日公開（韓国）／2014年8月29日公開（日本）
http://martinique-movie.com/

監督 パン・ウンジン（『オーロラ姫』『容疑者X～天才数学者のアリバイ』）
脚本 ユン・ジノ

チョン・ドヨン……ソン・ジョンヨン
コ・ス……キム・ジョンベ
カン・ジウ……ヘリン　ジョンヨンとジョンベの娘
トン・ヒョヒ……ジョンベの姉

リュ・テホ……パン領事　駐仏韓国大使館
ペ・ソンウ……チュ・デユン　駐仏韓国大使館の課長
チョ・スジョン……駐仏韓国大使館の女性職員
イ・ミヌン……駐仏韓国大使館の職員
キム・ソンジュ……フランス検察庁の通訳
チェ・ユヒ……ジヘ　マルティニークの留学生

チェ・ミンチョル……ソ・ムンド　ジョンベの後輩
オ・ヨナ……イ・スジ　ムンドの恋人
イ・ドンフィ……クァンシク　ジョンベの後輩
ホ・ジュンソク……ムン・スジェ　ジョンベの後輩
パク・ユニ……シン・チョロ　KBCのプロデューサー
パク・チイル……イ捜査官　ソウル地方検察庁
チェ・グィハ……ソウル地方検察庁の捜査官
チョ・スンヨン……ナム主事　外交通商部
ソン・ソングン……ムンドの裁判の判事
イ・ドギョン……チュ室長　ムンドを追っているヤクザ
パク・チファン……ハ・テグァン　詐欺の指名手配犯
ソ・ジノン……パク・サンチョル　麻薬密輸業者
キム・ミギョン……大家
イ・ジョンウン……チムヂルバンにいた中年女性
カン・ソイ……郵便局の局員
チャン・グァン……駐仏大使
キム・ヘゴン……代行運転 車主

Joanna Kulig……ヤルカ　ジョンヨンと同房の受刑者
Corinne Masiero……ヘルボイ　デュコ刑務所 主任刑務官
Jean-Michel Martial……判事
Catherine Baugue……国選弁護士
Hugues Martel……ペコル　弁護士
Antoine Blanquefort……検事