2018年10月31日

私に残った愛を

建設会社で現場の所長を務めているボンヨン(ソン・ジル)は毎日のように帰りが遅く、妻のファヨン(チョン・ミソン)は不満を抱いている。高校生の双子の兄妹、ウジェとダルリムは朝からにらみあい、父親を相手にすることもない。末っ子のビョルリム(イ・イェウォン)だけがボンヨンになついている。そんなある日、身体の不調を感じていたボンヨンが病院へ行くと、末期の大腸癌であることを告げられる。さらに建築現場で起きた事故の責任をなすりつけられ、解雇されてしまったボンヨンは……。

 いわゆるキリスト教映画ですね。製作のCBSというのはChristian Broadcasting System=基督教放送のことです。まぁ、とてもわかりやすい映画。泣けます。
 序盤、ボンヨン(ソン・ジル)がカラオケで、ダルリム(クォン・ソヒョン)が路上ライヴで歌うのは、ピョン・ジンソプ(변진섭)の「鳥のように(새들처럼)」でした。1988年の1集に収録されたヒット曲で、FTISLANDが2011年にカヴァーしたりも。別々の場所で親子が同じ曲を歌っているというのがおもしろい演出なのですが、ソン・ジルにキーを合わせているためか、元4Minuteのクォン・ソヒョンの歌がいまひとつ。その後も何曲か歌いますけど、父親が歌手になるのを反対するのもわかるというか、圧倒的な歌唱力というわけではないのが残念でした。ダルリムの双子の兄、ウジュ役はPENTAGONのメンバーのホンソクですが、こちらは歌う場面はありません。ちなみに、エンディングで流れるのもピョン・ジンソプの曲、「風は(바람은)」。2015年の新しい曲です。
 ボンヨンの妹のスンジョン(チョン・スヨン)がやっているcafe bronsisは麻浦区延南洞に実在するカフェのようです。Instagramを見つけた人がいました。

2018年10月30日

トック

幼いドック(チョン・ジフン)とドッキ(パク・ジユン)は祖父のハクス(イ・スンジェ)と3人で暮らしている。ある日、ハクスは余命がわずかであることを告げられる。息子である2人の父親は1年前に亡くなり、母親はある事情からハクスが家を追い出したのだった。ハクスは遺されるドックとドッキのことが心配で……。

 餅の映画かと思ったら違うんですね。餅(トック)ではなく、登場人物の名前でした。劇中でほんの数回しかフルネームは出てこず、語頭では濁らないためにそう表記したのでしょうが(NHKでの「冬のソナタ」のカン・ジュンサンとチュンサンのように)、誤解を避けるためにも「ドック」のほうがよかったんじゃないでしょうか。
 ベタな物語といえばベタなのですが、もう、これは涙なしには観られません。特に後半は嗚咽する声が漏れないか心配になるほどでした。
 ノーギャラで出演を買って出たらしいイ・スンジェはいわずもがな、ドック役のチョン・ジフン(「トッケビ」に出てた子ですね)の熱演が涙を誘います。妹のドッキ役のパク・ジユンちゃんはたどたどしいな……と思ったら、愛着障害で5歳だけど言葉は3歳児並みという設定なのでした。絶妙です。喧嘩はしても仲直りする少年同士、そして、おそらくハクス(イ・スンジェ)とは長年の幼なじみなのであろうチョン女史(ソン・ビョンスク)と村長(チャン・グァン)という大人の関係性にも微笑ましいものがありました。いわゆる悪人が出てこないところが美点でしょう。冷たい現実を突きつけるのも映画かもしれませんが、希望を感じさせてくれるのも映画ですから。駆けだす兄妹のラストショット、最高です。
 それと、母親がインドネシア人という設定で、多文化映画という側面もあるんですね。女性監督パン・スインのデビュー作ですが、草稿から8年かかっているそうです。大学時代に東南アジア出身の友人がいて、多文化家庭について映画にしたかったとのこと。

2018年10月29日

雨の国

 2年前の雨の日に夫を交通事故で亡くしたナラ(チョン・ウンチェ)が教職に復帰した。一方、隣のクラスの生徒のウギ(ユ・ミンギュ)は、同じ日に父を亡くして以来、雨を恐れるようになっていた。葬儀場で出会っていた2人は、同じ傷を抱える者同士、おたがいを慰めるように距離を縮めていく。ところが、学校で2人の噂が広まってしまい……。

 主役に抜擢された『ヘウォンの恋愛日記』(13)に続いて『自由が丘で』(14)でもホン・サンス監督作に出演しているチョン・ウンチェ。その『自由が丘で』で共演した加瀬亮と熱愛なんて記事が「フライデー」に載ったのはもう5年も前ですね。ちょうどその頃の作品です。相手役は「医心伝心」でジェハ/ジノ役のユ・ミンギュ。
 教師と生徒の禁断の愛ということにはなりますが、しみじみとした味わいです。