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2019年3月2日

金子文子と朴烈

1923年、東京。文子(チェ・ヒソ)は「犬ころ」という詩に心を奪われた。その詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈(イ・ジェフン)。共鳴した2人は同居誓約を結び、不逞社のメンバーとともに社会を変えるべく行動する。ところが9月1日、関東大震災が発生。自警団による朝鮮人虐殺が起こるが、その事実を隠蔽するため、水野内務大臣(キム・イヌ)は立松判事(キム・ジュナン)に朴を大逆罪で起訴するよう命じた。文子と朴は歴史的な裁判で法廷に立つことに……。

 平日の昼にもかかわらず、ほぼ満席。金子文子に興味をもって図書館で関連書籍を借りようとしましたが、どれもみな貸し出し中でした。予想以上の反響を呼んでいるようです。
 なんといっても文子役を演じたチェ・ヒソが最高。幼い頃に日本に住んでいたことはあるそうですが、ほとんど完璧な日本語で、日本語訛りの朝鮮語まで使いこなします。たくましく、それでいて悪戯っぽい笑顔を見せたり、たまらなくキュート。イ・ジェフンももちろんいいんですが、チェ・ヒソが魅力的に演じた文子が圧倒的に印象に残ります。原題は『朴烈』ですが、この邦題は正解ですね。
 それともうひとり、立松判事役のキム・ジュナンが素晴らしい。在日コリアンのイ・サンイル弁護士役を演じた『HERSTORY』で驚いたのですが、本作でも流暢な日本語を使ってます。でも日本で暮らした経験は3ヶ月ほどしかないとか。すごいのは言葉だけでなく、文子と朴に向きあいながら時に揺れていく姿が絶妙です。2018年にはドラマ「時間」でメインキャストを担いましたが、今後もますます期待したい俳優ですね。
 シリアスな物語ではありますが、2人の主人公にはユーモアがあり、ときどきクスッと笑える場面も。文子の「消え失せろ!」「静かにしろ!」といった啖呵は痛快です。司法大臣や警視総監があっさり辞職するとか、日本政府の面々は滑稽だったり。
 そして、単純に日本が悪というのではなく、日本人のなかにも心ある者がいたことははっきり描かれてますし、朴自身にも「日本政府は憎いが、日本の民衆にはむしろ親近感を覚える」という台詞がありました。今こそ観るべき映画。全国順次公開中ですが、さらに上映館を拡大してロングランを続けてほしいものです。

2019年2月26日

ラブリー・ライバル

ソンリム小学校で5年2組を受け持つミオク(ヨム・ジョンア)は、新学期早々から遅刻し、それでいて生徒の遅刻は許さない教師。その一方、大人びた美少女のミナム(イ・セヨン)は堂々と遅刻してくる。そんな田舎の小学校に、独身の美術教師サンチュン(イ・ジフン)が赴任。ミオクは猛烈にアプローチするが、ミナムもまたサンチュンにつきまとい……。

 14年も前の作品を再見しましたが、なかなか楽しめました。先生と生徒がライバルという構図のラブコメディとして進みますが、いつの間にかクォン先生のことはどうでもよくなっていきますね。ミナムの本当の気持ちが明かされるところは涙を誘われます。
 ラストシーンに、監督の前作『ぼくらの落第先生』からチャ・スンウォンが役名そのままに特別出演。若い。

2019年2月20日

女教師~シークレット・レッスン

ヒョジュ(キム・ハヌル)は男子校で働く非正規採用の教師。職場でもストレスを感じ、家に帰れば恋人のサンウ(イ・ヒジュン)が小説を書くといいながら自堕落な生活を送り、苛立ちは募るばかりだった。そんなある日、理事長の娘というコネで新人教師のヘヨン(ユ・イニョン)が採用される。ある夜、バレエ特待生のジェハ(イ・ウォングン)が体育館の倉庫でヘヨンとセックスしているところを見てしまったヒョジュは、ヘヨンに警告する一方、ジェハに興味をもちはじめ……。

 邦題には「シークレット・レッスン」なんていう余計なサブタイトルがついていて、まるで往年の“コーリアン・エロス”みたいです。が、そっち方面を期待した人は肩透かしを喰らうでしょうね。濡れ場はあるものの、ユ・イニョンは胸さえ見せず、キム・ハヌルはまったく露出がありません。
男子高校生を奪いあう女性教師の話かと思いきや、そう単純な物語ではないのでした。エグい……。イ・ウォングン目当てで見るとドン引きするかもしれません。予想外の展開で、衝撃的。しかし、ところどころで「こいつ、ヤバいな」と思わせる表情を見せてたキム・ハヌルはうまいですね。キム・ハヌル主演で教師と生徒の恋といえばドラマ「ロマンス」ですが、こちらは真逆。さわやかさのかけらもありません。ドロドロの愛憎劇なのでした。

2018年12月20日

プランマン~恋のアラームが止まらない!

潔癖症のジョンソク(チョン・ジェヨン)は生活スケジュールを分刻みで徹底的に管理し、規則正しく暮らしている。そんな彼には想いを寄せる女性がいた。自分と同じような性格を見せるコンビニ店員のジウォン(チャ・イェリョン)だ。ところが、思いきって声をかけた相手は、代わりにレジに立っていた自由奔放なソジョン(ハン・ジミン)。彼女のおかげでジウォンに告白する機会を得るが、彼女は潔癖な性格を直そうとしているのだった。ジョンソクはソジョンからオーディション番組に出ようと誘われて……。

 潔癖症の主人公に笑わされっぱなしでしたが、まさかの展開、想像もしていなかった事実に思わず涙……。こういうの、韓国映画らしいですね。安心のチョン・ジェヨンに、ハン・ジミンもサバサバしたヒロインを快活に演じていて好感度大。グループ療法の面々(医師含む)にもウケます。
 日本では劇場未公開のDVDスルーだったでしょうか。気軽に楽しめる良作だと思います。邦題には余計なサブタイトルがついてますが。

2018年12月19日

彼とわたしの漂流日記

リストラに遭い、借金を抱え、恋人にも捨てられた男(チョン・ジェヨン)は、絶望して漢江に身を投げた。が、パム島に漂着。死のうにも死ねない彼は、泳げないため脱出することもできず、島でのサバイバル生活をはじめる。一方、対岸のマンションに暮らす女(チョン・リョウォン)は、引きこもり、3年のあいだ一歩も家を出たことがない。ある晩、彼女はカメラのレンズ越しに彼の姿を見つけ、好奇心を抱きはじめ……。

 数年ぶりに再見。やっぱりいい作品ですね。
 ソウルのど真ん中で漂流生活とはいささか荒唐無稽ですが、舞台となるパム島は生態系保全地域に指定されていて立入禁止なので、もしかしたらこんなことも可能かもと思わせます。絶妙。チャパゲティ(インスタントのチャヂャン麺)の粉末ソースを見つけ、自給自足で念願のチャヂャン麺を完成させるくだりは涙なしには見られません(笑)。
 原題は『キム氏漂流記』。一見すると、むりやり恋愛に寄せた邦題のようですが、実はこれまた絶妙なタイトルかもしれません。主人公がふたりともキム氏で、ヒロインのほうも現実と妄想のあいだを漂流していたといえるわけですから。
 民防(一斉に行われる軍事避難訓練。車両はストップ、歩行者も足を止めなければならない)が重要な役割を果たすところも韓国ならでは。奇想天外でありながらリアルでもある、韓国映画らしい韓国映画で、好きな作品のひとつです。

2018年11月2日

母のノート

小さな惣菜店を営む料理の得意なエラン(イ・ジュシル)。レシピを書き留めたノートはエランにとって大事な宝物だ。一方、息子のギュヒョン(イ・ジョンヒョク)は教授職を得られず非常勤講師をしている。妻のスジンが家庭教師の仕事をしているため、エランが2人の孫を預かることも多い。しかし、エランは物忘れが激しく、時に不可解な行動をとるようになってきた。むりやり病院へ連れていくと、認知症が進行していることが判明。さらにギュヒョンは母の「忘れたくても忘れられないこと」を知ってしまう。惣菜店を売り払って教授職を得るための“寄附金”を得るつもりだったが、ギュヒョンは母のノートを見つけ……。

 今年のコリアン・シネマ・ウィークは、6本のうち、2本が日本でも劇場公開済み(『タクシー運転手 約束は海を越えて』『犯罪都市』)で、1本(『復讐のトリック』)はまもなく公開。ここでしか観られないものは半分の3本でした。最後に観たのがこの作品。テーマに沿ってのセレクションなのか、どれも家族の再生といった物語でしたが、こちらは母と息子の物語です。ちなみに「日本初上映」と謳ってましたが、京都国際映画祭で2週間ほど早く上映されているので「初」ではないですね。
 泣けます。
 が、ちょっと引っかかるところも……。【ネタバレ注意】エラン(イ・ジュシル)には幼くして亡くした息子がいたわけですが、だからといってギュヒョン(イ・ジョンヒョク)に冷たいのはどうなんでしょう? 「あなたを責めてるわけじゃない。自分を責めてるの」とは言うものの、明らかにそんな態度じゃない。しかも何十年も経ってそれを知らされるギュヒョンの気持ちは……。それと、最後の最後に「おまえが私の宝物」と言いますが、それじゃ妹の立場は!?と思ってしまいました。また、エンドロールで一般人の「お母さん大好き」といったメッセージ動画がたくさん流れます。『トック』では同じように祖父と孫の写真が映し出されましたが、そういうの、あまり好きじゃないんです。
 感動の押しつけように感じてしまったのは自分が素直じゃないからでしょうか……。

2018年10月31日

私に残った愛を

建設会社で現場の所長を務めているボンヨン(ソン・ジル)は毎日のように帰りが遅く、妻のファヨン(チョン・ミソン)は不満を抱いている。高校生の双子の兄妹、ウジェとダルリムは朝からにらみあい、父親を相手にすることもない。末っ子のビョルリム(イ・イェウォン)だけがボンヨンになついている。そんなある日、身体の不調を感じていたボンヨンが病院へ行くと、末期の大腸癌であることを告げられる。さらに建築現場で起きた事故の責任をなすりつけられ、解雇されてしまったボンヨンは……。

 いわゆるキリスト教映画ですね。製作のCBSというのはChristian Broadcasting System=基督教放送のことです。まぁ、とてもわかりやすい映画。泣けます。
 序盤、ボンヨン(ソン・ジル)がカラオケで、ダルリム(クォン・ソヒョン)が路上ライヴで歌うのは、ピョン・ジンソプ(변진섭)の「鳥のように(새들처럼)」でした。1988年の1集に収録されたヒット曲で、FTISLANDが2011年にカヴァーしたりも。別々の場所で親子が同じ曲を歌っているというのがおもしろい演出なのですが、ソン・ジルにキーを合わせているためか、元4Minuteのクォン・ソヒョンの歌がいまひとつ。その後も何曲か歌いますけど、父親が歌手になるのを反対するのもわかるというか、圧倒的な歌唱力というわけではないのが残念でした。ダルリムの双子の兄、ウジュ役はPENTAGONのメンバーのホンソクですが、こちらは歌う場面はありません。ちなみに、エンディングで流れるのもピョン・ジンソプの曲、「風は(바람은)」。2015年の新しい曲です。
 ボンヨンの妹のスンジョン(チョン・スヨン)がやっているcafe bronsisは麻浦区延南洞に実在するカフェのようです。Instagramを見つけた人がいました。

2018年10月30日

トック

幼いドック(チョン・ジフン)とドッキ(パク・ジユン)は祖父のハクス(イ・スンジェ)と3人で暮らしている。ある日、ハクスは余命がわずかであることを告げられる。息子である2人の父親は1年前に亡くなり、母親はある事情からハクスが家を追い出したのだった。ハクスは遺されるドックとドッキのことが心配で……。

 餅の映画かと思ったら違うんですね。餅(トック)ではなく、登場人物の名前でした。劇中でほんの数回しかフルネームは出てこず、語頭では濁らないためにそう表記したのでしょうが(NHKでの「冬のソナタ」のカン・ジュンサンとチュンサンのように)、誤解を避けるためにも「ドック」のほうがよかったんじゃないでしょうか。
 ベタな物語といえばベタなのですが、もう、これは涙なしには観られません。特に後半は嗚咽する声が漏れないか心配になるほどでした。
 ノーギャラで出演を買って出たらしいイ・スンジェはいわずもがな、ドック役のチョン・ジフン(「トッケビ」に出てた子ですね)の熱演が涙を誘います。妹のドッキ役のパク・ジユンちゃんはたどたどしいな……と思ったら、愛着障害で5歳だけど言葉は3歳児並みという設定なのでした。絶妙です。喧嘩はしても仲直りする少年同士、そして、おそらくハクス(イ・スンジェ)とは長年の幼なじみなのであろうチョン女史(ソン・ビョンスク)と村長(チャン・グァン)という大人の関係性にも微笑ましいものがありました。いわゆる悪人が出てこないところが美点でしょう。冷たい現実を突きつけるのも映画かもしれませんが、希望を感じさせてくれるのも映画ですから。駆けだす兄妹のラストショット、最高です。
 それと、母親がインドネシア人という設定で、多文化映画という側面もあるんですね。女性監督パン・スインのデビュー作ですが、草稿から8年かかっているそうです。大学時代に東南アジア出身の友人がいて、多文化家庭について映画にしたかったとのこと。

2018年8月31日

王になった男

光海8年(1616年)。暗殺に怯える王(イ・ビョンホン)は、自分の影武者となる人物を探すよう都承旨のホ・ギュン(リュ・スンリョン)に命じる。白羽の矢が立てられたのは堕落した王の風刺劇を演じていた道化師のハソン(イ・ビョンホン)。王と瓜二つのハソンは、三日に一度、代役を務めることになった。ところがその矢先、王が倒れる。敵対勢力に知られることを恐れたホ・ギュンは、王が回復するまでのあいだ、ハソンを王に仕立てることに。ハソンは王としての振る舞いを学びながら宮廷生活に慣れていくが、やがて権力争いばかりの政治に疑問を抱く。そして自らの言葉で発言をはじめ……。

 王と庶民が入れ替わるという同様プロットの映画が同時期に公開されました(韓国で約1ヶ月違い)。チュ・ジフン主演の『私は王である!』です。あちらはコメディ色の強いものでしたが、こちらはよりシリアス。しかし、絶妙の間で、じわりと笑える場面が随所に散りばめられています。それも演技巧者がそろっているからこそでしょう。まわりにバレないよう慌てふためくホ・ギュン(リュ・スンリョン)とか、「笑ってくれ」と言われた中殿(ハン・ヒョジュ)のぎこちない笑顔とか、実にうまいものです。もちろんイ・ビョンホンも。死に怯える孤独な王の光海君、人間味あふれる道化師のハソン、相反する2つのキャラクターを見事に演じ分けています。しかし、そんなハソンも次第に本物の王のような風格を備えていくわけで、
 シム・ウンギョン扮する女官のサウォルも重要な役どころで、ひとつのクライマックスを演出していますが、キム・グァンイン扮する護衛武士のト部将が最後においしいところをもっていった感も。いちばんの泣きどころなのでした。民の苦しみを知るハソンのまっすぐな想いが人を変えたという、グッとくるポイントです。

2018年8月19日

王様の事件手帖

1468年。あらゆる事件を自分で解決しないと気が済まない風変わりな王(イ・ソンギュン)は、補佐役として、目にしたものはすべて記憶するという新人史官のイソ(アン・ジェホン)を任命する。そんななか、漢陽で人間の頭が燃えだす奇怪な事件が発生。王はイソを従え、真相を暴くため秘密裏に捜査を開始する……。

 破天荒な王と頼りない史官のバディムーヴィーで、難しいことは考えずに楽しめる時代劇コメディ。
 王は実在した睿宗ですが、特に史実に沿ってという感じではありません。地名もちょっと変えていたり、時代考証も甘め、あくまでもフィクションということなのでしょう。まぁ娯楽作品なのでそこはいいとしても、キャラクター設定やストーリー展開がやや粗い気はします。驚異的な記憶力をもつというイソ(アン・ジェホン)ですが、実際に発揮される場面はあまりありません。ソナ(キョン・スジン)も思ったほどに活躍しません。そのわりにラストシーンで王と並んで笑顔を浮かべてます。才能を見出されて王を補佐する役職に就いたとかなのでしょうが、彼女の出番はほかにもカットされてそうな気配。そうした個々のキャラクターを次作では掘り下げてほしいところですね。
 と、勝手に続編を期待しますが、実際のところ「朝鮮名探偵」のようにシリーズ化はアリなんじゃないでしょうか。イ・ソンギュン扮する王は、堅苦しい言葉を嫌い、好奇心が旺盛で頭が冴え、もうひとつ秀でたもの――ネタバレになるので書きません――があって、魅力的なキャラクター。時代劇は初でしたが、いい声ですし、王役が似合ってます。イソにももっと活躍してほしいですし、いまや「韓流ぴあ」の表紙まで飾っているチョン・ヘインは出番が少なすぎて、なんだかもったいないというか。ソナもいろいろと発明品でサポートできることでしょう。それぞれの見せ場はいくらでもつくれそうです。韓国では大ヒットとはいかなかったようですが、誰もが楽しめる娯楽作として続けてほしいものです。

2018年7月18日

朝鮮名探偵 失われた島の秘密

正祖19年(1795年)、島流しの身となったキム・ミン(キム・ミョンミン)のもとにソピル(オ・ダルス)がやって来た。贋銀が流通して世の中が混乱しているという。その一方、タヘ(イ・チェウン)が行方不明の幼い妹を捜してほしいと海を渡ってくる。島を抜け出したミンは、謎の美女、ひさこ(イ・ヨニ)と出会い、倭館を調べはじめ、チョ楽士(チョ・グァヌ)に彼女を監視させるが……。

 前作『朝鮮名探偵 トリカブトの秘密』同様、2つの事件がからみあい、大団円を迎える痛快な活劇。キム・ミョンミン&オ・ダルスの主演コンビは続投で、今回のヒロインはイ・ヨニ。ひさこという謎めいた日本人の妓生ですが、その正体は……。これも前作同様なので想像はつくわけですが、意外なところに敵が潜んでいて(配役がまた意外で)、ハラハラする展開でした。Zippoみたいなライター、手榴弾、蛍光塗料など、今作も「ウソだろ~」な発明品が続々と登場。バカバカしい笑いも健在です。
 韓流シネマ・フェスティバル2015で上映されたときのタイトルは『朝鮮名探偵2 失われた島の秘密』だったようですが、そもそも1が日本では劇場公開されてないわけで、パッケージ化されたときは2がなくなったようです。そもそも原題にもシリーズを通して数字はついていません。シリーズ第3弾の『朝鮮名探偵 鬼〈トッケビ〉の秘密』は日本で2018年7月28日に劇場公開されます。

2018年7月17日

朝鮮名探偵 トリカブトの秘密

正祖16年(1782年)、腐敗官僚の横領を察した王は、朝鮮一の名探偵(キム・ミョンミン)に事件の背後を洗うよう密命を下した。彼は事件の手がかりとなるヒメトリカブトを探すため、妙な縁で知りあった犬商人のソピル(オ・ダルス)とともに積城へ赴く。そこで大商団を率いるハン客主(ハン・ジミン)と出会う。彼女が黒幕ではないかと疑いの目を向けるが……。

 キム・ミョンミン扮する探偵キム・ミン(今作では名前が明らかになりませんが、続編で出てきます)は、推理は冴えているのにどこか抜けていて、はっきりいって卑怯(笑)。相棒がオ・ダルスですから当然のごとくコメディで、あちらこちらにギャグを散りばめています。ちょっと度が過ぎる感もありますが、そのバカバカしさを楽しむべきなのでしょう。
 ハン・ジミンが妖艶な大商人という役どころで、ちょっと意外。清純なイメージが強いので、胸を強調した衣裳というのも新鮮です。が、ただそれだけのキャラクターじゃないのでした。ウ・ヒョンもまたクセモノでしたね。最近こんな役柄が多いような。
 ストーリーがやや込み入っているものの、なかなか練られています。キムの仕事は、表向きは烈女監察(貞節を守った未亡人を称える「烈女」制度で、対象者が妥当かどうかを審査する)のためで、その対象女性がイム判書(イ・ジェヨン)の甥の嫁であるキム・アヨン。病死した夫の家を守るため、ヒメトリカブトの栽培を成功させ、その後に自害したことなっているのですが、貢納品の横領を調べる過程で、この2つに接点を見つけます。なるほど、なオチ。原作はドラマ「ファン・ジニ」や映画『朝鮮魔術師』などのキム・タクファンによる小説『烈女門の秘密』だそうです。

2018年7月16日

黄泉がえる復讐

検事のジノン(キム・レウォン)の前に、死んだはずの母ミョンスク(キム・ヘスク)が現れた。そしてなぜかジノンに襲いかかる。取り押さえられたミョンスクは救急車で運ばれ、国家情報院の監視下におかれることになった。要員のヨンテ(ソン・ドンイル)はミョンスクが韓国初のRVだと語る。RV(=Resurrected Victims)とは、何者かに殺された人間が報復のために生き返り、復讐を果たすと再びこの世から消えるという「犠牲復活者」。世界各地で報告されているという。しかし、ミョンスクは7年前に強盗に殺害され、その犯人もすでに死亡している。ジノンが襲われたことから、刑事のスヒョン(チョン・ヘジン)らが再捜査を開始。実はジノンも当時の捜査記録に不審な点を見つけ、真犯人が別にいると考えているのだった。ジノンは7年前の事件の真相を追うが……。

 いちおう「なるほど」と思わせるオチが用意されてますが、ところどころ御都合主義的な感じは否めません。RVには通常の人間の10倍以上の鉄分があって磁場が生じるとか、もっともらしいような、らしくないような。母の愛、それを疎ましく思っていた息子の後悔、そして罪の意識といったテーマを、超常現象を用いて描きます。92分と短い尺で、難しく考えずに楽しめます。
 それにしてもイカレた中国人役がキム・ミンジュンだとは初めのうち気づきませんでした。映画ではときどきこうした怪演を見せるキム・ヘスク同様、ブッ飛んだ熱演です。
 パク・ハイクのミステリ小説『終了しました』が原作だそうです。荒唐無稽すぎる設定でミステリ小説と呼んでいいのかという気はしますが。

2018年6月29日

奇跡の夏

わんぱく盛りの小学生ハニ(パク・チビン)にとって、物静かな兄のハンビョル(ソ・デハン)は格好のいたずら相手だった。ところがある日、頭が痛いと言っていたハンビョルが入院。脳腫瘍に侵されていた。母(ペ・ジョンオク)は泣いてばかりで、父(パク・ウォンサン)は冗談も言わなくなった。病院では同じ病気のウク(チェ・ウヒョク)が兄と親しくなっていく。ハニは兄に元気になってもらおうと大切な遊戯王のカードをあげるが、ハンビョルはそれをウクにあげてしまった。ハニはウクのことが気に入らず……。

 十数年ぶりに観ましたが、やっぱり涙なしには観られません……。すごく印象に残っていたのが、ウクの母(オ・ジヘ)がトイレの洗面台に溜めた水に顔をつけて泣き、ハニの母(ペ・ジョンオク)にも勧める場面なのですが、今回もそこがグッときました。親の気持ちになると
 もちろん、子役たちの熱演もそれぞれ素晴らしいです。パク・チビンはニューモントリオール映画祭の主演男優賞を最年少受賞。母を笑わせようとRain(ピ)になりきって踊る場面ではキレのあるダンスを見せたりも。そして、兄弟が物語の中心ですが、もうひとりの主人公ともいえるのがウク(チェ・ウヒョク)ですね。3年も闘病してるのにいつも笑顔。健気すぎます。
 ちなみに【以下ネタバレ】、原題は『안녕, 형아』で、劇中にそのままの台詞が出てきますが、ハニではなくウクの台詞なのでした。韓国語の안녕(アンニョン)には「こんにちは」と「さようなら」の意味がありますが、終盤で「안녕, 형아. 안녕」と繰り返し、日本語にするとすれば「やぁ、兄ちゃん。さよなら」と言ってるんですね。ターザンおじさんの“奇跡の水”を必死の想いで汲んできたハニがきっかけとはなってますが、ウクがハンビョルに命を授けたかのような、物語のクライマックスです。
 実話が元になっていて、原作はキム・ヘジョンが息子の闘病を綴ったエッセイ『悲しみが希望に』。本作の脚本家のキム・ウンジョンは彼女の妹なんだそうです。甥の物語をシナリオにしたわけですね。子どもらしいファンタジーを織り交ぜ、悲しいだけではない、明るさを感じさせる良作でした。

2018年6月28日

赤ちゃんと僕

高校生のジュンス(チャン・グンソク)は毎日のようにトラブルを起こしている問題児。あまりに手を焼いた両親は10万ウォンだけを残して姿を消した。そんなジュンスのもとに、ウラムという赤ん坊(ムン・メイスン)が現れる。ジュンスの子だと手紙が添えられていて、仕方なく面倒をみることに。クラスメイトになったビョル(キム・ビョル)に協力してもらいながらウラムの世話をするが……。

 日本の同名漫画とは関係ないんですね。
 赤ちゃんは本当にジュンスの子なのか?というのが最大の気になるところ。彼の前に現れるのが子だくさんな家のビョルということで、それが伏線なのかと思うのですが、真相は意外な方向から明らかになります。これはこれでアリですね。かわいい赤ちゃんの声を当ててるのが芸人のパク・ミョンスというのが、やややりすぎ感はあるものの、ウケます。
 ソン・ハユン(この当時は改名前のキム・ビョル。役名も同じ)がかわいい。もっと掘り下げてほしいキャラクターでした。

2018年6月27日

角砂糖

済洲島の牧場で生まれ育ったシウン(キム・ユジョン→イム・スジョン)は馬が大好き。生まれてすぐに母を失った子馬のチョンドゥンに愛情を注ぐが、ある日、チョンドゥンは人手に渡ってしまった。それから2年。シウンは念願だった騎手になるが、レースでは八百長を強いられ、馬を大事にしない調教師に失望し、辞めてしまう。ところが、思いがけずチョンドゥンと再会。ユン調教師(ユ・オソン)と理解ある馬主のノ会長(ペク・イルソプ)のおかげで復帰したシウンは、チョンドゥンとともに勝利を目指すが……。

 動物には泣かされてしまうものですね。
 馬の名前の「チョンドゥン」は「雷」という意味。천둥で、漢字だと「天動」なんですね。韓国語の雷には3種類あって、천둥は音のするもの。번개は光るもの、つまりは稲妻・稲光などを指すそうです。そして「雷が落ちる」といったときの「落雷」を指す場合は벼락。ややこしい……。
 劇中に流れるのはチョ・ドンジン(조동진/1947-2017)の「제비꽃(すみれ)」で、1985年の3集に収録されているヒット曲。エンディングではイム・スジョンが歌ってます。
 幼い頃のシウン役を演じるのは当時まだ6歳のキム・ユジョンでした。かわいい。

2018年5月17日

タクシー運転手

1980年5月、タクシー運転手のマンソプ(ソン・ガンホ)は、10万ウォンという大金につられてドイツ人記者のピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せて光州に向かう。戒厳令下の光州へ続く道は通行禁止となっていたが、機転を利かせて検問をくぐり抜け、2人は光州へ。そこでデモに参加している大学生のジェシク(リュ・ジュニョル)と出会い、ピーターは撮影をはじめる。マンソプはソウルで留守番をしている11歳の娘が気になり、不穏な空気に包まれた光州を早く立ち去ろうとするが……。

 民主化を求める光州市民を戒厳軍が武力で鎮圧して多数の死傷者を出した「光州事件」の実話をもとにした作品。韓国では1,200万人を動員する大ヒットを記録しました。
 序盤で突然、東京タワーが映って驚きましたが、ピーターは日本駐在の記者だったんですね。そこで隣国との連絡が途絶えたという話を耳にして――おそらくは功名心から――身分を偽って韓国に入国します。あまりの惨状に茫然としていたところマンソプに叱咤されてハッとする場面があるので、使命感は最初からあったわけではなく、次第に生まれていったんじゃないでしょうか。
 丸腰の市民に銃弾を浴びせるなんていくら軍人でも躊躇しないのかと思いますが、そうした描写はいっさいありません。まったくもって情け容赦ない。映画をわかりやすくするための演出かと思いきや――まだまだ上映中なのでネタバレを避けるため詳しくは書きませんが――終盤のある人物の行動によって、すべての軍人がそうだったわけではないのだろうということがわかります。
 また、うまいというかズルいというか終盤にはカーチェイスまであって、実はここが泣ける場面になってます。このへんの史実と娯楽のバランスをどう受け止めるかによって好き嫌いは分かれるでしょう。「あざとい」と見る向きもあるかもしれません。が、チョ・ヨンピルのヒット曲「おかっぱ頭」の軽快な音楽にはじまって、ソン・ガンホのコミカルなキャラクターに笑いつつ、いつの間にか過酷な現実を突きつけられている、見事な作品だと思いました。
 ところで、マンソプが別れ際の車中で目に留めたマッチ箱にある「キム・サボク」を偽名として書きますが、それがモデルとなった実在の人物の名前ですね。事件の4年後に他界していたと息子さんが映画公開後に明かしたそうです。一方のユルゲン・ヒンツペーター(通称ピーター)は映画の完成も見ず2016年に他界。残念ながら2人が再会することは叶いませんでした。

2018年5月16日

風と共に去りぬ!?

朝鮮時代後期、右議政の庶子であるドンム(チャ・テヒョン)は気楽な日々を過ごしていたが、ある日突然、身に覚えのない反逆罪で捕らえられてしまった。採氷を取り締まる生真面目なトンス(オ・ジホ)も左議政の反感を買って牢にやって来る。その後、ドンムは放免されるが、代わりに父が流刑に処された。すべては氷の独占を企む左議政(ナム・ギョンウプ)の策略なのだった。ドンムはチョ一族への復讐を誓い、氷の強奪を計画。トンスをはじめ、あらゆる分野の玄人を集めて作戦を開始する。

 安心して楽しめるチャ・テヒョン作品ですが、この作品の場合はチャ・テヒョンのキャラというよりも、個性的な仲間たちのアンサンブルが楽しいところ。耳が遠い爆弾エキスパートのテヒョン(シン・ジョングン)、変装の達人で毎度必ず「誰だよっ!」と言われるジェジュン(ソン・ジョンホ)らがひっきりなしに笑わせてくれます。ソクチャン役のコ・チャンソクとチョングン役のチョン・ボグンは『ハロー!?ゴースト』でもチャ・テヒョンと共演してますね。そこにオ・ジホとは意外な気もしますが、その好対照なところがおもしろい結果を生みました。
 細かいところにツッコミを入れるのは野暮というもので、何も考えずに楽しみたい、痛快な娯楽作。イ・サンをはじめ、ペク・トンスやチョン・ヤギョンなど、それぞれが主人公のドラマも制作されている実在の人物が多数登場するのもおもしろいところです。ちなみに、最後の最後にソン・ジュンギが特別出演。チャ・テヒョンやコ・チャンソクのいるBlossom Entertainmentに移籍したからですね。

2018年5月15日

5人の海兵隊員

ドクス(シン・ヨンギュン)は、父のオ中佐(キム・スンホ)が大隊長をつとめる部隊に小隊長として赴任した。オ中佐は息子を歓迎するが、ドクスは幼い頃からいつも兄ばかり溺愛してきた父に複雑な気持ちを抱いている。やがて部隊の末っ子としてかわいがられていたヨンギュ(ナム・ヤンイル)が偵察中に命を落とし、ドクスら5人の海兵隊員は奇襲作戦の特攻隊に志願する。

 韓国文化院で行われる韓国映画の企画上映会、2018年4~5月は「1950~60年代に製作された名作韓国映画特集」。そこで初めてこの作品を観ました。
 キム・ギドク(『悪い男』などの監督とは同名異人)の監督デビュー作で、1962年の第1回大鐘賞で新人賞を受賞した作品。さすがに古い感じは否めませんが、朝鮮戦争に父と子のメロドラマをからめているのが興味深いところ。なんとそこには出生の秘密があるんです! 唐突な展開で、韓流ドラマのようでした。
 今のベテラン俳優の父親が何人も出演しているのも興味深いですね。チェ・ムリョンはチェ・ミンスの、パク・ノシクはパク・チュンギュの、トッコ・ソン はトッコ・ヨンジェの、キム・スンホはキム・ヒラの父。ちなみに、ユン・イルボンはオム・テウンの義父にあたります。
 ジュハン役を演じているフライボーイは、ずいぶん奇抜な名前ですが、声帯模写で人気を集めたコメディアンなのだそうです。その後、クリスチャンになって芸能界を引退し、アメリカで神学を勉強して牧師になったとか。

韓国映像資料院のYouTubeチャンネルで全編視聴可。英語および韓国語の字幕アリ。
https://www.youtube.com/watch?v=gUbG3wQ9GtQ

2018年5月5日

サニー 永遠の仲間たち

夫と娘とともに何不自由ない生活を送るナミ(ユ・ホジョン)は、ある日、母の入院先で高校時代に親友だったチュナ(チン・ヒギョン)と再会する。癌で余命2ヶ月を宣告されている彼女の最後の願いは、かつての仲よしグループ“サニー”のみんなに会うこと。ナミはメンバーを捜しながら青春時代を思い出す。25年前、全羅道の筏橋からソウルの女子高に転校してきたナミ(シム・ウンギョン)は、姐御肌のチュナ(カン・ソラ)らと親しくなるが、文化祭の日に起きたある事件をきっかけに離れ離れになってしまったのだった……。

 ひさしぶりに観ましたが、何度でも泣けます。というか、かえって先の展開がわかるので序盤から目頭が熱くなってしまいます。エンドロールを見ると6人のその後までわかって大団円なのですが、欲をいえば、サンミ(チョン・ウヒ)にも救いがあってほしかったような。シンナーでラリって事件を起こした彼女ですが、本当は仲間になりたかった、かわいそうな娘でもあるわけで。

 タイトルにもなっているボニーMの「Sunny」をはじめ、1980年代のヒット曲が物語を盛り上げます。乱闘シーンで流れるのはJOYの「Touch by Touch」、ジュノ(キム・シフ)がヘッドフォンでナミに聴かせるのはリチャード・サンダーソンが歌う映画『ラ・ブーム』(80)の主題歌「Reality」(邦題は「愛のファンタジー」)でした。昼休みの校内放送でかかるレコードは、シンディ・ローパーの「Girls Just Want To Have Fun」と台詞にありますが、実際はGlamaramaのカヴァーヴァージョンのようです。オープニングとエンディングに流れる「Time After Time」もオリジナルのシンディ・ローパーではなくタック&パティ。これは権利上の問題でしょうか。ジャンミの家でみんなが踊りまくるのは1984年のナミの「빙글빙글(ピングルピングル)」。転校してきた主人公のナミにチュナが「歌手と同じ?」と言いますが、そのハ・チュナも同姓同名の歌手がいます。おたがい歌手と同じ名前だね、という親近感もあったんでしょうね。ちなみに、この曲は「ミッドナイト・フォーカス」のタイトルで日本盤まで出てたりします(詳しくはこちら)。

 ところで、2018年に日本で『SUNNY 強い気持ち・強い愛』としてリメイクされるとのこと。監督が大根仁だから大丈夫でしょうか。