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2016年11月9日

ひと夏のファンタジア

第1章 First Love, Yoshiko(初恋、よしこ)
 映画監督のテフン(イム・ヒョングク)が次回作の構想を練るため五條市にやって来た。彼はミジョン(キム・セビョク)の通訳で観光課職員の友助(岩瀬亮)に案内してもらう。

第2章 Well of Sakura(桜井戸)
 女優の仕事に悩みを抱えるヘジョン(キム・セビョク)が五條を訪れた。観光案内所で声をかけてきた柿農家の友助(岩瀬亮)と次第に打ち解け、帰国前夜、花火大会に誘われるが……。

 劇場公開時も見逃してしまって、ようやく新大久保映画祭で観ることができました。
 なら国際映画祭「NARAtiveプロジェクト」の2014年度作品で、奈良県五條市を舞台とする日韓合作映画。現地の一般人へのインタビューを交えたドキュメンタリタッチの第1章と、韓国人と日本人の出会いを描いたフィクションの第2章からなります。ホン・サンスっぽくもありますが、あちらほど不条理ではなく、わかりやすい構成といえるでしょうか(深読みもできるのでしょうけども)。第1章は全編モノクロで、テフンが煙草を吸いに外へ出て振り向くと、夜空に打ち上げ花火が広がってカラーの第2章へとつながります。鮮やか。昔ながらの喫茶店、寂れた山奥の村、廃校になった小学校といった場所、韓国人を案内したことがあるという友助の話、ケンジ(康すおん)の韓国人留学生との恋といったエピソード……などなど、第1章で映画監督のテフンが見聞きしたことが、第2章のモチーフになってます。
 主演のキム・セビョクと岩瀬亮はそれぞれ2役を演じてる(岩瀬亮の役は同名ですが、設定が違う)わけですが、気づかない人もいたとか。たしかに、だいぶ印象は違いますね。余談ですが、この作品の、特に第2章の岩瀬亮ってピョン・ヨハン(とりわけドラマ「元カノクラブ」での彼)に似てると思いました。
 第2章も即興的に撮影したそうで、ドキドキ感がたまらないクライマックスは、それぞれに別のディレクションをしていたんだとか。なるほど。順撮りだそうですし、ある意味ではドキュメンタリ的といえるかもしれませんね。どこか切なく、夢のようでもありつつ、やっぱりリアル。「ひと夏のファンタジア」というタイトルがぴったりです。
 イ・ミンフィによる音楽もすごくいいですね。特にエンディングで流れる「ひと夏のファンタジア」。歌詞に韓国語と日本語が混在する、はかなげな雰囲気のアコースティックな楽曲です。菊地成孔は「この曲を聴くためだけでも、本作を観るべきだ」とまで書いてました。

ひと夏のファンタジア

原題 한여름의 판타지아(ひと夏のファンタジア)
2014年/日本・韓国/97分/2015年6月11日公開(韓国)
2016年6月15日公開(日本) http://hitonatsunofantasia.com/

監督・脚本 チャン・ゴンジェ

キム・セビョク……パク・ミジョン/ヘジョン
岩瀬亮……武田友助
イム・ヒョングク……キム・テフン
康すおん……ケンジ