2018年2月28日

悪い家族たち


 ある日、高校3年生のナナ(ホン・ソヨン)が退学しようとしていることが発覚。一方、父のジョングク(イ・ジュニョク)は組合に入ったことで異動を命じられ、母のミョンファ(シン・ウンギョン)は仕事に忙しく、兄のジホ(キム・ミングク)は大学を中退して仕事にも就いていない。それぞれに問題を抱える4人の家族。ジョングクとミョンファは家族を再生させようと決意するのだが……。

父親は組合活動にのめり込んでいて、母親は(知らずとはいえ)娘の担任教師を誘惑してしまって、兄は軍隊生活になじめず途中で除隊したようで今はニート……こんな家族、イヤですね(笑)。ふてくされ顔のナナも、恋人と家出しようとするものの、実は彼の目的はナナの貯金だったという。けっしてみんな特別に悪い人なわけではないのですが、どこか足りない家族。できちゃった結婚で、ミョンファが高2のときに結婚したという過去があるのでした。ジョングクの「親になることと大人になることは違う」という台詞はなかなか説得力があるんじゃないでしょうか。一度はバラバラになりつつも、なんとなく家族としてやっていけそうな結末。家族の成長をコミカルに描いた作品でした。それにしても「避妊しない父さんが悪かった」なんて謝るのは勘弁してほしいものです(笑)。

2018年2月27日

カン・ドクスン愛情変遷史


 1926年、夏。忠清道の山村に暮らすドクスン(キム・ソヘ)は親の決めた結婚相手のソクサム(オ・スンユン)を慕い続けていた。ところが、大学の休みで帰郷したソクサムには好きな女性がいて、「祖国の独立に身を捧げる」と別れを告げられる。あきらめきれないドクスンは、ソクサムの書いてくれた住所を握りしめて京城へ。そこで酒場を営むヒスン(キム・ヨジン)らと出会うが……。

 タイトルに「愛情変遷史」とあると、上京してきて婚約者に裏切られたことを知った主人公が新たな恋と出会う……といった展開を想像しますが、ぜんっぜん違うのでした。まさか独立運動の話だとは。しかし、悲しい展開はあるものの、字を覚えていく過程がうまくストーリーに沿っていたり、ドクスンの成長物語としてなかなかよくできた脚本でした。意外と出番の少なかったソクサム(「あの空に太陽が」でハンス役のオ・スンユン)が最後にいいところを見せたりも。「出会わせて、ジュオ」と同じ間違った小道具を使いまわしてるのは残念でしたけど。
 主演はI.O.I出身のキム・ソヘ。I.O.Iはオーディション番組「PRODUCE 101」から生まれた期間限定のアイドルグループで、もともと俳優志望だった彼女は2017年1月の解散後は女優として活動してます。地上波での主演はこれが初となりますが、溌剌としていて、好感度大。また、母女酒幕の“三人娘”もそれぞれ好演していて、なかでも最年少のグッキ役を演じたパク・ソヨンが印象的でした。同姓同名がたくさんいますが、「凍える華」や「運勢ロマンス」でヒロインの少女期を演じている2002年生まれの子役。いずれも今後が期待される女優といえるでしょう。
 ところで、ドクスンの両親役を演じたホン・ソンドク&ペク・ヒョンジュは「私の心は花の雨」でも夫婦で、主人公コンニム(ナ・ヘリョン)の養父母という役どころでした。たしかに、お似合いのカップルですね。

2018年2月26日

チョンマダムの最後の1週間


 7年前、チョンマダム(ラ・ミラン)はヤクザのテンバリ(パク・チョンハク)から逃げる途中で思いがけず大金を手に入れた。それからというもの、彼女は人目を避けてひっそりと暮らし、時効成立の日を待ちわびている。ところが、いよいよ残り1週間という日、ウンミという少女(シン・リナ)と出会う。人と交わることを徹底的に避けてきたチョンマダムだが、ウンミが親に虐待されていることを知って放っておけず……。

 KBS脚本公募の当選作だそうです。ラ・ミラン主演ということでも安心感がありますね。実際のところ、ラ・ミランは本作でKBS演技大賞の連作・単発ドラマ賞を受賞しました。
 カナダへの移住を夢見ながら隠遁生活を送ってきたチョンマダムは、なりゆきでウンミを匿うものの、誘拐犯として報道されたうえにテンバリからも追われ、一度はウンミを置き去りにしようとします。それでも放っておけないのは、かつて亡くした妹の姿が重なるからなのでした。肌身離さない旧札のエピソードなどが涙を誘います。若い頃のチョンマダムを演じたパク・セワンも出番は少ないものの好演でした。
 ところで、劇中に『冬の王国』と出てきますが、邦題が『アナと雪の女王』となったディズニー映画『Frozen』の韓国でのタイトル。そこは日本語字幕を『アナと雪の女王』にしないと伝わらないでしょう。「Let It Go」が流れて「あぁ」と思うかもしれませんが。
 また、Stingの「Shape of My Heart」も流れますが、言わずと知れた映画『レオン』のラストシーンで流れる曲。さすらうチョンマダム&ウンミがレオン&マチルダのパロディになってるんですね。ウケました。エピローグで流れるのはユ・ジェハの「지난 날(過ぎた日)」です。
 晴れ晴れとした結末で、心のあたたまる良作。

2018年2月25日

一人で踊るワルツ


 大学で出会ったミンソン(ムン・ガヨン)とゴニ(ヨ・フェヒョン)は交際3000日を迎えたが、おたがい就職活動に明け暮れ、すれ違い気味の日々を送っている。切りつめた生活のなか会っても言い争うことが増え、別れたり、よりを戻したりを繰り返していた。やがて2人とも同じ会社の最終面接に残り……。

 就職難にあえぐ若者たち、ということなんでしょうけども、主人公にまったく共感できず……。自分の就職のためなら恋人さえ蹴落とそうとするところが、「こんな自分がイヤ」という台詞はあるものの、あまりに身勝手すぎて閉口してしまいます。社員登用の面接では「彼氏とセックスしてるんだろ?」「必要でしたら堕ろします」なんてやりとりがあったり、ありえなすぎて思わず笑ってしまうほど。ブラックユーモアということなんでしょうか。そしてまたなんともやりきれない結末……。厳しい現実をシニカルに切り取った作品といえるのかもしれません。
 主演のムン・ガヨンは「Mimi」でヒロインのミミ役を演じた娘ですね。相手役となるゴニに扮したヨ・フェヒョンは本作と「ランジェリー少女時代」でKBS演技大賞の連作・単発ドラマ賞を受賞しています。

2018年2月24日

あなたは思ったより近くにいる


 古本屋を営むウジン(イ・サンヨプ)は、DJをしているポッドキャスト放送「夜間本屋」の常連リスナー、ソヨン(キム・ソウン)との結婚式を迎えるが、その日突然、ソヨンは消えた。ウジンには彼女のいなくなった理由がまったくわからない。そんな彼の前に、ひとりの女性(イム・ファヨン)が現れる。ウジンは彼女が意図的に近づいたのだと気づき、ソヨンの居場所を知っているはずだと問いつめるが……。

 突然いなくなった結婚相手と、入れ替わるようにして現れた女性、そして何やら知っていそうな写真家(クァク・ヒソン)の関係が徐々に明らかになっていくというサスペンス風味のラブストーリー。なるほどな展開で、4人ともハッピーエンドなところに好感がもてました。
 2PMのテギョンやキム・ウォネら特別出演が豪華。医師役でほんのちょっと出てるナムグン・ミンがイム・ファヨンに「どこかで見たような……」という顔をするんですが、2人は「キム課長とソ理事」で共演してるんですね。演出家が同じチェ・ユンソクなのでした。ちなみに主演のイ・サンヨプは前年のKBSドラマスペシャル「楽しい私の家」に続くチェ・ユンソク作品への起用になります。

2018年2月23日

出会わせて、ジュオ


 1937年、京城。田舎から上京して3ヶ月のスジ(チョ・ボア)が結婚相手を捜すためカップリングパーティにやって来た。ジュオ(ソン・ホジュン)はみすぼらしい恰好の彼女を追い出すが、翌日、結婚情報会社を訪ねてきたスジを雑貨店の社長と思い込んでしまい、夫候補を紹介することに。その一方、朝鮮総督府は北京に送るため朝鮮女性を騙して徴発しようとしていて……。

 日本統治下の朝鮮が舞台ということで、町には日本語の看板なんかがあるのですが、これがひどい。「うーどん」とか誰か気づかないものでしょうか。しかも窓のなかには「皮革」の文字が。いったい何屋なのでしょう。使いまわすにしても、もうちょっとセットに気を配っていただきたい……。
 モダンな文化が入ってきて変わりゆく時代で、人々の恋愛事情が現代に通じるものとして描かれます。結婚相手の条件に挙げられる“3高”は、高学歴、高収入、高家(よい家柄ということですね)とか。そこに、騙されて中国に送られそうになるスジの危機、ジュオと父との軋轢などがからんできます。ありがちな結末とはいえますが、主演陣が好感度の高いキャストなので、まぁまぁ楽しめました。

2018年2月22日

僕らが季節なら


 隣同士の家に生まれ、ずっといっしょに育ったヘリム(チェ・スビン)とギソク(チャン・ドンユン)。高校生になった2人のあいだに、ソウルからの転校生ドンギョン(ジニョン)が現れた。ストレートに想いをぶつけてくるドンギョンにヘリムがドキドキする一方、ギソクは彼の存在がおもしろくない。ヘリムとギソク、2人の関係は……。

 B1A4のジニョンが主演のように(韓国でも)紹介されてますが、主人公は別に2人いて、三番手。キザな台詞を億面なく口にしてヒロインの心を揺さぶる転校生という役どころです。塀から落ちるヘリムを抱きとめ……るかと思いきや届かない、というのは「雲が描いた月明り」のパロディでしょうか。脚本家が「雲が描いた月明り」で共同脚本のイム・イェジンなんですよね。
 たびたび過去の場面が挿入されますが、ちょっとわかりにくくて前後関係が混乱しそうです。親の浮気問題は唐突な感じがしますし。メイキング映像を見るとドンギョンがピアノを弾く場面などもあったようなので、1時間の枠に収めるにあたってちょっと無理が出てるのかもしれません。とはいえ、思春期を迎えた幼なじみがぎこちなくなっていく様子が切なくもさわやかに描かれていました。糸電話が出てくるのは『たまこまーけっと』へのオマージュ? 映画を観ながら口にしたヘリムの言葉をギソクが言うラストシーン、かすかな希望を感じさせる終わり方で好感がもてます。チェ・スビン、チャン・ドンユンの配役もぴったりでした。

 音楽を手がけたのはこれまた「雲が描いた月明り」と同じケミことカン・ドンユンで、英語詞の挿入歌「The Moment」をうたうのはDMEANOR(ディミノ)。