2018年6月29日

奇跡の夏

わんぱく盛りの小学生ハニ(パク・チビン)にとって、物静かな兄のハンビョル(ソ・デハン)は格好のいたずら相手だった。ところがある日、頭が痛いと言っていたハンビョルが入院。脳腫瘍に侵されていた。母(ペ・ジョンオク)は泣いてばかりで、父(パク・ウォンサン)は冗談も言わなくなった。病院では同じ病気のウク(チェ・ウヒョク)が兄と親しくなっていく。ハニは兄に元気になってもらおうと大切な遊戯王のカードをあげるが、ハンビョルはそれをウクにあげてしまった。ハニはウクのことが気に入らず……。

 十数年ぶりに観ましたが、やっぱり涙なしには観られません……。すごく印象に残っていたのが、ウクの母(オ・ジヘ)がトイレの洗面台に溜めた水に顔をつけて泣き、ハニの母(ペ・ジョンオク)にも勧める場面なのですが、今回もそこがグッときました。親の気持ちになると
 もちろん、子役たちの熱演もそれぞれ素晴らしいです。パク・チビンはニューモントリオール映画祭の主演男優賞を最年少受賞。母を笑わせようとRain(ピ)になりきって踊る場面ではキレのあるダンスを見せたりも。そして、兄弟が物語の中心ですが、もうひとりの主人公ともいえるのがウク(チェ・ウヒョク)ですね。3年も闘病してるのにいつも笑顔。健気すぎます。
 ちなみに【以下ネタバレ】、原題は『안녕, 형아』で、劇中にそのままの台詞が出てきますが、ハニではなくウクの台詞なのでした。韓国語の안녕(アンニョン)には「こんにちは」と「さようなら」の意味がありますが、終盤で「안녕, 형아. 안녕」と繰り返し、日本語にするとすれば「やぁ、兄ちゃん。さよなら」と言ってるんですね。ターザンおじさんの“奇跡の水”を必死の想いで汲んできたハニがきっかけとはなってますが、ウクがハンビョルに命を授けたかのような、物語のクライマックスです。
 実話が元になっていて、原作はキム・ヘジョンが息子の闘病を綴ったエッセイ『悲しみが希望に』。本作の脚本家のキム・ウンジョンは彼女の妹なんだそうです。甥の物語をシナリオにしたわけですね。子どもらしいファンタジーを織り交ぜ、悲しいだけではない、明るさを感じさせる良作でした。

奇跡の夏

原題 안녕, 형아(アンニョン、兄ちゃん)
2005年/韓国/95分/2005年5月27日公開(韓国)
2006年7月15日公開(日本)

原作 キム・ヘジョン『悲しみが希望に』
脚本 キム・ウンジョン
監督 イム・テヒョン(『大阪のうさぎたち』)

パク・チビン……チャン・ハニ
ソ・デハン……チャン・ハンビョル ハニの兄
ペ・ジョンオク……ハニの母
パク・ウォンサン……ハニの父

チェ・ウヒョク……ウク 小児癌患者
オ・ジヘ……ウクの母
イ・スンフン……ウクの父
ソン・ヨンスン……ウクの祖母

チョン・イダ……ハニのクラスの担任教師
チョ・ヨングァン……パク・チュンテ ハニの同級生“セバスチャン”
キム・ミラン……チュンテの母
ユ・テウン……ハニの友人
イ・ジュニ……ハニの友人

イ・ハン……イ・ハン ウクの担当医
チェ・ジノ……ナ・ヨンス ハンビョルの担当医
ピョ・ウンジン……小児科集中治療室の看護師

ソ・ボムシク……ターザンおじさん
チョン・ジョンチョル……オクトンジャ コメディアン
アン・サンテ……ナイトクラブ「NASA」の客引き

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