2018年11月3日

曲がり角

ヨンエ(キム・ヨンリム)は「愉快なヨンエさん」と呼ばれる71歳の独居老人。認知症を装い、施設で暮らすことを望んでいる。一方、高校生のドンハ(ヨン・ジュンソク)は、何でも金で解決する母(ユン・ユソン)に「産んだことを後悔してる」とまで言われ、自暴自棄になってビルの屋上から飛び降りようとする。それを止めたのがヨンエだった。学校から奉仕活動を命じられたドンハは、福祉館でヨンエと再会。「オッパ!」とつきまとうヨンエが疎ましいドンハだったが……。

 KBSドラマスペシャルの2012年作品。孤独な老人と、どこにも居場所のない高校生、2人の交流を描いた物語で、なかなか秀逸な脚本だと思います。
【ややネタバレ注意】ヨンエは息子と絶縁状態で連絡もつかないということでしたが、30年前に夫の暴力から逃れるために家を捨て、たしかに絶縁状態ではあるものの、息子は実は母の保険料を払っていて、完全に縁が切れていたわけではなかったようです。ヨンエも息子の職場での名前(ナイトクラブではテバクと名乗っている)を知っていたわけですし。自分が施設に入ればそういう負担もなくなるからと、誰にも迷惑をかけるまいとしていたんですね。息子を捜すポスターをあちこちに貼りますが、息子の写真ではなく、自分の写真で「お母さんに会いに来なさい」としたのも、息子に迷惑がかからないようにということだったわけです。なるほど。そして、ドンハが自分に無関心な母(息子のアレルギーも知らずきゅうりを食べさせようとするなんてひどい!)に弁当もつくってもらえなかったと語りますが、それがヨンエには息子の言葉と重なるのでした。自分を必要としてくれる人がいることで「しっかりしないと」と思い至るヨンエ。この老人と高校生の2人がたがいに共感するところがグッときます。
 タイトルの「曲がり角」は、ドンハと手をつないで歩くヨンエが「この曲がり角を一歩踏みだせば世界が広がっている」と語るラストシーンから。このラストが現実(=過去)なのかはわかりませんが、少なくともドンハにとって希望を感じさせる終わり方でした。その前が「え、そんな……」という展開なんですけど。
 エンディングに流れるのは、なぜかDeath Cab for Cutieの"Marching Bands of Manhattan"。

KBSドラマスペシャル「曲がり角」

原題 모퉁이(曲がり角)
2012年10月14日放送/1話完結/KBS
KBS WORLDにて放送

脚本 イ・ジュヨン(「ユリの絆創膏」「そんな愛」)
演出 キム・ヨンジン(「恋をしましょう」「ユリの絆創膏」)

キム・ヨンリム……イ・ヨンエ
ヨン・ジュンソク……チェ・ドンハ 高校生
ユン・ユソン……ドンハの母
キム・ヨンチョル?……テバク=キム・ジョンファン ヨンエの息子
パク・ヒョンジョン……ユ・ジャヨン 総合愛情福祉館の職員
パク・ヘジョン?……総合愛情福祉館の女性職員
チュ・ドンヒ……総合愛情福祉館の職員
ト・サンウ……テウン ドンハの同級生
チャン・ホジュン……福祉館の少年
キム・ギョンラン……福祉館の老人
ハン・ソンヨン……区役所?の職員
パク・ソンギュン……警察官
ホン・スンモ……ナイトクラブの従業員

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