2017年3月3日

遥か遠い踊り


 ある日、演出家のパラン(ク・ギョファン)が遺書も残さず自殺した。最後に電話で話したのは劇作家のヒョン(イ・サンヒ)だが、なぜみんなが泣くのか理解できない。そんなヒョンを先輩のスジン(チャ・スヨン)は心配している。やがて大学でパランの追悼式を行なうことに。ヒョンらはパランの遺作となった『人造人間の死』の再演を依頼される。ヒョンは誰にも理解されなかった結末を変えると主張するが……。

 かなり抑制の効いた内省的な作品。
 説明的な描写や台詞がほとんどないので、わかりにくいと感じる向きも多いかもしれません。例えば、パランの自殺に後輩のスルギが責任を感じてしまう背景も具体的には語られませんが、おそらく、再開発で立ち退きを要求される母の食堂に劇団員を連れていったとき、パランが以前に立ち退かせるための嫌がらせに来ていたことが判明、しかしそれはパランが劇団員に必ずギャラを支払おうとしていたからでもあった……といったことなのでしょう。劇中劇として挿入される『人造人間の死』のパートもシュールというか、とても未来に見えず……。もともと韓国はSFが苦手というのもありますが、いかにもチープでした。実際に舞台で演じられたコンテンポラリーダンスっぽいシーンを挿入するほうがまだよかったような気もします。
 とはいえ、嫌いじゃありません。2016年の東京フィルメックスで上映された『恋物語』でも主演をつとめていたイ・サンヒが、ここでも苦悩する主人公を演じてます。特別な美人ではないもの、こういう陰のある雰囲気が似合いますね。『ここよりどこかへ』では主演、『ノーボーイズ、ノークライ』ではパンク少女だったチャ・スヨンが先輩女優役でした。こういう実験的な試みができるのも短編ドラマ枠のおもしろいところでしょう。

ドラマスペシャル「遥か遠い踊り」

原題 아득히 먼 춤(遥か遠い踊り)
2016年11月20日放送/1話完結/KBS
KBS WORLDにて2017年1月29日に日本初放送

脚本 イ・ガン(「違うように泣く 」)
演出 イム・セジュン(「契約の男」)

イ・サンヒ……チェ・ヒョン 劇作家
ク・ギョファン……シン・パラン 演出家
チャ・スヨン……チェ・スジン 先輩俳優
チョン・ヨンギ……ファン・スンヨル 先輩俳優
チャン・ソギョン……イ・スルギ 劇団員
ウ・ジヒョン……イム・ジョンビン 劇団員

ナム・ミョンリョル……所長アンドロイド
ソン・ミンソク……課長アンドロイド
キム・スンフン……チーム長アンドロイド

イ・ヨンソク……パランの父
ユン・スンシム……パランの母
イ・ジェヒ……パラン宅の大家
キム・ヒョン……スルギの母
カン・ジナ……助教授
イ・ジュニョン……キム・ソンフン 学生会長
チェ・ジェソプ……刑事
イ・ドンヨン……薬剤師
ファン・ウサン……警備員
イ・ジェムン……後輩
イ・バダ……後輩
シン・チヨン……救急隊員

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