KBSドラマスペシャルの2012年作品。孤独な老人と、どこにも居場所のない高校生、2人の交流を描いた物語で、なかなか秀逸な脚本だと思います。
【ややネタバレ注意】ヨンエは息子と絶縁状態で連絡もつかないということでしたが、30年前に夫の暴力から逃れるために家を捨て、たしかに絶縁状態ではあるものの、息子は実は母の保険料を払っていて、完全に縁が切れていたわけではなかったようです。ヨンエも息子の職場での名前(ナイトクラブではテバクと名乗っている)を知っていたわけですし。自分が施設に入ればそういう負担もなくなるからと、誰にも迷惑をかけるまいとしていたんですね。息子を捜すポスターをあちこちに貼りますが、息子の写真ではなく、自分の写真で「お母さんに会いに来なさい」としたのも、息子に迷惑がかからないようにということだったわけです。なるほど。そして、ドンハが自分に無関心な母(息子のアレルギーも知らずきゅうりを食べさせようとするなんてひどい!)に弁当もつくってもらえなかったと語りますが、それがヨンエには息子の言葉と重なるのでした。自分を必要としてくれる人がいることで「しっかりしないと」と思い至るヨンエ。この老人と高校生の2人がたがいに共感するところがグッときます。
タイトルの「曲がり角」は、ドンハと手をつないで歩くヨンエが「この曲がり角を一歩踏みだせば世界が広がっている」と語るラストシーンから。このラストが現実(=過去)なのかはわかりませんが、少なくともドンハにとって希望を感じさせる終わり方でした。その前が「え、そんな……」という展開なんですけど。
エンディングに流れるのは、なぜかDeath Cab for Cutieの"Marching Bands of Manhattan"。