カリコレ2016で観逃してしまい、コリアン・シネマ・ウィーク2016にて鑑賞。
まったく予備知識なく観ました。ジニョンの正体は詐欺師かと思ったほどで、衝撃の展開に驚愕。あまりに痛ましい事実がソグォンを待ち受けているのでした。
序盤からところどころ引っかかる場面があるのですが、それらは真実が明かされたところで「そうだったのか!」と納得します。(1)ソグォンのもとへやって来たジニョンはなぜ彼の居場所がわかったのか、(2)ぬいぐるみを轢いてしまったジニョンはなぜあれほど取り乱したのか、(3)ジニョンが職場復帰を「その制服を着るのはうしろめたい」と断る理由、(4)ソニ(チョ・イジン)の飼っているマークという犬がソグォンに向かっていく理由、(5)ジニョンはなぜオランダに移住しようとするのか……などなど。
しかし、よく考えると、ジニョンがかわいそうですね。もちろんソグォンもそうですが、彼は現実を受け止めきれずに逃避してるといえるわけで……。最後の記憶も「そこまでかよっ!」とツッコミたくなるような(本人ではなく、ふたりの当事者にとって)残酷なもので……。そういうところが悲劇といえば悲劇なのですが。
とはいえ、チョン・ウソンはさすが。記憶を失くしたどこか虚ろなソグォンと、かつての冷たい弁護士だったソグォン、まるで別人のように演じてます。
あとから知ったのですが、チョン・ウソン自ら製作を手がけ、新人監督を起用してるんですね。イ・ユンジョン監督はいくつかの作品で脚本や脚色を担当してますが、長編は初。2010年に同名の短編映画(主演はキム・ジョンテ)があって、自身の失踪届を出す男性の前に自分を知ってそうな女性が現れるというプロットなので、これを長編化したのでしょうか。
終盤にまたしても悲劇的な展開を見せますが、かすかに救いのあるラストにホッとしました。