2016年3月13日

ネコのお葬式

ミュージシャン志望のドンフン(カンイン)と、イラスト仕事をしながら漫画家を目指すジェヒ(パク・セヨン)。ふたりは友人の結婚式で出会い、たがいに夢を追いながら同棲生活をしていた。しかし、すれ違いが続き、ふたりは別れることを選ぶ。1年後、ドンフンが引き取って育てていた愛猫のクルムが亡くなり、ドンフンはジェヒに連絡。ふたりでクルムを見送ろうと、思い出の場所に向かう……。

 シネマート新宿にて鑑賞。小さいほうのスクリーンで、2週めにして観客は4人。でも、単館系の小品というか、派手さのない、小ぢんまりとした作品なのでそれくらいがちょうどいいような。SUPER JUNIORのカンインが主演というおかげでの日本公開でしょう。K-POPアイドルが出てるだけで買ってもらえる昨今ですから。――とネガティヴに聞こえるかもしれませんが、こういう作品、嫌いじゃありません。むしろ好きです。
 1年ぶりに待ち合わせたふたり。先にカフェに着いたドンフンは、自分のアメリカーノに続けてソイラテも頼みそうになってしまいます。やって来たジェヒに「私のぶんは頼んでないの?」と言われ、ぶっきらぼうに「何を飲むかわからないから」と答えるのですが、やっぱりジェヒが頼むのはソイラテなのでした。――といった細やかな描写が、なんともリアル。あるいは、島の民宿に泊まることになったふたり。ドンフンは酒を買ってくるのですが、シャワー中のジェヒの携帯電話を見てしまい(何を見たかがはっきりと明かされるのは最後)、「もう店が閉まってた」と嘘をついて寝てしまいます。――といったところも、もどかしく、切ない。再会した元恋人への想いが再燃しそうでしない、いや、させないわけです。
 期待するような意味でのハッピーエンドではないものの、後味が悪いなんてことはありません。“等身大のラブストーリー”というと陳腐ですが、まさにそんな感じ。とりたてて大きな出来事が起こるわけではないものの、共感できる物語に仕上がってます。ウェブ漫画が原作だそうです。
 ところで、本筋とは関係ありませんが、同棲をはじめたジェヒがドンフンに「おしっこは座ってして」と言います。日本でばかり言われることかと思いきや、最近は韓国でもそんな議論が出てきてるそうですね。猫がペットとして人気になったのもここ数年のこと。ほんの十年ほど前には愛玩の対象というよりもむしろ忌み嫌われる存在だったのに、ずいぶん変わったものです。そんな意味でも“韓国の今”を垣間見ることができる作品といえるかもしれません。
 ちなみに、ドンフンが生まれ育ち、ふたりの初旅行で、そしてクルムを埋葬するために訪れる島は、仁川の南西、快速フェリーで約1時間の場所にある徳積島だそうです。
 猫の死は、物語の契機ではあるものの、そのものが描かれるわけではありません。猫好きの方も安心して観られます。

ネコのお葬式

原題 고양이 장례식(猫の葬式)
2014年/韓国/107分/2015年1月15日公開(韓国)/2016年2月13日公開(日本)
http://catfuneral-movie.com/

監督・脚本 イ・ジョンフン
原作 ホン作家『ネコのお葬式』 http://webtoon.daum.net/webtoon/view/cat
音楽 イルマ

カンイン(SUPER JUNIOR)……イ・ドンフン
パク・セヨン……シン・ジェヒ
チョン・ギョウン……ヒョンソク 音楽プロダクションの社長?
ホン・ワンピョ……ジニョク ドンフンの友人
カン・ギドゥン……ホンヨプ ドンフンの友人
イ・ギュジョン……スジン ホンヨプの恋人
チョン・グン……ミンジュン ドンフンの先輩
イ・ジソン……ボギョン ジェヒの友人
チャン・ユンソ……ミンジュンとボギョンの娘
ミンジ……ウンギョン ドンフンの地元の後輩
キム・ビョンチュン……ドンフンの父、理髪師
キム・ジェロク……結婚式の立会人
ソン・ボミン……ジェヒの友人
イ・チュング……動物病院の医師
チョン・ジュニョン……CDショップで働くドンフンの後輩
チュ・ブジン……島のおばあさん
シン・ムホ……島のおばあさんの息子
キム・ヨンドク……理髪店の客

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