2018年12月19日

彼とわたしの漂流日記

リストラに遭い、借金を抱え、恋人にも捨てられた男(チョン・ジェヨン)は、絶望して漢江に身を投げた。が、パム島に漂着。死のうにも死ねない彼は、泳げないため脱出することもできず、島でのサバイバル生活をはじめる。一方、対岸のマンションに暮らす女(チョン・リョウォン)は、引きこもり、3年のあいだ一歩も家を出たことがない。ある晩、彼女はカメラのレンズ越しに彼の姿を見つけ、好奇心を抱きはじめ……。

 数年ぶりに再見。やっぱりいい作品ですね。
 ソウルのど真ん中で漂流生活とはいささか荒唐無稽ですが、舞台となるパム島は生態系保全地域に指定されていて立入禁止なので、もしかしたらこんなことも可能かもと思わせます。絶妙。チャパゲティ(インスタントのチャヂャン麺)の粉末ソースを見つけ、自給自足で念願のチャヂャン麺を完成させるくだりは涙なしには見られません(笑)。
 原題は『キム氏漂流記』。一見すると、むりやり恋愛に寄せた邦題のようですが、実はこれまた絶妙なタイトルかもしれません。主人公がふたりともキム氏で、ヒロインのほうも現実と妄想のあいだを漂流していたといえるわけですから。
 民防(一斉に行われる軍事避難訓練。車両はストップ、歩行者も足を止めなければならない)が重要な役割を果たすところも韓国ならでは。奇想天外でありながらリアルでもある、韓国映画らしい韓国映画で、好きな作品のひとつです。

2018年12月18日

キンコンカンコン 恋の始まり

かつてラッパーとして活動していたスルギ(イ・ジュヨン)は、厳格な母のために夢をあきらめ、今は小学校で音楽を教えている。二日酔いで授業に出たり、あまりやる気はない。そんなある日、ド派手な服装の英語教師ユビン(ユラ)がやって来る。世間の目などまるで気にしないユビンとはそりが合わないが、2人は放課後クラブでヒップホップ班を担当することに……。

 こういう邦題、ほんと、やめてほしいですね。まったく「恋の始まり」なんて話じゃないんですから。イ先生(アン・ウヨン)が主人公に片想いをしているというのはありますが、そこが主題ではありません。
 元ラッパーの教師が嫌々ながら子どもたちにヒップホップを教えていくうちに情熱を取り戻していくという物語。「力道妖精キム・ボクジュ(恋のゴールドメダル)」で重量挙げ部員のひとりを演じていたイ・ジュヨンが主人公です。元ラッパーという役どころは意外な感じでしたが、わりとサマになってますね。Girl's Dayのユラがサバサバとした英語教師のユビン役で、すごくよかったです。振りまわされつつも、彼女のおかげでスルギは変わっていくんですね。2人に芽生える友情がちょっと感動的。生徒の子どもたちもそれぞれが個性的で、楽しめます。

2018年12月17日

ハッピー煉獄レストラン

なかなか芽の出ない料理人のシヒョン(キム・ジソク)は、人気番組「キッチンコロシアム」に挑戦するも散々に酷評され、さらには恋人の浮気現場を目撃して絶望する。自殺を決意し、首を吊ろうとしたその矢先、すべてが誤解と気づくが、死んでしまった……。気づくとそこは煉獄。あの世へのフェリーが出航する翌朝まで、死神のヘナ(ユン・ボラ)が兄のテミン(イ・ムセン)と営むレストラン「アイリッシュアッパーカット」に連れてこられたシヒョンは、料理コンテストで優勝すれば願いの叶うチケットがもらえると知って……。

 泣けるくだりもあったりして、なかなか楽しめるウェブドラマでした。頼りない主人公にキム・ジソクがぴったりで、元SISTARのボラはちょっとドジな死神役を愛らしく演じていて好感がもてます。
 OST「맥주는 식어가는데(ビールは冷えるけど)」を演奏してるのは중식이(ジュンシギ)というバンド。「スーパースターK」のシーズン7でTOP 5まで勝ち進んだそうです。ヴォーカルのチョン・ジュンシクが、テミン(イ・ムセン)をステージへと促す煉獄のミュージシャンとしてゾンビメイクで出演もしてます。

2018年12月16日

the Blue Sea

大学の海軍副士官学科に通うヘジ(チョン・イェイン)は、実習に遅刻した日、恋人からカカオトークで別れを告げられて意気消沈。その矢先、浜辺に打ち上げられた男(チョ・ギソン)を見つける。放っておけず家に連れて帰るが、男は記憶を失っていた。副士官学科の教授で海軍大尉のギス(ク・ジャソン)が男の腕にあるタトゥーに目を留め、チャギと名づけて面倒をみることに。その一方、海軍諜報部隊に所属するヘジの姉ウニ(ユンジン)は局長から極秘任務を命じられる。

 ひどすぎ……。低予算の特撮ヒーロー番組のような幼稚なストーリー展開で、キャストの演技も拙く、なかなか観るのがつらい作品。せめてアクションにキレがあったら楽しみようもあるのですが、撮り方や編集で補うどころか、演出そのものが下手すぎます。ウェブドラマとはいえ、あんまりじゃないでしょうか。LOVELYZの曲が挿入歌として流れるので、ファンであれば観る価値はあるかもしれません。

the Blue Sea

原題 더 블루씨(ザ・ブルー・シー)
2017年10月9日より配信/全5話(日本の放送では全1話)/NAVER TV
KBS WORLDにて2018年8月24日に日本初放送(1話完結)

脚本・演出 ファン・ギョンソン

チョン・イェイン(LOVELYZ)……チョ・ヘジ 大学生
チョ・ギソン……チョン・チャギ 記憶喪失の男=WM-009
ク・ジャソン……ソン・ギス 海軍大尉、副士官学科の兼任教授
ユンジン……チョ・ウニ ヘジの姉、UDU(海軍諜報部隊)要員

チョン・テリ……チョン・ガヨン ヘジの親友、航空サービス科の生徒
パン・ボヨン……キム・ヒョンギ ヘジの親友、自動車工学科の生徒
キム・ミニョク……アルバイト学生=北朝鮮工作員
オ・サンジュン……UDU局長、ウニの上司
アン・スンウォン?……航空サービス科の実習の乗客役

2018年11月8日

韓国警察の階級

치안총감 治安総監(Commissioner General) 警察庁 長官
치안정감 治安正監(Chief Superintendent General) 警察庁 次長
치안감 治安監(Senior Superintendent General) 警視監
경무관 警務官(Superintendent General) 警視長
총경 総警(Senior Superintendent) 警視正
경정 警正(Superintendent) 警視
경감 警監(Senior Inspector) 警部
경위 警衛(Inspector) 警部補
경사 警査(Assistant Inspector) 巡査部長
경장 警長(Senior Policeman) 巡査長
순경 巡警(Policeman) 巡査

 映画やドラマで出てくる警察の階級。日本では何にあたるのか、まとめてみました(右端が日本)。まったくのイコールではないのかもしれませんが。

2018年11月4日

伏魔殿

 ミレ群庁に勤めるヨンナム(アン・ネサン)は要領の悪いカタブツの公務員。しかし情に篤く、とりわけ後輩のスンジェ(チェ・ウソク)を弟のようにかわいがっている。ある日、道路整備事業の入札に不正の疑惑がもちあがる。見過ごすことができないヨンナムは真相を明かそうとするが、スンジェが関わっていることに気づいて……。

 KBSドラマスペシャルの2012年作品。要領が悪いと妻に呆れられても不正は許せない主人公をアン・ネサンが演じてます。スンジェ役のチェ・ウソクが見覚えのある顔だなぁと思ったら「その女の海」のテス! 「ここは伏魔殿です」と先輩に忠告しつつ、出世のために不正に手を染め……という役どころでした。まぁ、予想を裏切るような展開はありませんが、2011年のKBS単幕劇脚本公募の当選作をドラマ化した作品で、脚本家は実際に公務員の経験があるそうです。
 劇中、郡民ふれあい祭りのステージに、ちょうど4人組で再始動したアイドルグループのA-bleが出てきて"Mystery"を歌ってます。エンディングで流れるのは、なぜかBob Sinclarの"Love Generation"。


2018年11月3日

曲がり角

ヨンエ(キム・ヨンリム)は「愉快なヨンエさん」と呼ばれる71歳の独居老人。認知症を装い、施設で暮らすことを望んでいる。一方、高校生のドンハ(ヨン・ジュンソク)は、何でも金で解決する母(ユン・ユソン)に「産んだことを後悔してる」とまで言われ、自暴自棄になってビルの屋上から飛び降りようとする。それを止めたのがヨンエだった。学校から奉仕活動を命じられたドンハは、福祉館でヨンエと再会。「オッパ!」とつきまとうヨンエが疎ましいドンハだったが……。

 KBSドラマスペシャルの2012年作品。孤独な老人と、どこにも居場所のない高校生、2人の交流を描いた物語で、なかなか秀逸な脚本だと思います。
【ややネタバレ注意】ヨンエは息子と絶縁状態で連絡もつかないということでしたが、30年前に夫の暴力から逃れるために家を捨て、たしかに絶縁状態ではあるものの、息子は実は母の保険料を払っていて、完全に縁が切れていたわけではなかったようです。ヨンエも息子の職場での名前(ナイトクラブではテバクと名乗っている)を知っていたわけですし。自分が施設に入ればそういう負担もなくなるからと、誰にも迷惑をかけるまいとしていたんですね。息子を捜すポスターをあちこちに貼りますが、息子の写真ではなく、自分の写真で「お母さんに会いに来なさい」としたのも、息子に迷惑がかからないようにということだったわけです。なるほど。そして、ドンハが自分に無関心な母(息子のアレルギーも知らずきゅうりを食べさせようとするなんてひどい!)に弁当もつくってもらえなかったと語りますが、それがヨンエには息子の言葉と重なるのでした。自分を必要としてくれる人がいることで「しっかりしないと」と思い至るヨンエ。この老人と高校生の2人がたがいに共感するところがグッときます。
 タイトルの「曲がり角」は、ドンハと手をつないで歩くヨンエが「この曲がり角を一歩踏みだせば世界が広がっている」と語るラストシーンから。このラストが現実(=過去)なのかはわかりませんが、少なくともドンハにとって希望を感じさせる終わり方でした。その前が「え、そんな……」という展開なんですけど。
 エンディングに流れるのは、なぜかDeath Cab for Cutieの"Marching Bands of Manhattan"。