2016年11月26日

パパ

芸能マネジャーのチュンソプ(パク・ヨンウ)は逃げた所属歌手を捜しにアメリカへやって来た。ミヨン(シム・ヘジン)と偽装結婚をして不法滞在から逃れようとするものの、その直後、ミヨンが交通事故で他界。強制送還されそうになったところ、チュンソプの前に現れたのは、ミヨンの娘のジュン(Ara)だった。彼女は母が養子にした5人の弟妹と暮らしている。「宮廷女官チャングムの誓い」が大好きな黒人系のゴードン、シニカルなスパニッシュ系のマヤ、ラッパーを目指す双子のジミー&トミー、そしてチュンソプを「パパ」と呼んで抱きついてくる幼いロジー。仕方なく家族のふりをするチュンソプだったが、やがてジュンの天才的な歌声を知って……。

 新大久保映画祭2016で鑑賞。劇場未公開作とはいえ、なぜ4年も前の作品をやるのかと思ったのですが、新大久保はアジアを中心とするさまざまな国の人々が集まる街。この映画祭も「多文化共生」を打ち出すようになり、3回めとなる今年は、韓国映画のみならず中国やヴェトナムなど7ヶ国の作品を上映するのでした。
 そんな趣旨からすると、この『パパ』はぴったりですね。アメリカが舞台で、多様なバックボーンをもつ血のつながらない兄弟姉妹と心を通わせていく主人公。疑似ファミリーが繰り広げる笑いと涙のヒューマンドラマです。音楽でひとつになるというところも、ありがちといえばありがちですが、子どもたちが愛らしく、楽しい場面でした。パク・サンチョルの「無条件」を歌うロジーもかわいい。パク・サンチョルが特別出演してたりも。そして、ラストシーンはあったかなサプライズ。

パパ

原題 파파(パパ)
2011年/韓国/118分/2012年2月1日公開(韓国)
第7回東アジア市民共生映画祭にて日本初上映(2015年10月10日)

2016年11月25日

ミス・ワイフ

冷静沈着で勝訴率100%の独身弁護士のヨヌ(オム・ジョンファ)は、ある日、交通事故に遭った。目覚めたヨヌの前に現れたのは、そこが天国の中継所だというイ所長(キム・サンホ)。手違いで早く亡くなった人の代わりに1ヶ月を過ごせば、生き返らせてくれるという。その条件を呑んで再び目覚めると、ヨヌは2人の子をもつ主婦になっていた。夫のソンファン(ソン・スンホン)、生意気な娘のハヌル(ソ・シネ)らとの暮らしは以前とは真逆。パニックに陥るヨヌだったが……。

 当初『素敵な悪夢』として撮影も進められていた作品、結局、韓国でも『ミス・ワイフ』として公開されました。当たり障りのないタイトルすぎて、元のほうがよかった気もしますね。
 クールな独身弁護士という役にオム・ジョンファがぴったり。娘のハヌルに「サイボーグみたい」と言われたりしてヒヤッとしますが(笑)。ソン・スンホンは“無駄にハンサムな公務員”という役どころで、娘に煙たがられるお調子者。最初はコミカルすぎてどうも合わない気がしたのですが、物語が進むと、妻への侮辱だけは絶対に許さない、男気のあるところを見せたりするのでした。「この濃い眉がカッコいいって言っただろ!」なんて鉄板ネタもあります(笑)。そして、出番は少ないもののラ・ミランがやっぱりおもしろい。
 恋愛や家族とは無縁のキャリアウーマンが入れ替わりの人生を経験するうちに……と想定内のストーリー展開ですが、それなりに楽しめました。ただ、イ所長の正体というのは必要だったんでしょうか!? 伏線らしきものはなかったように思いますし、唐突すぎるような気が。

ミス・ワイフ

原題 미쓰 와이프(ミス・ワイフ)
2015年/韓国/124分/2015年8月13日公開(韓国)
2016年8月13日公開(日本) http://misswife-movie.com

監督 カン・ヒョジン(『ミス・ギャングスター』)
脚本 キム・ジェヨン(『夜の女王』)、チョン・ミンギュ

2016年11月23日

イ・ラン@タワレコ渋谷

 ヒョゴ@duo MUSIC EXCHANGEの前にはTOWER RECORDS渋谷店の6Fイベントスペースでイ・ランのインストア・ライヴがありました。『ヨンヨンスン』『神様ごっこ』の日本盤リリースを記念したイベントで、いずれか購入の場合は先着でサイン会への参加も。すでに持ってるので、ライヴの観覧だけでしたが。
 2集『神様ごっこ』でも印象的なチェロを従えての全5曲。1曲めを除いてすべてその2集からの曲でした。「無料なのでアンコールはなし」とか、あけすけなMCがステキ(笑)。

이랑(イ・ラン)@TOWER RECORDS渋谷店

カツオ・プレゼンツ・熱い音ライブ
2016/11/19

1. ヨンヨンスン
2. 神様ごっこ
3. 家族を探して
4. 世界中の人々が私を憎みはじめた
5. 私はなんで知っているのですか

2016年11月22日

ヒョゴ@duo MUSIC EXCHANGE

昨年のTSUTAYA O-nest公演は即完だったそうで、今回ももちろん完売でしたが、なんとか観ることができました。前々日の大阪公演を経ての東京公演。開場前からduo MUSIC EXCHANGEの入口付近にはものすごい人でした。開演直前に倒れた人もいたようです(大丈夫だったでしょうか……)。年齢層は幅広く、意外と男性率が多かったように思います。
 オープニングにはオフショットの映像が流れ、2曲が終わったところで最初のMC。ポケットから紙切れを取り出して、たどたどしい日本語で衣裳について「カガクシャカンジデキテミマシタ」と話したりすると、会場のあちこちから「かわいい」との声が(笑)。オ・ヒョクのコワモテとのギャップがウケてるんでしょうね。ほとんど客席を見ずに(時には完全に背を向けて)歌いますが、どんだけシャイなのか(笑)。
 中盤で披露した「맛있는술」はドラマ「アントラージュ」の挿入歌。攻めてきましたねぇ。イントロから超絶カッコいい。今いちばん好きな曲かも。カントリー調の「멋진 헛간」は、ブレイクのひとつのきっかけ、バラエティ番組「無限に挑戦」の2015年の“歌謡祭”企画でチョン・ヒョンドンと組んだ오대천왕の曲です。番組のステージでは長谷川陽平(チャン・ギハと顔たち)がバンジョーでフィーチャリングされてましたが、そのヒョゴ・ヴァージョンになりますね。「소녀」は「応答せよ1988」の挿入歌で、オ・ヒョクがソロ名義で歌ったイ・ムンセの1985年作品のリメイク。また、最新曲もやってくれました。曲名は言わなかったと思いますが、「Paul」というタイトルのようです。
 ブルージーでありつつ、ソウルフルだったりパンキッシュだったり、ファンクネスを感じさせたリ。そして、もちろんロックンロール。これだけ多彩な音楽を弱冠23歳の4人が奏でているのだから驚きです。こんなバンド、ほかにいないでしょう。
 あと、もうひとつ驚いたのが、観客もいっしょに歌えること。特に「위잉위잉」ですが、韓国語の歌詞を多くの人がいっしょになって口ずさんでるんですね。韓国から来たファンが多いのかと思いきや、けっこう日本人も。なかなかすごいことじゃないでしょうか。
 新譜、そして次の来日公演が早くも楽しみです。

혁오(ヒョゴ)@duo MUSIC EXCHANGE

2016/11/19

2016年11月21日

ちりも積もればロマンス

無職なのに見栄っ張りなジウン(ソン・ジュンギ)は家賃が払えずアパートの部屋も追い出された。そこに声をかけてきたのが、ドケチなホンシル(ハン・イェスル)。「2ヵ月間、何でもいうことをきく」のを条件に、金儲けのノウハウを教えるというのだが……。

 高飛車な役どころのイメージの強いハン・イェスルが空き壜を集めたりするドケチなヒロイン、一方のソン・ジュンギは軽薄なチャラ男。ドタバタのラブコメディです。88万ウォン世代(月収88万ウォン程度のワーキングプアのこと)のリアルな恋愛事情という点にもっと踏み込んでもいいような気もしますが、気軽に観る娯楽作ですね。あちこち笑えるシーンはありますが、まぁ、それだけというか……。終盤はちょっと強引な感じもしますし。それぞれのファンには楽しめることでしょう。
 ところで、LaLaTVで放送されたものを観たら、ムン・セユンの役名が「サオプ」となってました。これは誤訳。スクーター同好会の「シスオペ」ですから! パソコン通信を知らない若い人が訳したんでしょうね。電子会議室の運営者をシスオペ(システムオペレーター)と呼んだのです。今風にいえば「板の管理人」といったところでしょうか。

ちりも積もればロマンス

原題 티끌모아 로맨스(ちりも積もればロマンス)
2011年/韓国/114分/2011年11月10日公開(韓国)
2012年5月12日公開(日本) http://cjent.jp/chiri/

2016年11月20日

12番目の補助司祭

2015年の『プリースト 悪魔を葬る者』の元となった短編映画。ぜひ観たいと思っていたところ、Vimeoで日本からも視聴することができました。英語字幕付き、48時間以内のレンタル(=ストリーミング視聴)が242円で、購入が606円です。
 悪魔祓いの儀式に向かうところから一度は逃げだしたアガトが再び悪魔祓いに臨むところまで、ほぼ構成は同じ。キャストが地味だったり、お金がかかってなさそうだったり(血を吐くシーンなどはやっぱり迫力に欠けたり)はするものの、それだけ、すでに完成されていたということでしょう。第12回アシアナ国際短編映画祭で「短編の顔」賞、第13回ミジャンセン短編映画祭で絶対悪夢部門の最優秀作品賞、第15回大邱短編映画祭では大賞と撮影賞(キム・テス)を受賞しています。
 アガトのトラウマは違っています。長編では幼い頃に亡くした妹と自分自身が出てくることで深みがあって、その後のキム神父の台詞もすごくいいものになってましたが、短編では、ある軍隊での出来事。兵役そのものが韓国ならではですが、さらに内容的にかなり強烈なものでした。どちらも捨てがたいところです。

12番目の補助司祭

原題 12번째 보조사제
2014年/韓国/25分

監督・脚本 チャン・ジェヒョン

イ・ハクジュ……アガト
パク・チイル……キム神父
イム・ソンミ……ヨンシン


12th Assistant Deacon (12번째 보조사제) from Central Park Films on Vimeo.

2016年11月19日

プリースト 悪魔を葬る者

女子高生のヨンシン(パク・ソダム)が轢き逃げに遭い、さらに病室から投身自殺を図った。キム神父(キム・ユンソク)は何かに取り憑かれていると確信し、ヨンシンを救うため、悪魔祓いを行うと宣言する。神学生のアガト(カン・ドンウォン)が補助司祭に抜擢されるが、学長(キム・ウィソン)はキム神父の行動を監視するよう命じていた。他の神父たちは型破りなキム神父に疑いの目を向けていたのだ。キム神父とアガトは危険な悪魔祓いに臨むが……。

 韓国には珍しい、エクソシズム=悪魔祓いを描いた映画。
 なかなかグロテスクな描写も多いのですが、観客動員は500万人を突破。韓国人、すごいですね。わさわさとゴキブリが這い出してくるところとか(CGだろうけども)勘弁してほしいんですが……。とはいえ、108分があっという間。終盤のアクションシーンもすさまじい勢いで、目が離せず、チャン・ジェヒョン監督は長編デビュー作とは思えない演出力を見せてます。元になった短編『12번째 보조사제(12番目の補助司祭)』が2014年の全州国際映画祭・韓国短編コンペティション部門で監督賞を受賞してるそうで、なるほど。次回作も楽しみです。
 悪魔に憑かれたヨンシン役を演じるパク・ソダムもまたすごい。百想芸術大賞をはじめ、いくつもの新人賞に輝いたのも納得。鬼気迫る演技とはこういうことでしょう。撮影のために丸刈りにする心意気も。そしてやっぱり、カン・ドンウォンが美しいですね。アガトはあるトラウマを抱えていて、それを克服する過程も物語の軸といえるでしょう。一方のキム・ユンソクが演じるキム神父は、アガトの心の傷を抉るような言葉を浴びせるデリカシーのない感じの粗野な男ですが、ヨンソンのために涙を流す一面ももっています。それに、戻ってきたアガトに「おまえは悪くない」と語りかける言葉も利いてました。教会からすれば厄介者でしかありませんが、心根はやさしい人物なのだとわかります。
 ちなみに、カン・ドンウォンとキム・ユンソクが劇中で歌うのは、聖歌「復活のいけにえに(Victimae Paschali Laudes )」。エンドロールでも流れます。

プリースト 悪魔を葬る者

原題 검은 사제들(黒い司祭たち)
2015年/韓国/108分/2015年11月5日公開(韓国)
2016年10月22日公開(日本) 韓国映画セレクション2016 AUTUMN