2017年3月7日

太陽の下で ―真実の北朝鮮―

8歳のリ・ジンミは模範労働者の両親とともに平壌で暮らしている――そんな“庶民の日常生活”を収めるはずが、ドキュメンタリ撮影とは名ばかりだった。北朝鮮側の監督のOKが出るまで一家は演技を強いられ、高級な住まいも、親の職業も、クラスメイトとの会話も、すべて北朝鮮が“理想の家族”をでっちあげるためのシナリオなのだった。ロシアの撮影スタッフは、カメラのスウィッチを入れたまま隠し撮りを敢行。撮影の目的を“真実を暴く”ことに切り替える……。

 シネマート新宿にて鑑賞。平日の日中、これほど席が埋まってるのを見るのは初めてかもしれません。韓流映画よりも需要があるんでしょうか。
 見せられる“北朝鮮の日常”が都合よく切り取られたものであろうことはわかっているるものの、台本があって、テイクを重ねて、こんなにも演出されていたとは! 驚きです。
 カメラの前で泣きだしてしまったジンミちゃんにスタッフが「好きなことを考えてごらん」と声をかけても、彼女は「わかりません……」。「詩」といわれても、ようやく口から出てくるのは少年団の決意表明みたいな言葉だけ。あまりにも痛々しい場面でした。

太陽の下で ―真実の北朝鮮―

原題 V paprscích slunce(日の光のなかで)
2015年/チェコ・ロシア・ドイツ・ラトビア・北朝鮮/110分
2017年1月21日公開(日本) http://taiyouno-shitade.com

監督・脚本 Vitaliy Manskiy(ヴィタリー・マンスキー)

2017年3月4日

Car, the Garden

 CODE KUNSTの新譜『MUGGLES' MANSION』を聴いていたら、とりわけ最後の曲が耳に残りました。"Don't Shoot Me MAMA"という曲で、feat. Car, the Gardenという名義。その後、Paloaltoの曲を流してるときにも気になったのもfeat. Car, the Gardenの"베짱이"でした。ぜんぜん知らず、Carという人とthe Gardenという人がフィーチャリングされてるのかと思ったのですが、調べてみたら、Car, the Garden(카더가든)というひとりのアーティストなんですね。さらに、2016年5月に改名していて、それまではMayson The Soul(메이슨 더 소울)という名前でした。ふだん聴くジャンルじゃなくてピンときませんでしたが、その名前なら目にしたことがあります。ヒョゴのオ・ヒョクが参加したりもしてますね。
 で、Car, the Gardenは1990年10月23日生まれのシンガーソングライター。2013年に(Mayson The Soulとして)デビューしました。Beenzino、Loco、Crucial Starといったヒップホップ勢との共演で注目を集めたようですが、R&BやSoul、さらに曲によってはロックやポップの趣も感じられます。


 現時点での最新曲は2016年11月18日リリースの"Gimme Love"。以前の名前のほうがいいじゃんという声もあるようですが、曲調は改名後のほうが好きですね。リリースはまだシングルのみのようで、正規アルバムが楽しみです。

Car, the Garden
Sound Cloud
https://soundcloud.com/carthegarden
Facebook
https://www.facebook.com/Carthegarden/
Instagram
https://www.instagram.com/carthegarden/

2017年3月3日

遥か遠い踊り


 ある日、演出家のパラン(ク・ギョファン)が遺書も残さず自殺した。最後に電話で話したのは劇作家のヒョン(イ・サンヒ)だが、なぜみんなが泣くのか理解できない。そんなヒョンを先輩のスジン(チャ・スヨン)は心配している。やがて大学でパランの追悼式を行なうことに。ヒョンらはパランの遺作となった『人造人間の死』の再演を依頼される。ヒョンは誰にも理解されなかった結末を変えると主張するが……。

 かなり抑制の効いた内省的な作品。
 説明的な描写や台詞がほとんどないので、わかりにくいと感じる向きも多いかもしれません。例えば、パランの自殺に後輩のスルギが責任を感じてしまう背景も具体的には語られませんが、おそらく、再開発で立ち退きを要求される母の食堂に劇団員を連れていったとき、パランが以前に立ち退かせるための嫌がらせに来ていたことが判明、しかしそれはパランが劇団員に必ずギャラを支払おうとしていたからでもあった……といったことなのでしょう。劇中劇として挿入される『人造人間の死』のパートもシュールというか、とても未来に見えず……。もともと韓国はSFが苦手というのもありますが、いかにもチープでした。実際に舞台で演じられたコンテンポラリーダンスっぽいシーンを挿入するほうがまだよかったような気もします。
 とはいえ、嫌いじゃありません。2016年の東京フィルメックスで上映された『恋物語』でも主演をつとめていたイ・サンヒが、ここでも苦悩する主人公を演じてます。特別な美人ではないもの、こういう陰のある雰囲気が似合いますね。『ここよりどこかへ』では主演、『ノーボーイズ、ノークライ』ではパンク少女だったチャ・スヨンが先輩女優役でした。こういう実験的な試みができるのも短編ドラマ枠のおもしろいところでしょう。

2017年3月1日

ショッピング王ルイ

家出した弟のボンナム(リュ・イヒョン)を捜すため、ボクシル(ナム・ジヒョン)は田舎の山奥からソウルへとやって来た。鞄を盗まれて無一文になってしまうが、超高級山参を通りかかったジュンウォン(ユン・サンヒョン)に買い取ってもらい、当面の生活費を手に入れた。そして、ボンナムのジャージを着ていたルイ(ソ・イングク)と出会う。彼は温室育ちの財閥御曹司だが、フランスから帰国して早々、交通事故に遭って記憶を失くしたのだった。ボクシルはルイが記憶を取り戻せば弟を見つけられると面倒をみることにするが……。

 財閥御曹司とか、記憶喪失とか、後継者争いとか……手垢のつきすぎた韓国ドラマの定番ネタですが、これはおもしろかったです。笑いあり涙あり。
 とにかくルイ役のソ・イングクがかわいいですね。ボクシルなしでは生きていけなくて「おなかすいた~」と頼りっぱなし。まるで子犬のよう。しかし、歌うべきシーンがあって、親睦会の“覆面歌王”では優勝までした設定なのに、一度も歌声を聴かせないのはいかがなものでしょう。まさか本業を忘れちゃったんじゃ……。それとも本業でしか聴かせないという矜持でしょうか。イム・セミ扮するマリは、よくある悪女かと思いきや、憎めないというか、特に後半になるとブッ飛んだキャラクターになっていって、わりと好感がもてました。
 ただ、ボンナム失踪の謎が二転三転するのはいいとしても、もうちょい刈り込んだほうがよかったような気はします。後半やや間延びしてると思うので。しかし、過去の縁が明らかになるラストには涙。できすぎ感はあるものの、ハッピーエンドで、楽しい作品でした。悪いことを企んだ人物には報いがあったり改心の機会が与えられたり、後味がよかったですね。ク室長はマヌケすぎて失笑してしまいますが。

【ネタバレ注意】マリとインソンがくっついてほしかったけれど、その描写はなし。まぁ、ジュンウォンが完全にボクシルを吹っ切ったので(その相手は特別出演のチェ・スビン!)、マリはジュンウォンをあきらめるしかなく、おそらくインソンにもチャンスはあるだろう、と思うことにしましょう。

ショッピング王ルイ【あらすじ】


【01】ルイはフランスで買い物しか楽しみのない生活を送っていたが、財閥会長の祖母が倒れて韓国へ。一方、祖母を亡くしたボクシルは弟を捜しにソウルへ。ところが鞄を盗まれて無一文に。ジュンウォンに山参を買ってもらい、ついに弟を見つけた…と思ったら、それはルイだった!

【02】ルイの死に会長は倒れ、会社を任せると言われたソングはほくそ笑んでいる。一方、ボクシルは鞄泥棒を見つけて捕まえるが、服だけ返してもらう。ルイが女子高生にからまれ、ボクシルが助けようとするものの、全財産を巻き上げられた。グムジャに屋根部屋を紹介してもらう。

【03】目の前でボクシルが栄養失調で倒れ、ジュンウォンは商品企画チームのインターンとして採用。山参の残金も払ってもらい、ボクシルとルイは生活用品をそろえる。ボクシルが初出勤しているあいだ、ルイは詐欺に引っかかり、意気消沈。見かけた犬に「コボシ!」と声をかけ…。

【04】ルイが生きているのではないかとソングは疑いはじめ、ジュンウォンの監視を命じる。一方、ボクシルの新商品企画はマリに奪われた。雨のなか傘を差しだされて泣きだしたボクシルをルイは抱きしめる。ジュンウォンもまたボクシルを励ます。ソングの目の前にルイが現れて…。


2017年2月28日

匂いを見る少女

3年前に両親を殺害され、自身も轢き逃げに遭ったウンソル(シン・セギョン)は、記憶を失くし、チョリムとして芸人を目指している。一方、3年前にウンソルという名の妹を殺された警察官のムガク(パク・ユチョン)は、殺人事件の捜査を担当するため、出世を狙っている。ところが、ムガクには味覚も嗅覚も痛覚もなく、それが原因で指名手配犯の逮捕に失敗してしまった。やがて出会ったチョリムの“匂いが見える”能力を知り、彼女の漫才の相方になることを条件をのんで捜査に協力してもらうが……。

匂いを見る少女

原題 냄새를 보는 소녀(匂いを見る少女)
2015年4月1日~5月21日放送/全16話/SBS
http://tv.sbs.co.kr/smellgirl/
KNTVにて2015年7月24日より日本初放送
http://kandera.jp/sp/nioiwomiru/

原作 マンチ『匂いを見る少女』
http://webtoon.olleh.com/toon/timesList.kt?webtoonseq=15
脚本 イ・ヒミョン(「野王~愛と欲望の果て~」「屋根部屋のプリンス」)
演出 ペク・スチャン(「MY DREAM」「かぼちゃの花の純情」)

パク・ユチョン……チェ・ムガク 警察官
シン・セギョン……オ・チョリム(=チェ・ウンソル)
ナムグン・ミン……クォン・ジェヒ セントオーガスティン オーナーシェフ
ユン・ジンソ……ヨム・ミ プロファイラー

パク・チンジュ……マ・エリ チョリムの友人
ソン・ジョンホ……チョン・ベッキョン 医師
チョン・インギ……オ・ジェピョ 刑事→警備員、チョリムの養父
チョン・チャヌ……ワン・ジャバン かえる劇団 代表
ナム・チャンヒ……チョ・インベ かえる劇団 団員
オ・チョヒ……オ・ウヤ かえる劇団 団員
キム・ソクチン……ソンジュン かえる劇団 団員
チョン・ソラ……かえる劇団 団員

イ・ウォンジョン……カン・ヒョク 南部警察署 強力係長
チョ・ヒボン……キ・チュンド 南部警察署 刑事
チェ・テジュン……イェ・サンギル 南部警察署 刑事
チェ・ジェファン……タク・ジソク 南部警察署 刑事 ※~5話
キム・ビョンオク……南部警察署 捜査係長
ミン・ジュノ……南部警察署 捜査係の刑事
シン・スホ……南部警察署 捜査係の刑事

キム・ソヒョン……チェ・ウンソル ムガクの妹 ※1・5話
キム・ミョンジン……ウンソル(チョリム)の父 ※1・12話
パン・ウニ……ウンソル(チョリム)の母 ※1・8・12話
キム・ジウン……ソウルSTM病院の看護師 ※1話
ソ・ヘジン……財布を置き忘れた客 ※1話
キム・ボミ……コンビニの店員 ※1話
ホ・ジュンソク……カン・ソンムン 指名手配犯 ※1話
キム・イルジュン……「一夜のTV芸能」司会者
チャン・イェウォン……「一夜のTV芸能」司会者
チョン・ヒョンソク……キム刑事 ※1話
ソン・ヨンホ……美容室強盗の犯人 ※1話
チョ・ヒョンジン……整形外科病院の看護師 ※1・2・5・6話
キム・ドンギュン……パク・ヒョンジン 整形外科病院長 ※1話
パク・ハンビョル……チュ・マリ モデル、ジェヒの恋人 ※2話
オ・ジョンテ……自動車修理工場の工員 ※2話
パク・ヨンス……ヤン・テス 鍵屋 ※2・10話
キム・ギチョン……ムガクの勤務する派出所の所長 ※2話
ソル・チャンヒ……ムガクの同僚警察官 ※2話
タン・ウ……峠で車を追突させたカップルの男 ※2・3話
ソン・セビン……峠で車を追突させたカップルの女 ※2・3話
ユ・ジヒョン……サングラスを購入する店の店員 ※3話
チェ・ホンイル……ソン・ジョンファン 南部警察署 署長 ※3・4・6話
ハ・スホ……ファン・ギス 被害者 ※4話
ソ・ミンギョン……焼肉屋の女将 ※4話
キム・ホチャン……アンディ=タク・ミンソク ジソクの弟 ※4話
ホ・ソネン……タンタンチキンの店主 ※5話
オ・テギョン……ヤン・ソクチン シェフ殺害犯 ※5話
チョン・ウク……ジェヒの弁護士 ※5話
キム・サンイル……ユジュ・エクスプレスの配達員 ※6話
ソン・ジョンファン?……違法賭博をしていた食堂の息子 ※6話
ナム・ジョンヒ……違法賭博をしていた食堂の女将 ※6話
イ・ジョンシン(CNBLUE)……アイドル ※6話
キル・グムソン……パク・ソッキ 運転代行業者 ※7話
キム・ヨンス……靴屋の店主 shoeking ※7話
キム・ジョンホ……ベッキョンの叔父 ※8話
イ・ジュニ……南部警察署 モンタージュ室 ※9話
ソ・ミンソ……おとり捜査をする女性刑事 ※9話
ミン・ジュニョン……変質者 ※10話
ペク・チェジン……原州のメウンタン屋の店主 ※10話
カン・ヘリム……原州のメウンタン屋の店員 ※10・11話
キム・ヘナ……コ・スミ ウンソルのソリム女子高の同級生 ※10・13話
ヨ・ウンボク……? ※12話
シム・ミン……ユン・ミナ ウンソルのソリム女子高の同級生 ※13話
チェ・ナム……チョ・ソユル ウンソルのソリム女子高の同級生 ※13話
チョン・デヨン……ホームレス ※13話
ホ・ジョンウン……ジミン 絵を描いていた少女 ※14話
ユ・ソイ……モデルハウスの職員 ※15話
コ・インボム……イェ・チャングク ジンスングループ会長、サンギルの父 ※15話
アン・テヨン……ソ・ジュンハン 殺された大家(写真) ※16話
パク・コンラク……ソン・グシク 女将の息子 ※16話

匂いを見る少女【あらすじ】


【01】両親を殺されたウンソルは記憶を失い、チョリムとして芸人を目指している。一方、ウンソルと同姓同名の妹を殺されたムガクは殺人事件捜査を担当するため出世を狙っている。無痛症のため指名手配犯の逮捕に失敗するが、その後“匂いの見える”チョリムの協力で強盗を捕まえる。

【02】チョリムはムガクに漫才の相方になってくれたら捜査に協力すると提案し、2人は漫才を練習してネタ見せをした。一方、ヨム警衛がバーコード殺人事件の捜査を開始。失踪したマリを捜すなか、衝突事故で一台の車が崖から転落した。チョリムはその現場に失踪したマリの香水を…。

【03】マリの遺体が発見され、特別捜査班にはムガクも加わることになった。一方、チョリムはムガクのせいで品評会に出られず劇団を追い出されてしまう。酔いつぶれたチョリムをムガクは送ろうとするが、ベッキョンのアリバイの穴に思い当たり、警察へ。ヨム班長はチョリムを見て…。

【04】ムガクは劇団代表に許してもらい、再びチョリムとコンビを組むことに。一方、新たな殺人事件が起こるが、ヨム班長とムガクはバーコード殺人の模倣犯とにらむ。犯人はアンディで、兄のジソクが事件を隠蔽しようとしたのだった。チョリムは親しげなムガクとヨム班長の姿を見る。