2018年7月17日

朝鮮名探偵 トリカブトの秘密

正祖16年(1782年)、腐敗官僚の横領を察した王は、朝鮮一の名探偵(キム・ミョンミン)に事件の背後を洗うよう密命を下した。彼は事件の手がかりとなるヒメトリカブトを探すため、妙な縁で知りあった犬商人のソピル(オ・ダルス)とともに積城へ赴く。そこで大商団を率いるハン客主(ハン・ジミン)と出会う。彼女が黒幕ではないかと疑いの目を向けるが……。

 キム・ミョンミン扮する探偵キム・ミン(今作では名前が明らかになりませんが、続編で出てきます)は、推理は冴えているのにどこか抜けていて、はっきりいって卑怯(笑)。相棒がオ・ダルスですから当然のごとくコメディで、あちらこちらにギャグを散りばめています。ちょっと度が過ぎる感もありますが、そのバカバカしさを楽しむべきなのでしょう。
 ハン・ジミンが妖艶な大商人という役どころで、ちょっと意外。清純なイメージが強いので、胸を強調した衣裳というのも新鮮です。が、ただそれだけのキャラクターじゃないのでした。ウ・ヒョンもまたクセモノでしたね。最近こんな役柄が多いような。
 ストーリーがやや込み入っているものの、なかなか練られています。キムの仕事は、表向きは烈女監察(貞節を守った未亡人を称える「烈女」制度で、対象者が妥当かどうかを審査する)のためで、その対象女性がイム判書(イ・ジェヨン)の甥の嫁であるキム・アヨン。病死した夫の家を守るため、ヒメトリカブトの栽培を成功させ、その後に自害したことなっているのですが、貢納品の横領を調べる過程で、この2つに接点を見つけます。なるほど、なオチ。原作はドラマ「ファン・ジニ」や映画『朝鮮魔術師』などのキム・タクファンによる小説『烈女門の秘密』だそうです。

2018年7月16日

黄泉がえる復讐

検事のジノン(キム・レウォン)の前に、死んだはずの母ミョンスク(キム・ヘスク)が現れた。そしてなぜかジノンに襲いかかる。取り押さえられたミョンスクは救急車で運ばれ、国家情報院の監視下におかれることになった。要員のヨンテ(ソン・ドンイル)はミョンスクが韓国初のRVだと語る。RV(=Resurrected Victims)とは、何者かに殺された人間が報復のために生き返り、復讐を果たすと再びこの世から消えるという「犠牲復活者」。世界各地で報告されているという。しかし、ミョンスクは7年前に強盗に殺害され、その犯人もすでに死亡している。ジノンが襲われたことから、刑事のスヒョン(チョン・ヘジン)らが再捜査を開始。実はジノンも当時の捜査記録に不審な点を見つけ、真犯人が別にいると考えているのだった。ジノンは7年前の事件の真相を追うが……。

 いちおう「なるほど」と思わせるオチが用意されてますが、ところどころ御都合主義的な感じは否めません。RVには通常の人間の10倍以上の鉄分があって磁場が生じるとか、もっともらしいような、らしくないような。母の愛、それを疎ましく思っていた息子の後悔、そして罪の意識といったテーマを、超常現象を用いて描きます。92分と短い尺で、難しく考えずに楽しめます。
 それにしてもイカレた中国人役がキム・ミンジュンだとは初めのうち気づきませんでした。映画ではときどきこうした怪演を見せるキム・ヘスク同様、ブッ飛んだ熱演です。
 パク・ハイクのミステリ小説『終了しました』が原作だそうです。荒唐無稽すぎる設定でミステリ小説と呼んでいいのかという気はしますが。

2018年7月15日

ボーグマム

息子のユル(チョ・ヨノ)の7歳の誕生日、コボン(ヤン・ドングン)は“ボーグマム”(パク・ハンビョル)を完成させた。彼女はあらゆる家事を完璧にこなすAIロボット。ユルがセレブの集まるバッキンガム幼稚園に入園すると、ボーグマムは正体を怪しまれないようママ友たちとつきあいをはじめる。ところが、ママ友グループのボスとして君臨するドヘ(IVY)がボーグマムに敵意を向けてくる。その一方、コボンは亡き妻に似せて作ったボーグマムにドギマギし、ボーグマムもまた想定外のエラーを起こし……。

 ロボットを作れる部屋じゃないだろうとかツッコミどころは多々あるものの、気楽に観れば楽しめます。特にセレブ幼稚園を仕切るママ友グループ“エレガンス”の面々に爆笑。“ひとこと話法”でクールに振る舞っているボス格のドヘですが、回想シーンの特殊メイクばかりか、最後の壊れっぷりがすごい。歌手のIVYにこんな一面があったとは……。ティナ役のチェ・ヨジンは超絶なスタイルにルー大柴みたいな喋り方というギャップにウケ、スジ役のファン・ボラは毎度ながら表情の変化がすさまじく顔だけ見ていても飽きません。
 9話でカラオケの場面があるのですが、KNTVの放送ではごっそりカットされてました。ヨンチョル&スジがTrouble Makerになりきってドン引きされたり、コボン(ヤン・ドングンはラッパーでもある)とヒョンビン先生(クォン・ヒョンビンはJBJのラップ担当)がラップバトルを繰り広げたり、ドヘ役のIVYが自身の代表曲「誘惑のソナタ」を歌って「IVYそっくり」なんて言われたりします。ボーグマムは、オム・ジョンファの「マレジョ」やIUの「いい日」、イ・ソラの「私は幸福です」、キム・ヨンジャの「アモール・パーティ」を本物そっくりに歌う(それもそのはず、それぞれ本物の歌声が流れる)という爆笑のシーンなんですが……。

2018年6月30日

お父さんの剣

 2018年の「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」で鑑賞したのは、この1本のみ。「アジアインターナショナル&ジャパン」内の特別上映という扱いで、日本の『午後の悪魔』『The Band's New Stage』、インドの『偽りの赤』と併映されました。さすがに完成度は段違い。しかし投票の対象ではないのでした。ちなみに、チャン・グンソクの『偉大なる遺産』が上映された「アニバーサリープログラム」は即満席だったようですね。
 作品画像として紹介されるのはたいていク・ヘソンのカットですが、いちばん知られた出演俳優だからなのでしょう、実際には脇役です。イ・ヒジュンも。そして、ラブホテルから出てくる中年カップルの女性はムン・ソリという、見過ごしてしまいそうなカメオでした。
 ファンタジーをからめた少年の成長物語といった作品。ゲーム世界の剣を実際に山で見つけますが、位置情報ゲームアプリのような(「ポケモンGO」みたいな)感じです。劇中のオンラインゲームは実在するもので、当時は正式なサーヴィス開始前だったネクソン社のMMORPG「アステリア」 http://astellia.nexon.com です。
 いじめっ子のほうがおなじみの顔(『王の運命』や『隠された時間』のイ・ヒョジェ)ですが、主役のチョ・ウチャンは人気番組「SHOW ME THE MONEY 6」で小学生ラッパーとして有名になったそうです。山を登りながら口にするラップがやたらうまいなと思ったら、そういうことだったんですね。


【あらすじネタバレ注意】中学生のテシク(チョ・ウチャン)はサンミン(イ・ヒョジェ)らにいじめられている。ある日、父親が職場で倒れて入院。病室には大勢の見知らぬ人がやって来るが、年齢も職業もバラバラの彼らはオンラインRPGをプレイする仲間で、「お父さんはすごい人です」と語りだす。チェ・ゲバラというIDで参加するテシクの父は“君主”としてみんなを率いる英雄なのだという。そして、テシクが君主の剣を受け継ぐべきだと言いわれる。呆れた母は怒るが、テシクはひとり智異山の老姑壇へ。そこで剣を発見する。再びサンミンらにいじめられるが、テシクは剣で4人をなぎ倒し、さらにそれをソンミンに突きつける。その頃、病院では父が意識を取り戻していた。駆けつけたテシクは窓辺に立つ“君主”の姿を見る。

2018年6月29日

奇跡の夏

わんぱく盛りの小学生ハニ(パク・チビン)にとって、物静かな兄のハンビョル(ソ・デハン)は格好のいたずら相手だった。ところがある日、頭が痛いと言っていたハンビョルが入院。脳腫瘍に侵されていた。母(ペ・ジョンオク)は泣いてばかりで、父(パク・ウォンサン)は冗談も言わなくなった。病院では同じ病気のウク(チェ・ウヒョク)が兄と親しくなっていく。ハニは兄に元気になってもらおうと大切な遊戯王のカードをあげるが、ハンビョルはそれをウクにあげてしまった。ハニはウクのことが気に入らず……。

 十数年ぶりに観ましたが、やっぱり涙なしには観られません……。すごく印象に残っていたのが、ウクの母(オ・ジヘ)がトイレの洗面台に溜めた水に顔をつけて泣き、ハニの母(ペ・ジョンオク)にも勧める場面なのですが、今回もそこがグッときました。親の気持ちになると
 もちろん、子役たちの熱演もそれぞれ素晴らしいです。パク・チビンはニューモントリオール映画祭の主演男優賞を最年少受賞。母を笑わせようとRain(ピ)になりきって踊る場面ではキレのあるダンスを見せたりも。そして、兄弟が物語の中心ですが、もうひとりの主人公ともいえるのがウク(チェ・ウヒョク)ですね。3年も闘病してるのにいつも笑顔。健気すぎます。
 ちなみに【以下ネタバレ】、原題は『안녕, 형아』で、劇中にそのままの台詞が出てきますが、ハニではなくウクの台詞なのでした。韓国語の안녕(アンニョン)には「こんにちは」と「さようなら」の意味がありますが、終盤で「안녕, 형아. 안녕」と繰り返し、日本語にするとすれば「やぁ、兄ちゃん。さよなら」と言ってるんですね。ターザンおじさんの“奇跡の水”を必死の想いで汲んできたハニがきっかけとはなってますが、ウクがハンビョルに命を授けたかのような、物語のクライマックスです。
 実話が元になっていて、原作はキム・ヘジョンが息子の闘病を綴ったエッセイ『悲しみが希望に』。本作の脚本家のキム・ウンジョンは彼女の妹なんだそうです。甥の物語をシナリオにしたわけですね。子どもらしいファンタジーを織り交ぜ、悲しいだけではない、明るさを感じさせる良作でした。

2018年6月28日

赤ちゃんと僕

高校生のジュンス(チャン・グンソク)は毎日のようにトラブルを起こしている問題児。あまりに手を焼いた両親は10万ウォンだけを残して姿を消した。そんなジュンスのもとに、ウラムという赤ん坊(ムン・メイスン)が現れる。ジュンスの子だと手紙が添えられていて、仕方なく面倒をみることに。クラスメイトになったビョル(キム・ビョル)に協力してもらいながらウラムの世話をするが……。

 日本の同名漫画とは関係ないんですね。
 赤ちゃんは本当にジュンスの子なのか?というのが最大の気になるところ。彼の前に現れるのが子だくさんな家のビョルということで、それが伏線なのかと思うのですが、真相は意外な方向から明らかになります。これはこれでアリですね。かわいい赤ちゃんの声を当ててるのが芸人のパク・ミョンスというのが、やややりすぎ感はあるものの、ウケます。
 ソン・ハユン(この当時は改名前のキム・ビョル。役名も同じ)がかわいい。もっと掘り下げてほしいキャラクターでした。

2018年6月27日

角砂糖

済洲島の牧場で生まれ育ったシウン(キム・ユジョン→イム・スジョン)は馬が大好き。生まれてすぐに母を失った子馬のチョンドゥンに愛情を注ぐが、ある日、チョンドゥンは人手に渡ってしまった。それから2年。シウンは念願だった騎手になるが、レースでは八百長を強いられ、馬を大事にしない調教師に失望し、辞めてしまう。ところが、思いがけずチョンドゥンと再会。ユン調教師(ユ・オソン)と理解ある馬主のノ会長(ペク・イルソプ)のおかげで復帰したシウンは、チョンドゥンとともに勝利を目指すが……。

 動物には泣かされてしまうものですね。
 馬の名前の「チョンドゥン」は「雷」という意味。천둥で、漢字だと「天動」なんですね。韓国語の雷には3種類あって、천둥は音のするもの。번개は光るもの、つまりは稲妻・稲光などを指すそうです。そして「雷が落ちる」といったときの「落雷」を指す場合は벼락。ややこしい……。
 劇中に流れるのはチョ・ドンジン(조동진/1947-2017)の「제비꽃(すみれ)」で、1985年の3集に収録されているヒット曲。エンディングではイム・スジョンが歌ってます。
 幼い頃のシウン役を演じるのは当時まだ6歳のキム・ユジョンでした。かわいい。