餅の映画かと思ったら違うんですね。餅(トック)ではなく、登場人物の名前でした。劇中でほんの数回しかフルネームは出てこず、語頭では濁らないためにそう表記したのでしょうが(NHKでの「冬のソナタ」のカン・ジュンサンとチュンサンのように)、誤解を避けるためにも「ドック」のほうがよかったんじゃないでしょうか。
ベタな物語といえばベタなのですが、もう、これは涙なしには観られません。特に後半は嗚咽する声が漏れないか心配になるほどでした。
ノーギャラで出演を買って出たらしいイ・スンジェはいわずもがな、ドック役のチョン・ジフン(「トッケビ」に出てた子ですね)の熱演が涙を誘います。妹のドッキ役のパク・ジユンちゃんはたどたどしいな……と思ったら、愛着障害で5歳だけど言葉は3歳児並みという設定なのでした。絶妙です。喧嘩はしても仲直りする少年同士、そして、おそらくハクス(イ・スンジェ)とは長年の幼なじみなのであろうチョン女史(ソン・ビョンスク)と村長(チャン・グァン)という大人の関係性にも微笑ましいものがありました。いわゆる悪人が出てこないところが美点でしょう。冷たい現実を突きつけるのも映画かもしれませんが、希望を感じさせてくれるのも映画ですから。駆けだす兄妹のラストショット、最高です。
それと、母親がインドネシア人という設定で、多文化映画という側面もあるんですね。女性監督パン・スインのデビュー作ですが、草稿から8年かかっているそうです。大学時代に東南アジア出身の友人がいて、多文化家庭について映画にしたかったとのこと。