2016年4月23日

背徳の王宮

朝鮮王朝10代王のイ・ユン=燕山君(キム・ガンウ)は生母の廃妃尹氏が謀殺されたと知って激怒。先王の側室を手はじめに次々と粛清する。実は王の側近であるイム・スンジェ(チュ・ジフン)とイム・サホン(チョン・ホジン)の親子による計略だった。「千年に一度の姦臣」とされるふたりは、色欲に溺れる燕山君に取り入り、権力をほしいままにしている。さらに王の機嫌をとろうと採紅使に任命されたスンジェは、国中から美女を集め、王に献上するため官能の秘技を仕込んでいく。そのなかには屠殺を生業とする白丁のダニ(イム・ジヨン)もいた。父(キ・ジュボン)の借金を返すため、チョ大監(キム・ジョング)の娘になりすましたのだ。一方、燕山君の後宮チャン・ノクス(チャ・ジヨン)は判府事ユ・ジャグァン(ソン・ヨンチャン)とともに権力を取り戻そうと画策。野心に満ちた芸妓のソルジュンメ(イ・ユヨン)を送り込む。ふたりは王の寵愛を得ようと火花を散らすが、ダニには真の目的があった。そのことにスンジェも気づくのだが……。

 韓国では19禁で公開されながらも110万人を突破。翌日で上映終了だったので、あわててシネマート新宿の朝イチの回を観たのですが、小さいほうのスクリーンではあるものの半分くらい埋まってました。それも大半が女性。やはりチュ・ジフン人気でしょうか。かなりのエロ&グロなのに……。
 ダニVSソルジュンメの直接対決は、これまでの韓国映画で目にしたことのない淫靡さで、人によってはドン引きでしょう。性技を磨くための特訓の数々は笑ってしまうほど。膣が王に合うサイズか張形で確かめる場面なんて爆笑してしまいそう。その一方、燕山君が200人も次々と粛清していった「甲子士禍」の描写は血生臭く、かなりエグいものです。ミン・ギュドン監督自身も「やりすぎだったかなと思うときもある(笑)」と語ってるようで。
 群舞を繰り広げる水上宴会の壮麗な美術や、大胆すぎる思いきった描写もですが、やはりそれぞれの役者が見せる迫力の演技が見どころでしょう。なんといっても燕山君役のキム・ガンウが圧巻。意外にも時代劇は初めてですが、狂気ばかりでなく、幻影に怯え、孤独を抱える王の哀しみを体現してます。チュ・ジフンも熱のこもった演技を見せてくれます。
 そして、もっとも驚かされるのが女優陣。よくもまぁそこまで……と思わずにいられません。ダニ役のイム・ジヨンももちろんですが、ソルジュンメ役のイ・ユヨンがまさに体当たりの熱演。すでに『アトリエの春、昼下がりの裸婦』でいくつもの新人賞を受賞してますが、本作では第36回青龍映画賞の新人女優賞に輝きました。
 パンソリ調のナレーションで物語が進むところもユニーク。このナレーションは妖婦チャン・ノクス役のチャ・ジヨンによるものだそうです。コメディと呼びたくなるほど滑稽なところもあれば、思わず目を背けたくなる残忍な描写もあり、いろんな意味で衝撃的な時代劇。とても万人にオススメできるものではありませんが、エロ描写にアレルギーがなければ一見の価値はあるのではないでしょうか。

2016年4月11日

両班を返せ!


 父(キム・ヨンゴン)が領議政のホヨン(パク・キウン)は酒と女遊びにうつつを抜かす放蕩息子。下男のグィナム(ソ・ドンウォン)とは幼い頃からのつきあいだが、“ほくろ”と呼んで蔑んでいる。ある日、グィナムは借金で追いつめられた妓生のウォリャン(イエル)を救うため、ホヨンを眠らせて奴婢として売り飛ばしてしまう。カン進士(ヨム・ドンホン)が権力をふるう島で目覚めたホヨンは、自分が両班であると証明することもできず、奴婢としての生活を強いられるが……。

 期待以上! 主人公のホヨンが身分を取り戻すだけじゃなく、もうひとり、身分を取り戻す両班がいるんですね。これは意外な展開でした(実はちゃんと伏線を張ってあるんですが)。そして、最後のピバムパプを食べるシーンも秀逸。島では奴婢たちが食べてるのを「そんなもの食えるか」と突っぱねたホヨンが「実は食べてみたかった」というだけでなく、ごはんとおかずを両班と賤民になぞらえるのでした。「いつか身分もこうしてごちゃまぜになったらよいな」という台詞になります。さらに幼い頃のホヨンとグィナムがひとつの器から食べる姿で終わるという。
 プヨン役の若手女優は「ヨジ」とクレジットされてましたが、現在はハン・ジュヒョンという芸名のようです。ハン・ガインにそっくり! ほとんど記憶に残ってませんが、『1942 奇談』で死体の美少女あおい役だったんですね。そういえば「モダン・ファーマー」では不法滞在者のファラン役でした。

ドラマフェスティバル「両班を返せ!」

原題 상놈 탈출기(奴婢脱出記)
2013年10月31日放送/1話完結/MBC
KNTVにて2014年4月11日に日本初放送

脚本 リュ・ムンサン(「ギターとショートパンツ」)
演出 オ・ヒョンジョン(「メディカル・トップチーム」)

パク・キウン……イ・ホヨン 領議政の息子
ソ・ドンウォン……“ほくろ”グィナム ホヨンの下男
キム・ヨンゴン……イ・テウォン 領議政、ホヨンの父
イエル……ウォリャン 妓生
キム・ヒョンボム……奴婢斡旋業者
ヨジ(=ハン・ジュヒョン)……プヨン
キム・ドンソク……使道、プヨンの父
リュ・ヘリン……カンナン プヨンの下女
ヨム・ドンホン……カン進士 島の名士
チョ・ドクチェ……カン進士の執事
イム・チウ……カン進士の用心棒
チョ・ウジン……パルボク カン進士の奴婢
チョ・ヒョンド……チルボク パルボクの息子
チョン・イルボム……カン進士の奴婢
チョン・ホンテ……科挙の試験官
イ・グァンヨン……渡し船の船頭
ユン・イェソン……商人
チャン・ムンギュ……町人
ミン・ビョンエ……町人
イ・ドゥソク……護衛武士?
ウ・ソルビン……幼いホヨン?
ソン・ウビン……幼いグィナム?

2016年3月29日

そんな愛


 無期懲役で服役していたジヌク(ペ・スビン)は、ある日、大腸癌で余命わずかであることを宣告される。そして出所。社会奉仕活動として訪ねてきては次第に心を開くようになっていたヨンス(イ・ユンジ)を訪ねるが……。

 録画したままだった短編ドラマを消化中。
 そんなタイミングよく死ねないだろ!と無粋なツッコミを入れたくなりますが、ペ・スビンはうまいなぁと思います。特に思いつめた表情とか。
 DV夫役のチェ・ミンチョルは、いま視聴中の「甘く殺伐としたファミリー」でヤクザの部下役。こういうチンピラっぽい役柄がぴったりですね。

ドラマスペシャル「そんな愛」

原題 그런 사랑 (そんな愛)
2014年4月13日放送/1話完結/KBS
KBS WORLDにて2014年7月8日に日本初放送

脚本 イ・ジュヨン(「ガラスの絆創膏」)
演出 チャ・ヨンフン(「サメ~愛の黙示録~」)

ペ・スビン……ホ・ジヌク
イ・ユンジ……チ・ヨンス
チェ・ミンチョル……ジョンホ ヨンスの夫
チョン・ギュス……キム課長 刑務所の看守
キム・テス……ジヌクと同房の受刑者
イ・ウシン(=イ・ビョンシク)……牧師
チェ・ミングム……民宿の女将

2016年3月27日

特命、彼女を守れ!


 高校3年生のジュンシク(チェ・ウシク)は受験勉強そっちのけでドラマ「捜査班長」に夢中になっている。そんなある日、ジョイ・ウォン似のバスの車掌(キム・ボルム)に一目惚れ。彼女が会社で横領の容疑をかけられたと知り、ジュンシクは真犯人を捕まえようと奮闘するが……。

 肩透かしを喰らった感じ! ジュンシクが好きになった相手が実は父親の愛人、もしくは隠し子だった(つまり姉弟だった!)というオチを想像してたのに、まったくそんな話じゃありませんでした。ジュンシクの着ていた服で誤解して抱きついたとか、父親を見かけたと思った直後、彼女は待ち合わせの相手と会えなかったとか、みんな伏線だと思ってたのに……。父親役にチョン・ノミンまで出しておいて、ほとんどストーリーにからんできませんでした。「彼の学費のために」というのも、出稼ぎに行っていたはずの父親が息子の進学費用を工面するためなのかと深読みしてたんですが。
 そうしたひねりがないのなら、とりたてて語ることもありません……。ウブな少年の役にチェ・ウシクがぴったりで、笑えるシーンはたくさんありましたけど。
 ちなみに、原題のサブタイトルは「ワン・ジョヒョンを守れ」なのですが、このワン・ジョヒョン(王祖賢)というのはジョイ・ウォンの韓国名。彼女がジョイ・ウォンに似ているということで「ジョイ」と呼んでます。また、原題の「捜査副班長」は、もちろん大人気だった刑事ドラマ「捜査班長」をもじってるわけですが、主人公の姓とかけてもいるのでしょう、「捜査プ班長」とも読めます。時代設定は1989年。カセットテープや映画のポスターといった小道具にもそんな時代が反映されてました。
 ハン・ボルムは最近はキム・ボルムと名乗ってるんでしょうか。ファン・グムビョルは2006年に改名したファン・ヒョウンという芸名から2013年にさらに改名したようです。

ドラマフェスティバル「特命、彼女を守れ!」

原題 수사부반장 - 왕조현을 지켜라!(捜査副班長~ジョイ・ウォンを守れ!)
2013年11月14日放送/1話完結/MBC
KNTVにて2014年4月25日に日本初放送

脚本 イ・ヒョンジュ(「深夜病院~傷だらけの復讐~」)
演出 クォン・ソンチャン(「ホジュン~伝説の心医」)

チェ・ウシク……プ・ジュンシク 高校3年生
ハン・ボルム……“ジョイ・ウォン”ワン・ユミ バスの車掌
キム・ヒジョン……ジュンシクの母
チョン・ノミン……ジュンシクの父
チョン・マンシク……キム係長 ナムチョル旅客の社員
カン・テオ(5urprise)……ナム・ナムチョル ジュンシクの友人
ファン・グムビョル……ヨンジャ 車掌仲間
チョン・スイン……車掌仲間
チョン・ヒナ……車掌仲間
イ・ドゥギョン……キム係長の借金取り
ファン・チョルスン……スパルタ塾の講師

2016年3月22日

それでも青い日に【あらすじ】091-最終話

【091】ウナは喧嘩しただけと取り繕い、ドッキはビョンジュンに説得を頼む。イノはヨンテクにビーナス化粧品への入社を勧められるが、ヨンヒに気を遣わせると辞退。一方、ミョンジュが訪問販売員に応募する。ビョンジュンが裏帳簿を盗んだが、イノが産業スパイとして告発される。

【092】イノはウナと逃走するものの信用できない。ビョンジンは裏帳簿を検察に渡すとドッキを脅し、告訴の取り下げを要求。ビョンジンを消そうとしたドッキはマンスに止められるが、サンカルに拉致を指示した。ヨンテクに土下座をしたビョンジンは逃走中にサンカルに捕まって…。

【093】ビョンジンは連れ去られた。必死に捜すヨンテクとイノ。ウナは何も知らない。マンスはサンカルに吐かせ、泣きながらドッキを止める。ヨンヒがビョンジンを解放するよう詰め寄ると、ドッキは会社を辞めろと。ウナはイノに信じてもらうため母はミョンジュなのだと明かす…。

【094】イノはミンジャにヨンヒがドッキの娘と確認するが、ウナの復讐心は信じられない。一方、ヨンテクが裏帳簿を検察に渡すと脅し、ドッキは探りにやって来る。イノはウナに父が死んだと聞かされて涙を流し、ある提案を受け入れた。差しだされた婚姻届をドッキは怒って破る…。

【095】追い出されたイノは実家へ。翌朝、会社の机はなくなっていた。ヨンヒはイノとウナの結婚を聞き、イノが復讐のために自滅することを心配する。一方、ヒャンスクが妊娠し、マンスは大よろこび。ウナは妊娠したふりを思いつくが、頭を抱えるドッキは離婚して堕ろせと告げる。

2016年3月21日

メモリーズ 追憶の剣

武芸に秀でたホンイ(キム・ゴウン)は、将軍ユベク(イ・ビョンホン)の主催する武術大会でユル(ジュノ)と互角に渡りあい、ユベクの関心を引く。その剣さばきがかつての同志、ソルラン(チョン・ドヨン)にそっくりだったのだ。
 18年前――ユベクと名を変える前のドッキは、ソルラン、プンチョン(ペ・スビン)とともに“風塵三侠”と呼ばれ、世を変えるべく決起。ところが、土壇場でドッキが裏切ったため、プンチョンは命を落とし、ソルランは姿を消した。
 実はホンイは、ウォルソと名を変えたソルランに育てられ、父プンチョンを殺した者への復讐を胸に抱いているのだった。

 新宿バルト9にて鑑賞。
 とても庶民が着るとは思えない目の覚めるようなグリーンの服、ひまわりを飛び越えるワイヤーアクション……と、冒頭からファンタジーであることを宣言。なので、細かいことをいわず娯楽として楽しむべき武侠アクションなのであります。韓国での評価は低かったそうですが、それは仕方ないでしょうか。本場・中国の武侠アクションと比べて、とりたてて斬新なところがあるわけではなく……。でもまぁ、楽しめました。

2016年3月19日

ビューティー・インサイド

目覚めると外見が変わってしまうウジンは、唯一の友人であるサンベク(イ・ドンフィ)とオーダーメイドの家具ブランドを起ち上げ、他人と深く関わることなく過ごしている。ところがある日、インテリアショップで働くイス(ハン・ヒョジュ)に恋をした。思いきってデートに誘い、同じ顔を保つため3日も寝ずに彼女と会う。イスもウジンに惹かれていくが、眠ってしまったウジンは再び外見が変わり、二度とイスの前に姿を見せることができなくなってしまう……。

 TOHOシネマズ新宿にて鑑賞。
 日本版チラシのコピーにあるとおり「見た目と中身、本当に大切なのは…」というのがすべて。それだけ聞くとあまりに陳腐ですが、主人公が123人1役という奇想天外な設定で、前代未聞のファンタジックなラブストーリーになってます。
 123人1役というのは、主人公のキム・ウジンが、寝て目が覚めると性別や年齢のまったく異なる人物になるからです。まったくもなってありえないわけですが、劇中では(ややネタバレですけど)遺伝性の病気ということになっていて、母親もすんなりと受け入れます。パク・ソジュンやユ・ヨンソク、イ・ヒョヌといった若手の人気俳優から、キム・サンホ、ペ・ソンウのような個性派、はたまたコ・アソンといった女優まで、豪華なキャストが次々と演じまていきます。
 いちばんおもしろかったのが、上野樹里のパート。日本人になってしまったので、話す言葉は日本語です。イスは日本語がなので(店で日本人客への応対もこなしてました)つい日本語で返してしまうのですが、ウジンのほうは日本語を理解できるわけではありません。韓国語で考えてはいるのだけれど口から出てくるのは日本語になってしまうということですね。なんか、リアル。荒唐無稽だからこその細やかな設定が効いてます。
 また、友人のサンベクが本当にウジンなのか確認するため、ウジンでなければ答えられないであろう質問をいろいろとしますが、決定的になるのが「俺の好きな日本の女優は?」。「あおい……」と言いかけるので、普通は蒼井優を思い浮かべるわけですが、答えは「蒼井そら」。これでサンベクは確信します。おばちゃんがAV女優を知ってるわけがない、と。こんなところもうまいですね。ウジンが美女(扮するのはパク・シネ)になったとき、サンベクが「1回だけやらせてくれ」と懇願するところにも共感します(笑)。
 監督のクレジットは「ペク」。本名はペク・チョンヨルというようですが、記号的というか、匿名的な名前が流行なんでしょうか。『ネコのお葬式』の原作者は「ホン作家」でした。CMやミュージックビデオで活躍するディレクターだそうで、これだけのキャストを集められるのもそうした経歴があってこそなのでしょう。2013年のカンヌ国際広告祭でグランプリを受賞したインテル&東芝によるソーシャルフィルム『The Beauty Inside』が原案だそうです(日本からもdynabookのウェブサイト http://dynabook.com/pc/film/ から参加可能なキャンペーンでしたが、すでに動画は閲覧できません)。
 127分とやや長めですが、単純計算すると1分ごとに主人公が変わるわけで(実際はエキストラのような扱いで一瞬しか出ないケースもありますが)めまぐるしく変化する場面に見入ってしまい、あっという間でした。ハン・ヒョジュの透き通るような美しさもあって、さわやかな恋愛模様。ユニークすぎる設定ですが、ある意味、正統派のラブストーリーといえるのではないでしょうか。