2009年11月25日

執行者

 12年ぶりに死刑執行をすることになった刑務官たちの苦悩を描いた作品です。
 新任刑務官のジェギョン役を演じるのは、すっかり俳優として定着した元g.o.dのユン・ゲサン。恋人ウンジュ(チャ・スヨン)といるときはごく普通の青年ですが、次第に心の平静を失っていきます。が、意外と目立たないというか、やっぱりチョ・ジェヒョンやパク・イヌァンに目がいってしまいます。
 チョ・ジェヒョンは受刑者たちを暴力でねじ伏せることも平気な先輩刑務官のジョンホ役。言葉少なでもその眼光がすべてを物語っています。さすが。パク・イヌァンは30年のキャリアをもつベテラン刑務官のキム主任役。虫も殺せない温厚な人物に更正したソンファン(キム・ジェゴン)と親しくしていて、その彼が死刑を執行される前夜の怯えた表情が秀逸でした。
 その死刑囚ソンファン役のキム・ジェゴンもイイ顔をしてます。死刑が執行されるのだと思い当たった瞬間の表情の変化、死刑執行のための袋をかぶせられるときにキム主任に向けていた笑顔、泣かせます。『クワイエット・ファミリー』で里長役、『極楽島殺人事件』で製薬会社の社長役、『偉大なる系譜』でも囚人役を演じていた方ですね。舞台での活動が中心のようです。もうひとりの死刑囚、死刑執行の世論を作るきっかけとなった連続殺人犯チャン・ヨンドゥ役のチョ・ソンハも迫力がありました。ドラマ出演は少ないようですが、「ファン・ジニ」のオムス役だったんですね。
 その他、刑務所の課長役に「不良家族」でナリムの唯一の味方だったピョン次長役のユ・ヒョングァン、チャン矯正官役に『死んでもハッピーエンド』の大学教授など脇役でよく目にするチョン・ギョンホ。チョン・ミソンはヨンドゥの被害者の姉として面会に訪れるユンソン役で特別出演しています。
 監督のチェ・ジノ(今回の上映では「チェ・ジンホ」と表記されてますが)はこれが長編デビュー作。『情事』などで助監督をつとめてきたそうです。短編映画『同窓会』(99)はクレルモン・フェラン国際短編映画祭コンペティション部門に出品されたとか。ソン・ガンホ出演ということでこの作品も観てみたいものです。
 11月22日の上映後のティーチインでチェ・ジノ監督からプリントの色が暗すぎたと謝罪の言葉があったそうですが、たしかに。暗闇に溶け込む表情とか多かったので「テレビなんかだったらまったく判別できないよなぁ」と思いながら観ていたのでした。
 ところで、チェ・ジノ監督は日本の漫画『モリのアサガオ』(郷田マモラ/双葉社/アクション・コミックス全7巻/2004~2007年)を読んでいるでしょうか。新任刑務官が死刑執行に携わる葛藤を描いた、ほぼ同じテーマの作品です。こちらがかなり読みごたえがあったので、もちろん『執行者』もよかったのですが、先行する同内容の作品があると分が悪いというか......印象は薄くならざるをえません。

執行者執行者 집행자
韓国/2009年/96分/2009年11月5日公開(韓国)
http://www.hangman.co.kr/(韓国)
韓国映画ショーケース2009にて上映 http://filmex.net/kfs/2009/

チョ・ジェヒョン......ペ・ジョンホ 矯正官
ユン・ゲサン......オ・ジェギョン 矯正官
パク・イヌァン......キム主任
ユ・ヒョングァン......課長
チョン・ギョンホ......チャン矯正官
イ・チャンジュ......ヤン矯正官
キム・ジェゴン......受刑者2367号 イ・ソンファン
チョ・ソンハ......受刑者3527号 連続殺人犯チャン・ヨンドゥ
イ・サンホン......受刑者
チャ・スヨン......ウンジュ ジェギョンの恋人
チョン・ミソン......ユンソン 3527号の被害者の姉 ※特別出演

【監督】チェ・ジノ
【製作】チョ・ソンムク
【脚本】キム・ヨンオク
【撮影】キム・テソン
【照明】ユン・ギョンヒョン
【音楽】ファン・テギュ
【美術】イ・インオク
【編集】キム・ソンミン
【配給】スポンジ・イーエヌティー



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