2018年3月2日

SLOW


 野球部に所属する高校生のジウォン(クァク・ドンヨン)はプロ野球選手になるため必死だ。しかし、エースのヒミン(キ・ドフン)がノーヒットノーランを達成しそうな試合でエラーをしたうえに目に打球を受けてしまう。スランプに陥ったある日、ジウォンが校舎裏でひとり練習していると、同級生のジョンヨン(チョン・スジ)が「ここは私の場所」とチェロの練習をはじめた。ジョンヨンのチェロの旋律を耳にするとボールがゆっくり見えたジウォンは、ジョンヨンに試合を観に来てほしいと頼むが……。

 なんともつかみどころのない、陰鬱なトーンの作品。演出がKBSドラマスペシャル2016で「遥か遠い踊り」を撮ってるイム・セジュンと知って、なるほど、と思いました。前作同様にシュールで、もっとも実験的な作風ですね。主人公はなかなか台詞を発しないし、その行動はいちいちが謎。どう受け止めたらいいのやら……。

2018年3月1日

私たちが眠れない理由


 演劇界で働くものの夢破れて実家に帰ってきたユジョン(イム・セミ)は不眠症で寝つけない夜を送っている。そんなユジョンの部屋の前で深夜に縄跳びをする男に憤慨。それはコンビニでアルバイトをしながらウェブ漫画家を目指すヨンジェ(イム・ジギュ)だった。眠れない2人は徐々に距離を縮めていくが……。

 夢をあきらめた女性と夢を追い続ける男性、思うように生きられない2人のラブストーリー。地味ではありますが、肩を寄せあうラストシーンが微笑ましく、じんわりといい作品でした。エキセントリックな役どころの多いイム・セミですが、コミカルでありつつ、本作では地に足の着いた等身大の女性といった感じ。相手役のイム・ジギュも、主演映画『愛のバトン』が大好きなんですが、これまたぴったりのキャスティングでした。
 ユジョンがマンションの警備員をしている父を訪ねて自分を“ストロー”になぞらえる場面も印象に残ります。イ・デヨン扮する父がまたいい人で、娘が男といるのを見かけて翌朝こっそり小遣いをくれたり、実は膝の手術を我慢していたり。職場に来てくれたユジョンに触れようとするものの、ゴミの分別をしていた手を引っ込める(そしてユジョンもそれに気づいてしまう)ところも。
 KBS脚本公募の2016年の当選作ということで新人作家なのだと思いますが、細やかな描写が秀逸。UFOキャッチャーをする場面の「生きてるかぎり終わることはない」というヨンジェの台詞や、フラフープ、固定電話といった小道具も効いていました。「カン・ドクスン愛情変遷史」も担当しているので、すでに注目の脚本家なのでしょうか。ペク・ソヨン、おぼえておきたいと思います。

ちなみに、音楽監督はケミで、挿入歌として使用されたのは3曲とも2016年の既発曲。どれも落ち着いた曲で、統一感がありました。

  • 문문(ムンムン)「비행운(飛行機雲)」
  • O.WHEN「오늘(今日)」
  • Daybreak「오늘 밤은 평화롭게(今夜は安らかに)」


2018年2月28日

悪い家族たち


 ある日、高校3年生のナナ(ホン・ソヨン)が退学しようとしていることが発覚。一方、父のジョングク(イ・ジュニョク)は組合に入ったことで異動を命じられ、母のミョンファ(シン・ウンギョン)は仕事に忙しく、兄のジホ(キム・ミングク)は大学を中退して仕事にも就いていない。それぞれに問題を抱える4人の家族。ジョングクとミョンファは家族を再生させようと決意するのだが……。

父親は組合活動にのめり込んでいて、母親は(知らずとはいえ)娘の担任教師を誘惑してしまって、兄は軍隊生活になじめず途中で除隊したようで今はニート……こんな家族、イヤですね(笑)。ふてくされ顔のナナも、恋人と家出しようとするものの、実は彼の目的はナナの貯金だったという。けっしてみんな特別に悪い人なわけではないのですが、どこか足りない家族。できちゃった結婚で、ミョンファが高2のときに結婚したという過去があるのでした。ジョングクの「親になることと大人になることは違う」という台詞はなかなか説得力があるんじゃないでしょうか。一度はバラバラになりつつも、なんとなく家族としてやっていけそうな結末。家族の成長をコミカルに描いた作品でした。それにしても「避妊しない父さんが悪かった」なんて謝るのは勘弁してほしいものです(笑)。

2018年2月27日

カン・ドクスン愛情変遷史


 1926年、夏。忠清道の山村に暮らすドクスン(キム・ソヘ)は親の決めた結婚相手のソクサム(オ・スンユン)を慕い続けていた。ところが、大学の休みで帰郷したソクサムには好きな女性がいて、「祖国の独立に身を捧げる」と別れを告げられる。あきらめきれないドクスンは、ソクサムの書いてくれた住所を握りしめて京城へ。そこで酒場を営むヒスン(キム・ヨジン)らと出会うが……。

 タイトルに「愛情変遷史」とあると、上京してきて婚約者に裏切られたことを知った主人公が新たな恋と出会う……といった展開を想像しますが、ぜんっぜん違うのでした。まさか独立運動の話だとは。しかし、悲しい展開はあるものの、字を覚えていく過程がうまくストーリーに沿っていたり、ドクスンの成長物語としてなかなかよくできた脚本でした。意外と出番の少なかったソクサム(「あの空に太陽が」でハンス役のオ・スンユン)が最後にいいところを見せたりも。「出会わせて、ジュオ」と同じ間違った小道具を使いまわしてるのは残念でしたけど。
 主演はI.O.I出身のキム・ソヘ。I.O.Iはオーディション番組「PRODUCE 101」から生まれた期間限定のアイドルグループで、もともと俳優志望だった彼女は2017年1月の解散後は女優として活動してます。地上波での主演はこれが初となりますが、溌剌としていて、好感度大。また、母女酒幕の“三人娘”もそれぞれ好演していて、なかでも最年少のグッキ役を演じたパク・ソヨンが印象的でした。同姓同名がたくさんいますが、「凍える華」や「運勢ロマンス」でヒロインの少女期を演じている2002年生まれの子役。いずれも今後が期待される女優といえるでしょう。
 ところで、ドクスンの両親役を演じたホン・ソンドク&ペク・ヒョンジュは「私の心は花の雨」でも夫婦で、主人公コンニム(ナ・ヘリョン)の養父母という役どころでした。たしかに、お似合いのカップルですね。

2018年2月26日

チョンマダムの最後の1週間


 7年前、チョンマダム(ラ・ミラン)はヤクザのテンバリ(パク・チョンハク)から逃げる途中で思いがけず大金を手に入れた。それからというもの、彼女は人目を避けてひっそりと暮らし、時効成立の日を待ちわびている。ところが、いよいよ残り1週間という日、ウンミという少女(シン・リナ)と出会う。人と交わることを徹底的に避けてきたチョンマダムだが、ウンミが親に虐待されていることを知って放っておけず……。

 KBS脚本公募の当選作だそうです。ラ・ミラン主演ということでも安心感がありますね。実際のところ、ラ・ミランは本作でKBS演技大賞の連作・単発ドラマ賞を受賞しました。
 カナダへの移住を夢見ながら隠遁生活を送ってきたチョンマダムは、なりゆきでウンミを匿うものの、誘拐犯として報道されたうえにテンバリからも追われ、一度はウンミを置き去りにしようとします。それでも放っておけないのは、かつて亡くした妹の姿が重なるからなのでした。肌身離さない旧札のエピソードなどが涙を誘います。若い頃のチョンマダムを演じたパク・セワンも出番は少ないものの好演でした。
 ところで、劇中に『冬の王国』と出てきますが、邦題が『アナと雪の女王』となったディズニー映画『Frozen』の韓国でのタイトル。そこは日本語字幕を『アナと雪の女王』にしないと伝わらないでしょう。「Let It Go」が流れて「あぁ」と思うかもしれませんが。
 また、Stingの「Shape of My Heart」も流れますが、言わずと知れた映画『レオン』のラストシーンで流れる曲。さすらうチョンマダム&ウンミがレオン&マチルダのパロディになってるんですね。ウケました。エピローグで流れるのはユ・ジェハの「지난 날(過ぎた日)」です。
 晴れ晴れとした結末で、心のあたたまる良作。

2018年2月25日

一人で踊るワルツ


 大学で出会ったミンソン(ムン・ガヨン)とゴニ(ヨ・フェヒョン)は交際3000日を迎えたが、おたがい就職活動に明け暮れ、すれ違い気味の日々を送っている。切りつめた生活のなか会っても言い争うことが増え、別れたり、よりを戻したりを繰り返していた。やがて2人とも同じ会社の最終面接に残り……。

 就職難にあえぐ若者たち、ということなんでしょうけども、主人公にまったく共感できず……。自分の就職のためなら恋人さえ蹴落とそうとするところが、「こんな自分がイヤ」という台詞はあるものの、あまりに身勝手すぎて閉口してしまいます。社員登用の面接では「彼氏とセックスしてるんだろ?」「必要でしたら堕ろします」なんてやりとりがあったり、ありえなすぎて思わず笑ってしまうほど。ブラックユーモアということなんでしょうか。そしてまたなんともやりきれない結末……。厳しい現実をシニカルに切り取った作品といえるのかもしれません。
 主演のムン・ガヨンは「Mimi」でヒロインのミミ役を演じた娘ですね。相手役となるゴニに扮したヨ・フェヒョンは本作と「ランジェリー少女時代」でKBS演技大賞の連作・単発ドラマ賞を受賞しています。

2018年2月24日

あなたは思ったより近くにいる


 古本屋を営むウジン(イ・サンヨプ)は、DJをしているポッドキャスト放送「夜間本屋」の常連リスナー、ソヨン(キム・ソウン)との結婚式を迎えるが、その日突然、ソヨンは消えた。ウジンには彼女のいなくなった理由がまったくわからない。そんな彼の前に、ひとりの女性(イム・ファヨン)が現れる。ウジンは彼女が意図的に近づいたのだと気づき、ソヨンの居場所を知っているはずだと問いつめるが……。

 突然いなくなった結婚相手と、入れ替わるようにして現れた女性、そして何やら知っていそうな写真家(クァク・ヒソン)の関係が徐々に明らかになっていくというサスペンス風味のラブストーリー。なるほどな展開で、4人ともハッピーエンドなところに好感がもてました。
 2PMのテギョンやキム・ウォネら特別出演が豪華。医師役でほんのちょっと出てるナムグン・ミンがイム・ファヨンに「どこかで見たような……」という顔をするんですが、2人は「キム課長とソ理事」で共演してるんですね。演出家が同じチェ・ユンソクなのでした。ちなみに主演のイ・サンヨプは前年のKBSドラマスペシャル「楽しい私の家」に続くチェ・ユンソク作品への起用になります。