2019年3月8日

こんなにも長い別れ

サンヒ(イム・ジュファン)はデビュー作『鳥たちはサマータイム』が50万部のヒットとなった小説家。ところが、出版社ピットルと1億ウォンで契約したものの、新作が書けないまま5年が経っていた。恋人で編集者のイナ(チャン・ヒジン)は3ヶ月以内に原稿をもらうようク代表(チョン・ジェソン)に命じられる。サンヒの才能を信じるイナは「作家は書くだけでいい」と励ますが、サンヒはまったく書けない。やがてサンヒはイナといても息苦しさを感じるようになり……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、6作め。
 スランプに陥った小説家のサンヒ(イム・ジュファン)と、その恋人でもある担当編集者のイナ(チャン・ヒジン)、2人の。これはだいたい男のほうが悪いですね(笑)。イナは「本を売るのは私の仕事だから、あなたはただ書くだけでいい」と励ましていて、その言い方にも厭味などなく、信じて支え続けているわけです。イナが新人賞作家の担当になったことで波風が立ちますが、これも完全にサンヒのやっかみ。社長に対しても逆ギレとしかいいようがありません。5年も最後まで書き上げたことがないなんて、そりゃあんたが悪いだろう、というしかないですよね。
 ところで、ラストシーンが気になりました【以下、ネタバレ注意】。1年後にイナがサンヒの新作を書店で手に取るのですが、読み終えて去っていきます。え、小説を1冊丸ごと立ち読みで済ませたの!? ひどい。編集者としてあるまじき行為じゃないですか(笑)。
 イナとサンヒの大学路デートで流れるのはユンナの「My Song and…」、エンディングに流れるのはLaura Pausini「Cuando Se Ama」でした。

2019年3月2日

金子文子と朴烈

1923年、東京。文子(チェ・ヒソ)は「犬ころ」という詩に心を奪われた。その詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈(イ・ジェフン)。共鳴した2人は同居誓約を結び、不逞社のメンバーとともに社会を変えるべく行動する。ところが9月1日、関東大震災が発生。自警団による朝鮮人虐殺が起こるが、その事実を隠蔽するため、水野内務大臣(キム・イヌ)は立松判事(キム・ジュナン)に朴を大逆罪で起訴するよう命じた。文子と朴は歴史的な裁判で法廷に立つことに……。

 平日の昼にもかかわらず、ほぼ満席。金子文子に興味をもって図書館で関連書籍を借りようとしましたが、どれもみな貸し出し中でした。予想以上の反響を呼んでいるようです。
 なんといっても文子役を演じたチェ・ヒソが最高。幼い頃に日本に住んでいたことはあるそうですが、ほとんど完璧な日本語で、日本語訛りの朝鮮語まで使いこなします。たくましく、それでいて悪戯っぽい笑顔を見せたり、たまらなくキュート。イ・ジェフンももちろんいいんですが、チェ・ヒソが魅力的に演じた文子が圧倒的に印象に残ります。原題は『朴烈』ですが、この邦題は正解ですね。
 それともうひとり、立松判事役のキム・ジュナンが素晴らしい。在日コリアンのイ・サンイル弁護士役を演じた『HERSTORY』で驚いたのですが、本作でも流暢な日本語を使ってます。でも日本で暮らした経験は3ヶ月ほどしかないとか。すごいのは言葉だけでなく、文子と朴に向きあいながら時に揺れていく姿が絶妙です。2018年にはドラマ「時間」でメインキャストを担いましたが、今後もますます期待したい俳優ですね。
 シリアスな物語ではありますが、2人の主人公にはユーモアがあり、ときどきクスッと笑える場面も。文子の「消え失せろ!」「静かにしろ!」といった啖呵は痛快です。司法大臣や警視総監があっさり辞職するとか、日本政府の面々は滑稽だったり。
 そして、単純に日本が悪というのではなく、日本人のなかにも心ある者がいたことははっきり描かれてますし、朴自身にも「日本政府は憎いが、日本の民衆にはむしろ親近感を覚える」という台詞がありました。今こそ観るべき映画。全国順次公開中ですが、さらに上映館を拡大してロングランを続けてほしいものです。

2019年2月27日

30だけど17です

高校生のウジン(ユン・チャニョン)はソリ(パク・シウン)に恋をした。ところが、勘違いから友人のスミを彼女の名前と思い込んでしまう。同じバスに乗り合わせたある日、ウジンはソリに告白しようとするが、スミが乗ってきてウジンは逃げるようにバスを降りてしまう。その直後、バスが事故に巻き込まれて横転。スミは命を落とした。それを知ったウジンは初恋の相手を死なせてしまったと罪悪感を抱え、心を閉ざしてしまう。
 13年後、昏睡状態だったソリ(シン・ヘソン)が意識を取り戻す。時の流れに戸惑いながらもかつて叔父夫婦と暮らしていた家を訪ねると、そこにはウジン(ヤン・セジョン)が甥のチャン(アン・ヒョソプ)と暮らしていた。ウジンとソリはおたがいに気づかぬまま再会したのだが……。

 派手さはないものの、しみじみと、いいドラマでした。
 心は17歳のままのソリ役にシン・ヘソンがぴったりです。心を閉ざしてきたウジン(ヤン・セジョン)もある意味で17歳のまま。初恋同士のピュアな2人が知らぬまま再会して繰り広げるラブストーリーですが、心の傷を癒し、トラウマを克服していく成長の物語でもあります。周辺人物も魅力的で、チャン(アン・ヒョソプ)も、ジェニファー(イェ・ジウォン)も、切なかったり痛ましい過去を抱えていたりしますが、みんな、いい人。それぞれの優しさに、何度、涙を流したことでしょう。さらに、すべて――ウジンとソリがたがいに気づくだけじゃなく、13年前の事故の真相などなど――が明らかになったとき、そうだったのか~!と感動が押し寄せてきます。
 コミカルな場面もあり、ミステリアスな要素もあり、笑ったり泣いたり。2018年のベスト3には入れたい良作です。

2019年2月26日

ラブリー・ライバル

ソンリム小学校で5年2組を受け持つミオク(ヨム・ジョンア)は、新学期早々から遅刻し、それでいて生徒の遅刻は許さない教師。その一方、大人びた美少女のミナム(イ・セヨン)は堂々と遅刻してくる。そんな田舎の小学校に、独身の美術教師サンチュン(イ・ジフン)が赴任。ミオクは猛烈にアプローチするが、ミナムもまたサンチュンにつきまとい……。

 14年も前の作品を再見しましたが、なかなか楽しめました。先生と生徒がライバルという構図のラブコメディとして進みますが、いつの間にかクォン先生のことはどうでもよくなっていきますね。ミナムの本当の気持ちが明かされるところは涙を誘われます。
 ラストシーンに、監督の前作『ぼくらの落第先生』からチャ・スンウォンが役名そのままに特別出演。若い。

2019年2月25日

ミス・キムのミステリー

 ビンナグループのスポーツ事業部に、ミス・キムことミギョン(キム・ダソム)が派遣社員としてやって来た。チェ・チーム長(キム・ジヌ)は、社内に産業スパイがいるとして、インターンのギジュン(クォン・ヒョクス)にミギョンの監視を命じる。そんななか新製品を開発したウネ(イ・チェウン)が何者かに襲われた。ギジュンはますますミギョンを疑うが……。


 2018年の「KBSドラマスペシャル」、5作め。
 元SISTARのキム・ダソムが主演で、相手役をコメディアンのクォン・ヒョクスが演じてます。タイトルどおりのミステリアスな展開。ですが、ギジュン(クォン・ヒョクス)の「孤独に慣れると感情が鈍くなるんだ」という言葉がミギョン(キム・ダソム)の心を揺さぶったり、ラブストーリーの側面もあります。

2019年2月24日

ピアニスト

 インサ(ハン・ジヘ)は小学校でピアノを教えているが、非常勤講師で、再契約の話はまだない。恋人のジョンウ(チェ・フィリップ)は親のもってきた見合い話を断れず、インサにただ「待ってくれ」と言う。別れを告げて車を降りたインサだが、車内にバッグを忘れたことに気づく。しかし、ジョンウはそのまま走り去ってしまった。茫然とするインサ。そこに通りかかったのはピアノ修理工のゼロ(チェ・ミノ)だった。やがて2人は距離を縮めていくが……。


 8年以上も前の作品ですが、主演の2人は変わりませんねー。やはりそれがスターというものなのでしょうか。SHINeeのミノはこれがドラマ初出演。初々しいですね。切ない物語ですが、新たなはじまりを予感させるラストシーンに好感がもてます。

2019年2月22日

あまりにも真昼の恋愛

大手企業に勤めるピリョン(コ・ジュン)が平社員に降格させられた。そのとき頭に浮かんだのは16年前の出来事で、ピリョンの足はかつて通っていた鍾路のハンバーガーショップに向かう。演劇のポスターに見覚えのあるタイトルを目にして劇場に足を運ぶと、舞台に立っていたのはヤンヒ(チェ・ガンヒ)。1999年、ピリョン(チョン・ソンウ)は後輩のヤンヒ(パク・セワン)から唐突な愛の告白を受けたのだった……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」でいちばん楽しみにしていたのが、この作品でした。
 原作は第7回若い作家大賞を受賞したキム・グミの同名小説。表題作を含む短編集『あまりにも真昼の恋愛』は晶文社の「韓国文学のオクリモノ」シリーズから刊行されてます(訳:すんみ)。ちなみに、ドラマではハンバーガーショップがマクドナルドではない店になっていて、フィッシュバーガー(マクドナルドならフィレオフィッシュですけど)がメニューからなくなっているといった件はなくなってました。ピリョンがQueenを聴いて泣く場面もありません。
 小説の映像化というのはひとつの解釈なので、いろいろあっていいのでしょう。「忠実」というのも捉え方によると思います。が、しかし、出だしからずいぶん感触が違って、あまり入り込めなかったのが正直なところです。決定的に違うのは、原作が一貫してピリョンの視点で描かれている点。小説ではヤンヒが感情を吐き出したりすることはありません。注意深く見ると――時系列が交錯するのでわかりにくいですが――終盤のピリョンとヤンヒの会話などはすべてピリョンの想像(あるいは、ありえた可能性)なので、けっして改変してるというわけではないのですが、全体的に受け取る印象がだいぶ違うなぁと思ったのでした。ポスターなどのヴィジュアルイメージはすべてヤンヒ(チェ・ガンヒ)ですし。
 ところで、チェ・ガンヒ出演が報じられたときは16年前も本人が演じるから彼女なのだと思ったのですが、違いましたね。1999年のヤンヒ役はパク・セワンでした。
 劇中にはReneé Dominiqueの「La Vie En Rose」や「What A Wonderful World」などが流れました。