2009年10月20日

牛の鈴音

 たった7館で封切られた作品が、口コミで瞬く間に話題となり、大手メジャー作品を抑えて2週連続興行成績1位を獲得。300万人を動員したドキュメンタリ映画です。韓国人の15人にひとりが観た計算になりますね。テレビ番組の演出家として活躍してきたイ・チュンニョルが3年あまりの月日をかけて完成させたデビュー作です。
 79歳になるおじいさん(チェ・ウォンギュン)は一頭の牛と30年もいっしょに働いてきました。牛の寿命は15年ほどといわれるのに、この牛はもう40歳。誰もが耕耘機を使うけれど、おじいさんは牛と働き、牛に与えるエサに飼料は使いません。だから牛が食べる草のために畑に農薬を撒くこともしません。60年も連れ添ってきたおばあさん(イ・サムスン)はそんな頑固な夫に不平ばかりです。「ラジオといっしょでポンコツだ」とか、笑っちゃうほど文句ばっかり。そんなある日、かかつりつけの獣医が「この牛は冬を越すことはできないだろう」と告げるのです......。
 この作品にはドキュメンタリにありがちなナレーションがいっさいありません。音楽もごく控えめ。場面転換の際にピアノの旋律が流れる程度です。押しつけがましさがまったくないのです。眠くなってしまいそうなほど、実に淡々としてます。
 日本でいえば『踊る大捜査線THE MOVIE』に匹敵する大ヒットなわけで、韓国では「牛の鈴音シンドローム」といわれる社会現象にまでなったそうです。が、もちろん泣けりゃいいってもんじゃありませんが、むちゃくちゃ号泣する感じではありませんでした。覚悟して行ったんですけど......。でも、ところどころ、じわ~っと涙の流れてしまうシーンがありました。しみじみとした感動が味わえます。
 ちなみに日本版の題字は菅原文太。農業生産法人を設立するなど、農業人としても活動してるんだとか。


牛の鈴音 워낭소리
韓国/2008年/78分/HD→35mm
2009年1月15日公開(韓国)
2009年12月、シネマライズ、銀座シネパトス他
http://www.cine.co.jp/ushinosuzuoto/

【監督・脚本・編集】イ・チュンニョル
【製作】スタジオ・ヌリンボ
【プロデューサー】コ・ヨンジェ
【撮影】チ・ジェウ
【音楽】ホ・フン、ミン・ソユン
【配給】インディ・ストーリー

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