2009年10月4日

悲しい誘惑

悲しい誘惑 レンタル・ショップで偶然に見つけて思わず借りてしまった作品。まったく知りませんでした。チュ・ジンモとキム・ガプスの同性愛ドラマ......!? まぁ、実際は同性愛そのものを描くというよりも、現代に生きる人々の孤独を描いているといったほうが正しいでしょう。1999年に「世紀末特集劇」と題する特別番組として放送されたようです。タイトルバックや途中のスーパーでも「アンコール特集ドラマ」と出るのですが、いつ再放送されたのかは不明。それにしても日本盤にするときに元のテープを借りることはできなかったのでしょうか......。
 キム・ガプス&キム・ミスクのベッドでの息遣いからはじまるのには驚きです。しかも続けてキム・ミスクのトイレ・シーンって......。

悲しい誘惑 チョン室長(キム・ガプス)は創業時から会社にすべてを捧げてきたけれど、企画の失敗で会社に損失を与えてしまい、今では社長(チョン・ウク)の信頼も薄れつつあります。家に帰っても20年も連れ添った妻のチョンヘ(キム・ミスク)とはほとんど会話はなく、1ヶ月ぶりのセックスにもチョンヘは「何も感じなかった。彼も同じだろう」と冷めきった関係です......。そんなときに現れたのが、ニューヨーク支社からやって来たシン・ジュニョン(チュ・ジンモ)。やり手なのは認めるものの、会社を支えてきた古株への敬意がないと、チョン室長はジュニョンが気に入りません。
 ジュニョンには唯一の肉親である兄がいますが、会社から一方的に解雇されて事業をはじめたものの失敗し、失踪中。どうもジュニョクはチョン室長に兄の姿を重ねてる様子です。ついに辞表を書いたチョン室長に、ジュニョクは「社長好みの企画だと思います」と企画書を渡すのでした。その企画でチョン室長は社長の信頼を回復することに成功。その後、2人ははじめて酒を酌み交わすのですが、チョン室長は「これくらいの屈辱は生きるためなら」と本音を漏らします。やっぱりジュニョクは兄にもそうあってほしいと願っているのでしょう。
 ところで、ジュニョクは同性愛者です。恋人がいましたが、見合い結婚をするためにジュニョンのもとを去っていきました。社内にはジュニョンがゲイであるという噂が広まっています。酔ったジュニョンを部屋まで送ったとき、チョン室長は上半身裸のジュニョンを見て戸惑う瞬間がありますが、この時点では思いとどまります。その後、2人で電車を乗り過ごして海辺の町で民宿に泊まることになりますが、チョン室長、ジュニョンの手を握るものの、やっぱり踏みとどまって外へ出ます。
 ここからの台詞がいいですねー。「なぜ同性愛者になったのか」と尋ねるチョン室長に、ジュニョンは「女だから奥さんを愛したのですか?」と問い返すのです。今まで2人と付き合ったジュニョン、男だから愛したのではなく「愛した人が男だったんです」と言います。そして奥さんとの仲が冷えきっていることを知るジュニョンはこう言うのです。
「男の愛し方ではなく、人の愛し方を知らないのでは?」
 やがてジュニョンのもとに兄が自殺したとの知らせが届きます。大粒の涙を流すジュニョン。チュ・ジンモってちょっと眠そうな顔をしてるときがありますが、このシーンではなかなかイイ顔を見せます。長回しのシーンにも耐えうる芝居をしっかりしてるんですね。デビューの翌年ですが、主役を任されるだけのことはあります。
 そして、いよいよチュ・ジンモ&キム・ガプスのキス・シーン!
 ジュニョンの部屋にやって来たチョン室長。「人が人を愛せなければ厳しい世の中を生きていけない」と言うジュニョンの頬に、こちらもツーッと涙を流したチョン室長が手を伸ばし、そして......。唇が触れるか触れないかのところで暗転となりますが、なかなか美しい場面です。違和感はおぼえませんでした。
 その後、チョン室長は常務への昇進という名の左遷で地方へ、ジュニョンは再びニューヨークへ。チョンヘは「私の愛に気づいただろうか」というジュニョンへの想いを綴った夫の日記を目にします。「おたがいを求めていたのだろう」と淡々としたモノローグが流れるのみで、もちろん具体的に2人のあいだに何があったかは知る由はないにしても、特に咎める様子はないところが意外。意外だけれど、好感がもてます。チョン室長が妻に初めて苦悩を語ったのはジュニョンとの出会いがあったからこそ。そのことをチョンヘも理解してるように思えるのです。
 ラスト・シーンは、チョン室長とジュニョンが手をつないで並木道を歩いていくうしろ姿を固定カメラが延々と映しすというもの。余韻があって、印象に残ります。

 この作品、演出は「フルハウス」「インスンはきれいだ」などのピョ・ミンス、脚本は「愛の群像」「花より美しく」「グッバイ・ソロ」などのノ・ヒギョンです。前年の「嘘」でも組んでいて、のちに「彼らが生きる世界」でも組むことになります。
 たんに同性愛をテーマにしたドラマじゃないところがよかったですね。深い。

世紀末特集劇「悲しい誘惑」

原題 슬픈유혹(悲しい誘惑)
1999年12月26日放送/全2話/KBS
DVDはブロードウェイより2009年2月6日発売

演出:ピョ・ミンス/脚本:ノ・ヒギョン

キム・ガプス......チョン・ムンギ室長
チュ・ジンモ......シン・ジュニョン チョン室長の部下
キム・ミスク......ソ・ジョンヘ ムンギの妻
チョン・ウク......社長



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