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2018年10月29日

雨の国

 2年前の雨の日に夫を交通事故で亡くしたナラ(チョン・ウンチェ)が教職に復帰した。一方、隣のクラスの生徒のウギ(ユ・ミンギュ)は、同じ日に父を亡くして以来、雨を恐れるようになっていた。葬儀場で出会っていた2人は、同じ傷を抱える者同士、おたがいを慰めるように距離を縮めていく。ところが、学校で2人の噂が広まってしまい……。

 主役に抜擢された『ヘウォンの恋愛日記』(13)に続いて『自由が丘で』(14)でもホン・サンス監督作に出演しているチョン・ウンチェ。その『自由が丘で』で共演した加瀬亮と熱愛なんて記事が「フライデー」に載ったのはもう5年も前ですね。ちょうどその頃の作品です。相手役は「医心伝心」でジェハ/ジノ役のユ・ミンギュ。
 教師と生徒の禁断の愛ということにはなりますが、しみじみとした味わいです。

2018年3月4日

丸刈りの恋愛


 脳腫瘍を患うジユル(カン・ヨンジョン)は、少しでも余命を延ばしてほしい母の願いを聞き入れ、手術を受けることを決意した。しかし、病院で元恋人のシウ(ミン・ジヌン)が妻と幸せそうに笑っている姿を見て動揺する。そのとき偶然に出会ったチファン(キム・ジョンヒョン)の手を借りてシウを見返してやろうとするのだが……。

 KBSドラマスペシャル2017のラストを飾った作品。これが断然ベストでした!
 余命半年を告げられ、手術をしてもそれが18ヶ月に延びるだけ。「病院で死にたくない」と治療を拒む一方、ジユルは「なぜ私が?」と自問自答を続けています。それに対してひとつの答えを見つけますが、それも最初は「そう信じたい」「そう信じるしかない」という自覚があるようで、でも最後にはそれが本当の答えのように晴れ晴れとした表情を見せるのでした。奇跡が起きて病気を克服するというわけではありませんが、少なくとも後悔のない、笑顔のラストシーンにグッときます。また、母(演じるのはイ・ジョンウン。映画化される『焼肉ドラゴン』へのキャスティングが発表されました!)が自分を責めるシーンも涙なしには見られません。娘の意思を尊重して静かに見守る父の表情も印象的でした。
 主演のカン・ヨンジョンはミュージカルで活躍する女優らしいですが、なんか見たことあるなぁと思ったら、「明日、あなたと」でマリン(シン・ミナ)の友人役、「浪漫ドクター キム・サブ」でバス停で倒れた患者の娘ソナ役を演じているのでした。個性的な顔立ちで印象に残りますね。
 チファン役のキム・ジョンヒョンは「逆賊」「ピング」と観てきていい役者だなと思っているのですが、本作でますますそう思いました。金目当てで人妻とつきあっているチファンもジユルと出会ったことで変わっていくのですが、その飄々とした雰囲気はジユルの気持ちを和らげることにもつながったり。力の入りすぎない、ふざけていても品のよさを感じさせる演技が素晴らしいです。

 たびたび流れる主題歌「하늘끝(空の果て)」をうたってるのはタリン(타린)。聴いたことのある声だと思ったら、Vanilla Acousticに2012年から2015年に在籍していた彼女ですね。脱退後はドラマOSTを中心に活動しているようです。ちなみに本作と同じキム・ジョンヒョンが主演の「学校2017」のOSTにも参加してますね。

2018年3月2日

SLOW


 野球部に所属する高校生のジウォン(クァク・ドンヨン)はプロ野球選手になるため必死だ。しかし、エースのヒミン(キ・ドフン)がノーヒットノーランを達成しそうな試合でエラーをしたうえに目に打球を受けてしまう。スランプに陥ったある日、ジウォンが校舎裏でひとり練習していると、同級生のジョンヨン(チョン・スジ)が「ここは私の場所」とチェロの練習をはじめた。ジョンヨンのチェロの旋律を耳にするとボールがゆっくり見えたジウォンは、ジョンヨンに試合を観に来てほしいと頼むが……。

 なんともつかみどころのない、陰鬱なトーンの作品。演出がKBSドラマスペシャル2016で「遥か遠い踊り」を撮ってるイム・セジュンと知って、なるほど、と思いました。前作同様にシュールで、もっとも実験的な作風ですね。主人公はなかなか台詞を発しないし、その行動はいちいちが謎。どう受け止めたらいいのやら……。

2018年3月1日

私たちが眠れない理由


 演劇界で働くものの夢破れて実家に帰ってきたユジョン(イム・セミ)は不眠症で寝つけない夜を送っている。そんなユジョンの部屋の前で深夜に縄跳びをする男に憤慨。それはコンビニでアルバイトをしながらウェブ漫画家を目指すヨンジェ(イム・ジギュ)だった。眠れない2人は徐々に距離を縮めていくが……。

 夢をあきらめた女性と夢を追い続ける男性、思うように生きられない2人のラブストーリー。地味ではありますが、肩を寄せあうラストシーンが微笑ましく、じんわりといい作品でした。エキセントリックな役どころの多いイム・セミですが、コミカルでありつつ、本作では地に足の着いた等身大の女性といった感じ。相手役のイム・ジギュも、主演映画『愛のバトン』が大好きなんですが、これまたぴったりのキャスティングでした。
 ユジョンがマンションの警備員をしている父を訪ねて自分を“ストロー”になぞらえる場面も印象に残ります。イ・デヨン扮する父がまたいい人で、娘が男といるのを見かけて翌朝こっそり小遣いをくれたり、実は膝の手術を我慢していたり。職場に来てくれたユジョンに触れようとするものの、ゴミの分別をしていた手を引っ込める(そしてユジョンもそれに気づいてしまう)ところも。
 KBS脚本公募の2016年の当選作ということで新人作家なのだと思いますが、細やかな描写が秀逸。UFOキャッチャーをする場面の「生きてるかぎり終わることはない」というヨンジェの台詞や、フラフープ、固定電話といった小道具も効いていました。「カン・ドクスン愛情変遷史」も担当しているので、すでに注目の脚本家なのでしょうか。ペク・ソヨン、おぼえておきたいと思います。

ちなみに、音楽監督はケミで、挿入歌として使用されたのは3曲とも2016年の既発曲。どれも落ち着いた曲で、統一感がありました。

  • 문문(ムンムン)「비행운(飛行機雲)」
  • O.WHEN「오늘(今日)」
  • Daybreak「오늘 밤은 평화롭게(今夜は安らかに)」


2018年2月27日

カン・ドクスン愛情変遷史


 1926年、夏。忠清道の山村に暮らすドクスン(キム・ソヘ)は親の決めた結婚相手のソクサム(オ・スンユン)を慕い続けていた。ところが、大学の休みで帰郷したソクサムには好きな女性がいて、「祖国の独立に身を捧げる」と別れを告げられる。あきらめきれないドクスンは、ソクサムの書いてくれた住所を握りしめて京城へ。そこで酒場を営むヒスン(キム・ヨジン)らと出会うが……。

 タイトルに「愛情変遷史」とあると、上京してきて婚約者に裏切られたことを知った主人公が新たな恋と出会う……といった展開を想像しますが、ぜんっぜん違うのでした。まさか独立運動の話だとは。しかし、悲しい展開はあるものの、字を覚えていく過程がうまくストーリーに沿っていたり、ドクスンの成長物語としてなかなかよくできた脚本でした。意外と出番の少なかったソクサム(「あの空に太陽が」でハンス役のオ・スンユン)が最後にいいところを見せたりも。「出会わせて、ジュオ」と同じ間違った小道具を使いまわしてるのは残念でしたけど。
 主演はI.O.I出身のキム・ソヘ。I.O.Iはオーディション番組「PRODUCE 101」から生まれた期間限定のアイドルグループで、もともと俳優志望だった彼女は2017年1月の解散後は女優として活動してます。地上波での主演はこれが初となりますが、溌剌としていて、好感度大。また、母女酒幕の“三人娘”もそれぞれ好演していて、なかでも最年少のグッキ役を演じたパク・ソヨンが印象的でした。同姓同名がたくさんいますが、「凍える華」や「運勢ロマンス」でヒロインの少女期を演じている2002年生まれの子役。いずれも今後が期待される女優といえるでしょう。
 ところで、ドクスンの両親役を演じたホン・ソンドク&ペク・ヒョンジュは「私の心は花の雨」でも夫婦で、主人公コンニム(ナ・ヘリョン)の養父母という役どころでした。たしかに、お似合いのカップルですね。

2018年2月26日

チョンマダムの最後の1週間


 7年前、チョンマダム(ラ・ミラン)はヤクザのテンバリ(パク・チョンハク)から逃げる途中で思いがけず大金を手に入れた。それからというもの、彼女は人目を避けてひっそりと暮らし、時効成立の日を待ちわびている。ところが、いよいよ残り1週間という日、ウンミという少女(シン・リナ)と出会う。人と交わることを徹底的に避けてきたチョンマダムだが、ウンミが親に虐待されていることを知って放っておけず……。

 KBS脚本公募の当選作だそうです。ラ・ミラン主演ということでも安心感がありますね。実際のところ、ラ・ミランは本作でKBS演技大賞の連作・単発ドラマ賞を受賞しました。
 カナダへの移住を夢見ながら隠遁生活を送ってきたチョンマダムは、なりゆきでウンミを匿うものの、誘拐犯として報道されたうえにテンバリからも追われ、一度はウンミを置き去りにしようとします。それでも放っておけないのは、かつて亡くした妹の姿が重なるからなのでした。肌身離さない旧札のエピソードなどが涙を誘います。若い頃のチョンマダムを演じたパク・セワンも出番は少ないものの好演でした。
 ところで、劇中に『冬の王国』と出てきますが、邦題が『アナと雪の女王』となったディズニー映画『Frozen』の韓国でのタイトル。そこは日本語字幕を『アナと雪の女王』にしないと伝わらないでしょう。「Let It Go」が流れて「あぁ」と思うかもしれませんが。
 また、Stingの「Shape of My Heart」も流れますが、言わずと知れた映画『レオン』のラストシーンで流れる曲。さすらうチョンマダム&ウンミがレオン&マチルダのパロディになってるんですね。ウケました。エピローグで流れるのはユ・ジェハの「지난 날(過ぎた日)」です。
 晴れ晴れとした結末で、心のあたたまる良作。

2018年2月25日

一人で踊るワルツ


 大学で出会ったミンソン(ムン・ガヨン)とゴニ(ヨ・フェヒョン)は交際3000日を迎えたが、おたがい就職活動に明け暮れ、すれ違い気味の日々を送っている。切りつめた生活のなか会っても言い争うことが増え、別れたり、よりを戻したりを繰り返していた。やがて2人とも同じ会社の最終面接に残り……。

 就職難にあえぐ若者たち、ということなんでしょうけども、主人公にまったく共感できず……。自分の就職のためなら恋人さえ蹴落とそうとするところが、「こんな自分がイヤ」という台詞はあるものの、あまりに身勝手すぎて閉口してしまいます。社員登用の面接では「彼氏とセックスしてるんだろ?」「必要でしたら堕ろします」なんてやりとりがあったり、ありえなすぎて思わず笑ってしまうほど。ブラックユーモアということなんでしょうか。そしてまたなんともやりきれない結末……。厳しい現実をシニカルに切り取った作品といえるのかもしれません。
 主演のムン・ガヨンは「Mimi」でヒロインのミミ役を演じた娘ですね。相手役となるゴニに扮したヨ・フェヒョンは本作と「ランジェリー少女時代」でKBS演技大賞の連作・単発ドラマ賞を受賞しています。

2018年2月24日

あなたは思ったより近くにいる


 古本屋を営むウジン(イ・サンヨプ)は、DJをしているポッドキャスト放送「夜間本屋」の常連リスナー、ソヨン(キム・ソウン)との結婚式を迎えるが、その日突然、ソヨンは消えた。ウジンには彼女のいなくなった理由がまったくわからない。そんな彼の前に、ひとりの女性(イム・ファヨン)が現れる。ウジンは彼女が意図的に近づいたのだと気づき、ソヨンの居場所を知っているはずだと問いつめるが……。

 突然いなくなった結婚相手と、入れ替わるようにして現れた女性、そして何やら知っていそうな写真家(クァク・ヒソン)の関係が徐々に明らかになっていくというサスペンス風味のラブストーリー。なるほどな展開で、4人ともハッピーエンドなところに好感がもてました。
 2PMのテギョンやキム・ウォネら特別出演が豪華。医師役でほんのちょっと出てるナムグン・ミンがイム・ファヨンに「どこかで見たような……」という顔をするんですが、2人は「キム課長とソ理事」で共演してるんですね。演出家が同じチェ・ユンソクなのでした。ちなみに主演のイ・サンヨプは前年のKBSドラマスペシャル「楽しい私の家」に続くチェ・ユンソク作品への起用になります。

2018年2月23日

出会わせて、ジュオ


 1937年、京城。田舎から上京して3ヶ月のスジ(チョ・ボア)が結婚相手を捜すためカップリングパーティにやって来た。ジュオ(ソン・ホジュン)はみすぼらしい恰好の彼女を追い出すが、翌日、結婚情報会社を訪ねてきたスジを雑貨店の社長と思い込んでしまい、夫候補を紹介することに。その一方、朝鮮総督府は北京に送るため朝鮮女性を騙して徴発しようとしていて……。

 日本統治下の朝鮮が舞台ということで、町には日本語の看板なんかがあるのですが、これがひどい。「うーどん」とか誰か気づかないものでしょうか。しかも窓のなかには「皮革」の文字が。いったい何屋なのでしょう。使いまわすにしても、もうちょっとセットに気を配っていただきたい……。
 モダンな文化が入ってきて変わりゆく時代で、人々の恋愛事情が現代に通じるものとして描かれます。結婚相手の条件に挙げられる“3高”は、高学歴、高収入、高家(よい家柄ということですね)とか。そこに、騙されて中国に送られそうになるスジの危機、ジュオと父との軋轢などがからんできます。ありがちな結末とはいえますが、主演陣が好感度の高いキャストなので、まぁまぁ楽しめました。

2018年2月22日

僕らが季節なら


 隣同士の家に生まれ、ずっといっしょに育ったヘリム(チェ・スビン)とギソク(チャン・ドンユン)。高校生になった2人のあいだに、ソウルからの転校生ドンギョン(ジニョン)が現れた。ストレートに想いをぶつけてくるドンギョンにヘリムがドキドキする一方、ギソクは彼の存在がおもしろくない。ヘリムとギソク、2人の関係は……。

 B1A4のジニョンが主演のように(韓国でも)紹介されてますが、主人公は別に2人いて、三番手。キザな台詞を億面なく口にしてヒロインの心を揺さぶる転校生という役どころです。塀から落ちるヘリムを抱きとめ……るかと思いきや届かない、というのは「雲が描いた月明り」のパロディでしょうか。脚本家が「雲が描いた月明り」で共同脚本のイム・イェジンなんですよね。
 たびたび過去の場面が挿入されますが、ちょっとわかりにくくて前後関係が混乱しそうです。親の浮気問題は唐突な感じがしますし。メイキング映像を見るとドンギョンがピアノを弾く場面などもあったようなので、1時間の枠に収めるにあたってちょっと無理が出てるのかもしれません。とはいえ、思春期を迎えた幼なじみがぎこちなくなっていく様子が切なくもさわやかに描かれていました。糸電話が出てくるのは『たまこまーけっと』へのオマージュ? 映画を観ながら口にしたヘリムの言葉をギソクが言うラストシーン、かすかな希望を感じさせる終わり方で好感がもてます。チェ・スビン、チャン・ドンユンの配役もぴったりでした。

 音楽を手がけたのはこれまた「雲が描いた月明り」と同じケミことカン・ドンユンで、英語詞の挿入歌「The Moment」をうたうのはDMEANOR(ディミノ)。


2017年6月9日

ヨヌの夏


 昼は父の遺した“ヨヌ修理店”で家電の修理を請け負い、夜はバーでアルバイトをしながら音楽活動をしているヨヌ(ハン・イェリ)が、交通事故に遭った母(キム・ヘオク)の代わりに1週間だけビル清掃の仕事をすることになった。そこで一流企業に勤める小学校の同級生のジワン(イム・セミ)と再会し、代わりに親の決めた見合いに行くよう頼まれる。断りきれずユナン(ハン・ジュワン)と出会い、心惹かれるが、ヨヌは本当のことを言いだせず……。

 ハン・イェリの魅力が存分に発揮された短編ドラマでした。ヨヌがバーで歌うラストシーン、店のドアが開く音に続いてヨヌが笑顔を浮かべます。その直前のシーンはユナンへの電話で終わっているので、明示はされないものの、きっと、すべてを知ったうえでユナンがヨヌに会いに来たと考えるべきでしょう。ハン・イェリの素朴な歌とあいまって、さわやかな余韻を残して終わります。全編をとおして説明的じゃないところにも好感がもてました。
 ジワン役のイム・セミは、いわゆる悪女役かと思いきや、憎めないとこもあったりして、「ショッピング王」なんかと同様の役どころ。ユナン役のハン・ジュワンはまだそんなに顔を知られていない頃ですね。バー“Arturo Domingo”の従業員(?)で、ヨヌに歌詞を書くよう勧めるギオ役は、ハチこと春日博文とのデュオ“ハチとTJ”のTJ。本名のチョ・テジュンでクレジットされてます。ちなみに、彼といっしょにいるウクレレ奏者はKEKOA(=イ・ドンゴル)で、この2人はTJ&KEKOAというユニットも組んでます。
 この作品、音楽もいいんです。音楽監督は秋休み(가을방학)のチョン・バビ(정바비)。そんなわけで、自身の別バンドであるJulia Hartをはじめ、小規模アカシアバンド、Plastic Peopleと韓国インディシーンの人気バンドの楽曲が満載。あと、クレジットはされてませんが、ジワンが車内アナウンスで映画『マルコヴィッチの穴』について語る(そしてヨヌへのメッセージを込めてる)場面では映画のエンディングに使用されたBjorkの"Amphibian"が流れました。

2017年6月8日

ピノキオの鼻


 心理学者のダジョン(イ・ユリ)はイングク(イ・ハユル)との結婚を控えているが、彼にも明かせない過去を抱えていた。15年前、母(キム・イェリョン)が失踪し、遺体は見つからないものの、父(パク・チャンファン)が殺人の容疑で逮捕されたのだった。証拠不充分で釈放されたが、母を殺したのは父かもしれないという不安のなか、ダジョンは父の顔も見られずに過ごしてきた。ところが時効を迎える母の命日を前に、妹(ミラム)が父を連れてやって来て……。

 主演はこの枠にしては大女優のイ・ユリ。「天上の約束」でのイ・ジョンミとの縁(当時は演出ではなくプロデュース)から出演を決めたそうです。イ・ユリはもちろんですが、15年前のダジョン役を演じるのが「パンチ」などのキム・ジヨンで、これがまた抜群にうまい。さすがの名子役でした。似てるし。
 警察官に嘘を見破る講義をするほどの心理学者であるダジョンが、15年ものあいだ避けてきた父と向き合うことになります。はたして「殺してない」と訴える父の言葉は嘘なのか……。意外な事実が明かされる、驚きの結末でした。

2017年3月3日

遥か遠い踊り


 ある日、演出家のパラン(ク・ギョファン)が遺書も残さず自殺した。最後に電話で話したのは劇作家のヒョン(イ・サンヒ)だが、なぜみんなが泣くのか理解できない。そんなヒョンを先輩のスジン(チャ・スヨン)は心配している。やがて大学でパランの追悼式を行なうことに。ヒョンらはパランの遺作となった『人造人間の死』の再演を依頼される。ヒョンは誰にも理解されなかった結末を変えると主張するが……。

 かなり抑制の効いた内省的な作品。
 説明的な描写や台詞がほとんどないので、わかりにくいと感じる向きも多いかもしれません。例えば、パランの自殺に後輩のスルギが責任を感じてしまう背景も具体的には語られませんが、おそらく、再開発で立ち退きを要求される母の食堂に劇団員を連れていったとき、パランが以前に立ち退かせるための嫌がらせに来ていたことが判明、しかしそれはパランが劇団員に必ずギャラを支払おうとしていたからでもあった……といったことなのでしょう。劇中劇として挿入される『人造人間の死』のパートもシュールというか、とても未来に見えず……。もともと韓国はSFが苦手というのもありますが、いかにもチープでした。実際に舞台で演じられたコンテンポラリーダンスっぽいシーンを挿入するほうがまだよかったような気もします。
 とはいえ、嫌いじゃありません。2016年の東京フィルメックスで上映された『恋物語』でも主演をつとめていたイ・サンヒが、ここでも苦悩する主人公を演じてます。特別な美人ではないもの、こういう陰のある雰囲気が似合いますね。『ここよりどこかへ』では主演、『ノーボーイズ、ノークライ』ではパンク少女だったチャ・スヨンが先輩女優役でした。こういう実験的な試みができるのも短編ドラマ枠のおもしろいところでしょう。

2017年2月26日

笑い失格


 気象予報士のジロ(チョ・ダルファン)にはユーモアの欠片もない。人がなぜ笑うのかも理解できないカタブツだ。ある日、お天気キャスターとしてナラ(リュ・ファヨン)がやって来る。ジロはナラに惚れてしまい、自分を笑わせてくれる男性が好きと話すのを聞いて一念発起。笑いの講座に通い、ナラを笑わせようと奮闘するが……。

 留置所の鉄格子をジロ以外はすり抜けるとか、釣りをするとどこにでも海女が現れるとか、ふざけた演出がシュールで笑っちゃいます。制作陣がそれなりにキャリアのある人たちだからでしょうか、回想や妄想でいろんなゲスト出演があって遊びゴコロたっぷり。キム・チャンファン&ファン・ボラのダンスなんてブッ飛びすぎ。どれもだいたい、なくていい描写(笑)。大きな感動はないものの、オフビートな、気軽に楽しめる一編でした。

2017年2月22日

安東ククス屋の女


 小説を書くことをあきらめたジヌ(パク・ピョンウン)は妻のヘギョン(シム・イヨン)とネット通販会社を営んでいる。ある日、大学時代の先輩の訃報を受け、安東を訪問。葬儀場でミジン(チョン・へビン)に目を留める。それからというもの、先輩の兄から遺稿の整理を頼まれたジヌは週末になると安東に通う。そして、ミジンに小説のあらすじを語って聞かせるようになるが……。

 安東(アンドン)が舞台の、しみじみとした一編。先輩の遺した小説の内容がミステリアスな女性の悲しみの理由を明らかにするという、なるほどな展開。不倫ドラマになりそうなところをギリギリの線で抑えてました。
 妻のヘギョンが実に鋭い。ジヌは何も言わないのにミジンとの関係性を一発で見抜きます。これってありそう。女性は怖いですね(笑)。「もっと傷ついてほしい。そして大人になってほしい」と言い捨てますが、ほんと、サンギュは大人になりきれてないというか、大事なところで逃げてきたんでしょうね。小説家の夢をあきらめたのもサンギュがデビューしたのがきっかけ。今回も、自分が傷つかないためにミジンを傷つけようとしたのでした。ヘギョン役を演じたのはシム・イヨン。好きな女優です。日本では未DVD化ですが、主演作『愛のバトン』がすごくよかったんですよね。現在、第二子を妊娠中なので、しばらく見納めでしょうか。
 ちなみに、邦題ではククス(そうめん、うどんのような麺料理)となってますが、原題は국수(ククス)ではなく국시(ククシ)。安東の方言だそうです。

2017年2月21日

二十歳になるまで


 二十歳になるまでに童貞を捨てたいジュノ(イ・ジュスン)は大学受験も終えていよいよ初体験のことしか考えられない。しかし、恋人のソギョン(カン・ミナ)に迫っても、おあずけを喰らってしまう。ふくらむ妄想を小説にしてみるが……。

 ヤリたくてたまらない少年の悶々とした日々。
 主演のイ・ジュスンは、最新ドラマ「ボイス」で(ネタバレになるので詳しく書きませんが)まったく正反対の役柄を見た直後だったので違和感ありましたが、本来はこういう役が似合いますね。ベッドで「愛してる?」と訊かれて「わからない……好きなのは確かだけど」と正直に答えたり、誠実。コミカルな脱童貞奮闘記ですが、さわやかです。ジュノの叔父(ミン・ソンウク)もイイ役どころでした。一見すると頼りないけれど、いいこと言うんですよね。
 日の出を見に車を走らせる場面で流れるのはSuper Kiddの"Sundance"。エンディングは볼빨간 사춘기(頬赤い思春期)の"초콜릿(チョコレート)"。ハーフアルバムと称する初のCD『RED ICKLE』に収録されてます。音楽もよかったですね。


2017年2月18日

平壌まで2万ウォン


 ヨンジョン(ハン・ジュワン)は司祭になる道をあきらめ、運転代行の仕事をしながら、その日暮らしの生活をしている。ある夜、神父になったジュニョン(キム・ヨンジェ)と屋台で呑むが、彼の帰った直後、いつの間にか隣にはソウォン(ミラム)が座っていた。自分のことを知っているという彼女に迫られ、ヨンジョンは一夜をともにするが……。

 しばらくどんな展開の話なのか読めなかったのですが、なるほど。ヨンジョンが信仰を捨てて母に反発する理由――つまりは父への想い――が、空港でジュニョンを問いつめる言葉になってるんですね。ヨンジョンは「神に通じる唯一の道は祈りです」という言葉が許せません。ジュニョンがソウォンと結ばれることが、自分の存在の肯定につながるわけです。うーん、深い。また、南北離散家族の話があったり、北の歌が励みになった(それで「平壌まで2万ウォン」という代行運転社の名前に)というエピソードがあったり。短い物語のなかに多くのことが詰め込まれてるのでした。
 ソウォン役のミラムってどこかで見たことあると思ったら、「ショッピング王ルイ」でおしゃべりなゴールドライン社員のヘジュ役ですね。かつてはキム・ミンギョンという本名で活動してたようですが、現在は芸名に。


2017年2月13日

楽しい私の家


 セジョン(ソン・ヨウン)は夫のソンミン(イ・サンヨプ)と幸福に暮らしている。実はソンミンはセジョンの作り上げたサイボーグ。セジョンにとって理想の夫なのだ。ところがある日、ソンミンの前にジア(パク・ハナ)が現れ、「思い出して!」と訴える。セジョンはジアが現れたことを知って動揺。ついにジアが家に押しかけてくると、セジョンは事故に遭って記憶喪失となったソンミンを看病するうちに愛しあうようになったのだと言い張るが……。

 星新一のショートショートにありそうな、ブラックなユーモアで妙な後味の残るサスペンスでした。さすがにサイボーグという設定の描写には甘いところがありますが。
 主演のソン・ヨウンは「明日に向かってハイキック」でジフン(チェ・ダニエル)の見合い相手という役でした。短編だからというのもあるでしょうが、メインキャストを担うようになったんですねぇ。ジア役のパク・ハナは「白夜姫」でヒロインに大抜擢されましたけど(急な代役だったとか)、「金よ出てこい☆コンコン」では宝石店のキム代理、「ミス・コリア」ではドリーム百貨店のエレベータガールという、ほとんど端役でした。短編ドラマって、脇役マニアにはたまらないキャスティングで楽しいものです。
 主題歌の"I Will"をうたうのはJelly Cookieのソオ(서오)。「ドクターズ~恋する気持ち」のOSTにも参加してるようです。Jelly Cookieは女性デュオで「匂いを見る少女」のOSTで1曲うたってますが、メンバーはチョ・ウネ(조은애)とイ・ソヨン(이서영)。ソオというのは名前の近いイ・ソヨンのソロ名義になるんでしょうか。韓国でも「あまりに情報がない」と嘆かれてるようで、詳細不明。この曲も音源リリースはありません。


2017年2月11日

真夏の夢


 マンシク(キム・ヒウォン)は男手ひとつで育てている娘のイェナ(キム・ボミン)の出生届を出すのが唯一の願い。ベトナム人女性と国際結婚でついに夢が叶うと思ったが、直前に断られてしまった。そんなある日、暴力を振るわれていた茶房嬢のミヒ(キム・ガウン)を助ける。ミヒが礼を言いに家を訪ねてくると、イェナは彼女を母親と思い込み、泣きながらしがみつく。マンシクは2000万ウォンで母親代わりを頼み、ミヒは金目当てで婚姻届と出生届にサインをするが……。

 ちょっと前までは悪役の多かったキム・ヒウォンが、いい人すぎるマンシク役を好演。ほんと、おひとよし。キム・ガウンも、やさぐれてはいるものの根に寂しさを抱えるミヒ役をうまく演じてますね。ミン・ドゥルレとは大違いですが(「一途なタンポポちゃん」で健気な主人公を演じてました)。
 脚本は2014年の脚本公募で入選したソン・セリン。オチの想像はつくものの、やさしさにあふれたハートウォーミングな一編でした。
 劇中に流れるのは자전거 탄 풍경(自転車に乗った風景)の"지금처럼 너와 같이"。映画『ラブストーリー』の主題歌「あなたにとって私は、僕にとって君は」で知られる3人組です。ジャタンプンという略称で日本でもリリースしてました。分裂しましたが、2011年に再結成してたんですね。

2017年2月8日

伝説のシャトル


釜山の明成高校にソウルからチャン(イ・ジフン)が転校してきた。彼は17人相手の喧嘩に勝利したという伝説の男。学校を仕切るテウン(ソ・ジフン)にも一目を置かれる存在となるが、ある日、クラスにもうひとりの生徒が転校してくる。そのジェウ(キム・ジヌ)はチャンと同じ高校からやって来たという。チャンはある理由から気が気じゃない……。

 チャンの態度から、ある程度の展開は読めるのですが、とにかく笑いっぱなし。そもそも“加里峰のスリッパ”というニックネームがよくわかりません(笑)。去勢を張ってるのがバレないよう、あの手この手でテウンを言いくるめる姿が滑稽です。ジェウが現れると彼のあわてぶりはますますエスカレート。ジェウがクールなだけに余計おかしいのでした。
 ミンス役の子がSPEEDのソンミンに似てるなぁと思ってたら、まさにそう。いつもおどおどしてる風采の上がらないパシリですが、眼鏡をとると美少年。やっぱりソンミンなのでした。
 特別出演陣も豪華で笑わせてくれます。担任教師役のユ・オソンの台詞が『友へ チング』(言わずと知れた彼の出世作にして名作)のパロディなのがウケます。「ハワイに行けば~」もそうですし、その後の「마이 묵었다. 아이가」はまったくそのまんまですね。日本語字幕には活かされてませんでしたが……。アナウンサー志望のチャンの叔父がチョン・ヒョンムというのにも爆笑(かつて局アナでした)。「テレビに出られる顔だと思ってるの?」となんて言われたりして。
 タイトルにある「シャトル」とは「パシリ」のこと。韓国で大人気だったオンラインゲーム「スタークラフト」の宇宙輸送船「シャトル」から来てるんだとか。KBS WORLDでは「伝説のシャトル(使い走り)」という括弧付きの邦題ですが、劇中の日本語字幕は「パシリ」。俗語をタイトルに入れることに抵抗があったんでしょうか。「伝説のパシリ」でいいのに。